第2話 魔法大学

 灯台大学には魔法専門がある。マンガやテレビで見るあの超常現象である魔法を習得することができるという話を大葉(たいよう)の兄貴から聞いたことをきっかけにその大学を目指し、晴れて岐阜へ上京した。

 主人公もといこの話の重要人物である月島(つきしま)は昔、魔法による怪我を負い魔障を受けたことがきっかけで魔法を使えるようになった。魔障とは妖や魔物からの怪我により感染したことにより、常人的に魔法が使えたり見えないものが見えるようになったりとしたことで、この大学を選ばざる得なくなったということでもある。

 月島の友人にして同じ学の出身の大葉(たいよう)は、当麻(たいま)兄貴が灯台大学で魔法使いになったことをきっかけに灯台大学を目指すきっかけとなった。月島とは魔法が使える当初から知っており、兄貴も魔法が使えることから良い相談相手として友人以上の付き合いをしていた。そのこともあり、お互い一緒にいることが多いほど他に友人がいないという共通認識のうえで、仲良くなったと思ってもいい。



 大葉のお兄さんである当麻があと一年で卒業となる日、二人は入学を果たした。大勢の人たちに歓迎され、灯台大学の門の中へと入っていく。想像もしなかった光景が現実味を帯びた二人は他の新入生とともに、「入ってよかった~」と感動するありさまだ。ただ、月島だけはそうは思っていなかった。

 当麻兄さんから「樹(いつき)教授に話しを付けておく」と言っていたのを思い出し、入学式を終わり次第、他の生徒たちがサークルや部活からの勧誘を背に二人は真っすぐ樹教授がいるであろう校舎へ向かった。

「当麻兄さん曰く、樹教授は変わり者だと」

 隣で歩く月島に大葉はそう言った。樹教授は変わり者であると。それはなぜなのか。合ったことがない二人には何者なのかを知る術はない。当麻兄さんだけが知っていることなのだが、当の本人もそう長くも短くも語ったりしないので、大葉も詳しくは知らなかった。

「どんな人かよけいに気になるよ」

「まぁ、ぼくもね」

 二人は緊張しながらも期待に胸を膨らませていたが、初めて来たこともあり校舎がどこにあるのかわからない。そこで通りかかった先輩に話しを聞き、案内図と近道を教えてもらった。

「今どき、紙かよ」

 スマホが復旧する世の中で紙の地図を渡された。スマホに入れれば後はナビが案内してくれるのに、なぜこんなにもまどっろこしいことをするのかと疑問に思うのだが、大葉はなんとなくその答えを察していた。

「多分だけど、兄さんの計らいだと思うよ」

「何でそう思うんよ」

「兄さんならこういう方法でやると思うんだ。兄さんは宝の地図を作るのが好きで、よく宝を生めては探させられたっけ」

「…でもあの人は、近道を教えてくれたよ」

「……まあ、地図通りにいかなくてもいいさ。さあ、いこう」

 地図をカバンの中に入れ、二人は木々が生い茂る森の中へと入っていった。

 先輩が指示した方向はこの先のはずであるのだが、歩を進むとどんどん暗くなっていく。先輩に騙されたのではないかと内心焦ってくる。

「なあ、大葉戻ろうぜ。多分、騙されたんだろう」

「でもーこっちであっているはずなんだよなー」

 そんなときだった。ふわっと空気中に漂う違和感を覚えた。それは白い布切れのようなものが風がないにも関わらず泳いでいるのだ。それは月島だけが見え、大葉には見えていない様子。月島がそれを掴むと、一瞬にして蒼ざめた。

「大葉、逃げようぜ。ここヤバいかも」

「まさか、なにかあったの!」

 大葉の肩を掴み、一刻も早く逃げようと促す。そのとき、ふと先の方にあるものを見つけてしまう。地面に突き刺した板に名前が書いてあるのを。

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