ものにするための練習用
黒白 黎
魔女の家
第1話 魔女の家
町の一角に民宿がある。木造の二階建て。風呂やトイレは共有で部屋は畳四畳ほどの広さしかない。駐車場はなく、駐輪場のみ設置されている。通りはやや狭く、車のベテランでもこの通りは通りにくいというほど狭くもあり危険でもあった。民宿の前に看板がある「魔女に注意」この看板の意味はこの民宿から魔女が飛び出す、粉末や液体のようなものをまき散らすなどはた迷惑なことをするうえ、保険が適用されないことから運転手はここを避けるのだ。ただ、他県で新人以外は。
この民宿ができたのは、魔女に興味を持った女将さん(魔法使いじゃないよ)。年齢は三十ほど。年齢よりも老けている。どう見てもシワだらけの年寄りだ。だけど、これは仮の姿。本当の正体は種族年齢を人間に合わせた結果であり、本当は二百歳をゆうに超えている。この民宿はいろんな人種が集まることから魔女からも一目置かれている不思議な民宿である。
女将さんは年のことを聞かれたりしない限りめったに怒らない。誰にでも優しく世話好きだ。もっとも新人には厳しいということもあり、近年では新人が中々来ないなど、当時よりも人が少なくなってしまっているのが玉に瑕だが。
二階の角部屋で謎の大爆発が起きた。外ではなにも感じなかったが、中にいた仲間たちはその騒ぎに慌てるほどその部屋に駆けつけた。地震のように建物が揺れ、棚の上や天井から埃が降ってくるほどの揺れだ。そのうえ、下の階にいたクレアの怒りが爆発し、その隣にいたデンジャは実験中の試験官が割れたことにより、「また~上の奴か」と冷たいため息を吐いた。
ゴゴゴと白い煙が廊下に立ち込めている。廊下にいたレノフが鼻を押さえつけるほど異臭が立ち込めていることに気づくほどだ。白い煙=毒。そう教えられていたレノフは、中にいるノルンが危ないと思った。足の速さは誰にでも負けない。足の速さには自信があるレノフは片っ端から窓を開け、大きな団扇をもって煙を外へ逃がす。
後から来たクレアはレノフを無視して、一人でドーノの部屋に駆け込む。
「あっバカ」
扉を開けた瞬間、鼻の中を貫き脳まで剣を突き上げたかのように後方へ飛び乗った。その異臭は脳でさ死ぬぞというサイレンがクレアの身体を奪い逃がしたのだ。中にいたドーノはガスマスクを付けながら怪しげな実験をしていた。
「いわんこっちゃない」
レノフはクレアを急いで運びセラノの部屋に運び込んだ。
「急患だ。即急の治療を頼む」
黄緑色の髪をした女の人が白湯を飲みながら「あい」と返事をした。
セラノはこの民宿で唯一の医師免許を取得している医者なのだ。魔女でありながら医者を目指している辺り頭はかなり高く、あの変わり者のドーノと比べれば常識的な人だ。
「目を覚ましたかクレア」
「うい~我々は宇宙人である」
「ダメだ」
「なにしたの?」
「ドーノだよ。俺が煙を逃がしている最中に堂々と扉を開けやがって。おかげで二階は大パニックだ」
「いつものことだけどね」
襖を開けて眠たそうに言うノルンがいた。
「どっかから出てきたお前!」
「あなた、勝手に部屋をつなげたの?」
「セラノは居心地がいいんだよね~なんつ~かオアシスというか天国というか」
「単純に部屋が散らかり放題だからだろ」
「それでなんの騒ぎなの」
「ドーノが部屋で爆発騒ぎだ。それでクレアが飛び込みこのざまだ」
「あらま~クレアらしい~だこと」
「それでセラノに見せているんだよ」
「ふ~ん。それで~肝心のドーノは~どうするの~?」
「どうするもなにも、止めなくちゃならないだろ!」
「レノフって、優しいんだね」
「はぁい!?」
「みんな言っていたよ~レノフはみんなの救急車であり消防車~。危ない目に遭った仲間のために~懸命に働くその姿は~とてもまぶしく尊いものだって~」
レノフの顔が真っ赤になった。
「バカにしてない!?」
「褒めているよ~レノフがいてくれて、こうして~クレアも無事に看護されている~」
レノフは扉を開け、外へ出ようとする。
「どこへいくの?」
「止めてくる」
「ひとりで?」
「誰がやるんだっていうんだよ! 今日は、新人の歓迎会の前日だ。女将は準備に忙しいし、デンジャは自分のことだけでせいっぱいだ。だから今動けるのは俺しかいないんだよ」
ノルンは立ち上がり、レノフのそばによる。
「勇敢~だよ。だから光っているんだ~」
「気持ち悪いなテメェ」
「正午まで寝るつもりだった~けど。その勇敢に称えて~ボクも手伝うよ~」
「急に気を変えるなんて何を考えているんだ」
「なにって――」
レノンの耳にそっとつぶやいた。
「貴様ァ」
「別にレノンが損する~ことじゃないでしょ~」
「くっ…わかったよ。好きにしろよ!」
「やった~」
ガッツポーズを取りながら喜んでいる。
二階に上がると、異変はなくなっていた。廊下に充満していた煙はすべて開けられた窓により逃がされ、ドーノがいた扉は開いていた。そこに佇む一人の影がいた。マスク姿にメガネをかけたドーノがいた。
「ドーノ!」
「レノフ、ノルン、おつかれ」
「お疲れじゃないでしょうがああああ!!!」
レノフは一目散にドーノに駆け寄った。
「心配かけちまって悪いなァ。実験は成功だ。これで新人を歓迎できる。ところで…どうしたの? 息荒いけど」
襟首をつかみながら呼吸を荒げているレノフに不思議に思うドーノ。レノフは頭をゆっくり上げ、「逃げろ魔が来た」その瞬間、後ろから飛びかかるノルンに二人は叫び声をあげたという。
「またか…今度はレノフ…か。まったくあの二人は問題児だな」
デンジャはひとりセラノの方へ来ていた。セラノはクレアの治療をしていた。
「あ~状況的に分かったけど、いま上の叫び声はなんなの? 二次被害?」
「ノルンが暴れている。あの子、眠たげにしているときが一番大人しいんだけど、起きると狂ったように人間に関心するのよね」
「ってことは…」
「二人には愛(ラブ)な夜を過ごすでしょうね」
「…ときどき、こわいな」
「そうね、私も怖い」
いや、あんた(セラノ)の方が十分に怖いよ。ノルンを飼い馴らすうえ、隣部屋だと思うだけでゾッとするよ。あいつ(ノルン)は化け物だ。酒を飲ませて大人しくさせているが、あれが目を覚ました瞬間、マゾヒストになるもの。あんた(レノフ)とんでもない奴を召喚しちまったようだ。ドーノはいいとして、夜眠れっかな(ちなみに、デンジャはノルンの隣部屋である。
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