第4話
レベル78。<傀儡>を召喚に当たってレベル10以上であれば召喚可能だ。だが、召喚する際、痛みを耐えなくてはならないし、なによりも傷が増える。やればやるほどその分バレやすくなる。
ナイフを取り出し自らの手首を軽く斬る。真っ赤な血しぶきが飛び、塔の上にいる見張り役に向かって指を差した。
「うおおおおおお!!!」
どこからともなく掛け声が轟く。四つん這いになりながら三体の人間モドキが塔の上にいる見張り役に向かって壁伝いを上っていく。
「<傀儡>だ! 武器を取れ!! 応援を呼ぶんだ!!」
塔の上で見張り役の人たちが叫んでいる。
ワーワーギャーギャーと悲鳴を聞きながらその場を後にしようとすると、塔の上で<傀儡>たちが占拠したと証に見張り役の頭を見せつけた。頭部だけ残し、身体はおそらく<傀儡>たちによって食われているのだろう。それを見て、<傀儡>を召喚できるということだけを確信した。
レベルが66に下がっている。一体につきレベルを4消費したことによる。レベルが4というのは<討伐士>における三流がようやく戦えるレベルの雑魚だ。<討伐士>でない見張り役でも倒すことはできるが、報告によると見張り役は3人。しかも現役の<討伐士>の三流だそうだ。倒すこともできたはずだ。それがどうして倒せなかったのか。上官から預かった個人情報(プライバシー)を見る。
「まったく…上官は<討伐士>の個人情報(プライバシー)を知りすぎている」
見張り役の3人は飲兵衛(のんべえ)だ。酒に酔って眠っていたのだろう。突然の<傀儡>の奇襲で大方戦力が削られたのだろう。
翌日、案の定だ。塔の上で<討伐士>3人が殺されているのを発見され、<討伐士>二流の1人によりせん滅させたと。上官は淡々説明した。
「――酒を飲んで任務をおろそかにするとは何事か。今後、チームの団結力を図る。チームリーダーは全員、団員の健康状態、勤務態度、身体能力値を調べ、報告するように」
「「「は!!」」」
敬礼し立ち去っていくリーダーを尻目に、上官の部屋に入る。
上官は自分を見るなりに「つまらない話だ」と前置きにして「<傀儡>のレベルが低すぎる。何よりも個性、能力がない。レベルが66はあるんだろ。レベルは50消費してようやく一人前としてより良い性能を持った個体が生まれる。それが、レベル4とは、なんという情けなさだ。君にはがっかりしたよ」そう言って突き飛ばすようにして部屋から追いやられた。
自分はまだ、未完成なんだと胸にぎゅっと拳を握り押し付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます