第13話 新たな場所へ

「ガラガラガラガラ」


スケルトンは突如四つん這いでレイナを無視して俺に向かってくる。


「ユーカ?!」


レイナの注意が飛んできた。

俺は剣を抜いてミノタウロスがやっていたようにそれを投げつける。


パァン!


剣はスケルトンの手で弾かれて壁に突き刺さった。

流石に都合のいいようにはいかないらしいが、どうする?


「ちっ」


舌打ちして突っ込んできたスケルトンの攻撃を避ける。

なんだ、この異常行動は。


「ガラガラガラガラ」


その後も死にものぐるいで俺に向かって突進してくる。

そうして、何度か突進した後にスケルトンはその巨体を横たえた。


【裏アイオンダンジョンを攻略しました】


ログが出てきた。


「どういうことだ」


呟いた。

スケルトンが自滅したようにしか見えなかった。


自分で突進して壁にぶつかりまくって、スケルトンはそのダメージで勝手に自滅していた。


俺としてはありがたい話だが。あまりにも意味が分からない行動だった。


「なに?今の行動パターンは」


隣にやってきたレイナに質問してみるが


「あ、あんなの初めて見ましたよ?」


レイナも初見だったようで、意味が分からない、との返事。


「まぁいい」


考えても分からないことなので俺は歩き出すとスケルトンキングの死体の方に寄っていく。


そしてハンマーで骨髄を割ってスケルトンの髄液を回収。

これは隠しアイテムの


【スケルトンキングの髄液】


というアイテム。

原作でも通常攻略では手に入らなかったアイテムだ。


現状入手できるのは俺くらいのものだろう。


「そ、それをどうするのですか?ユーカは」

「これの使い道はまだだよ」


そう答えてアイテムポーチにしまいこんだ。


まだ使うべき時じゃないし、そもそもまだ使えない。


勿論体に入れるなんて馬鹿みたいなことはしない。


多分まだ進化出来るだろうが、これ以上を目指すメリットよりデメリットの方が現状は大きい気がするからだ。


さすがの俺もそこまでイカれてはいない。


そもそもダブルより上は原作でも存在を語られていない。


俺は考えをまとめなが魔法陣のあるフロアへ向かう。

そうしながらレイナへと話しかける。


「じゃあ、このダンジョンをクリアしたのはレイナってことでいい?」

「ほ、本当にいいのですか?」

「あぁ。俺には名声も富も何もいらない」


ただ必要なのはあのクソ女神をぶち殺せるだけの圧倒的な力のみ。


それ以外のものなどいらないのだ。



街に戻り俺は宿に帰ることにするが未だに同行してくるレイナ。


「いつまで同行するつもりだ?給料も出ないのに変なやつだな」

「変なやつ、ですか?あなたに言われたくは無いですが。言っておきますがね?あなた以上に変なやつはいませんよ」


そう言われて少しショックを受けた。


俺が、変なやつ、か。


そんなことを思いながら宿に入るもまだまだ同行してくる。

揺りかごから墓場まで着いてくるつもりかよ?


「で、なんの用?給料なら出さない、と言ったはずだが」

「私のことについて話しておこう、と思いまして」


俺の使っているベッドに腰かけてそう言ってくる彼女。

俺は黙って頷くとレイナは勝手にペラペラ喋り始めた。


「私は逃亡中の身なのです」


なんとなくそうなんだろうなとは思っていたが。


「私の住む国は滅びてしまいました。グリザック王国と肩を並べることの出来る、竜の国バランによって滅ぼされたのです」


竜の国バランと言うと竜騎士団と呼ばれている【黒い牙】が有名だな。


バランの【黒い牙】は原作でも最強と言われていた。

その設定は死に設定だったが覚えている。


だってかませ犬過ぎて印象に残らなかったのだ。

しかし……この世界ではどうなんだろうな。


原作通りの設定ならばかなりの強国だろうが。


「それで、そんなこと話てどうするわけ?」

「次、ユーカの番ですよ?」

「え?俺は話さないけど」


何を言ってるんだこいつ。

自分が話したから俺からも秘密を聞き出せる、とでも思っていたのだろうか?


キョトンとした顔をするレイナ。


「え、そ、そこはユーカも話す流れでは?」

「俺の国は死ね死ね光線で破壊されたよ」

「嘘つかないでください」


そうやって質問攻めを躱して俺はレイナに口を開く。


「んで、いつ帰る?俺そろそろ寝たいんだけどな。今日は。そっちも明日は報酬貰いに行くって話だろ?」

「話してくれるまで帰りませんから」


居座るつもりか?こいつ。

そう思いながら仕方ないのでその場で服を脱ぎ始める。


「な、何を?」

「だから寝るって言ってるじゃん。俺寝る時は全裸で寝る派だからさ」

「う、嘘ですよね?!」


嘘だが、実際抜き始めているところを見てレイナも考えを改めたらしい。


これで出ていかなかったら本物だと思うところだが。


「し、失礼しました!」


バタンと扉を閉めて出ていくレイナを見て呟く。


「ちょろ」

「聞こえてますからね?!」


そんなレイナが更に続けてくる。


「おやすみなさい!」

「あいよ」


答えて俺は思う。


「さてと」


そろそろ次の国へ行こうか。


そう思った俺は既にレイナの気配がなくなっているのを確認すると部屋を出た。

そして宿の受付へ向かい店主に話しかける。


アイオンでやることは基本的にはもうないと思う。


「世話になったな」


そう言って店主と俺との間にあるカウンターに金を置く。


「あのレイナとかいう嬢ちゃんは一緒じゃねぇのか?」

「たまたま会っただけでなんの関係もない。ここで別れて二度と会うことは無いだろう」


俺はそう言って店主の目を見て別れを告げる。


「あんたとこうやって別れるように、さ。じゃあね」


玄関の扉を開けて俺は夜の街に出ていこうとするが


「なぁ、あんた凄腕の冒険者なんだろ?」


そう聞いてくる店主。


「何を思ってそう思ったのかは分からないが」

「雰囲気がさ。独特の雰囲気があんだよ」


そう言って店主は紙をカウンターに出てきた。


「先払いで報酬は出す。この依頼、頼まれちゃくれないか?」

「俺が持ち逃げする可能性は考えないのか?」

「そんな大金じゃない。持ち逃げされても文句は言わねぇよ。先方から連絡があればまた新しい使いを出すだけさ」


そう言ってクエストを渡したきた店主。

次の目的地との中間にある場所で軽くモンスターを撃破してくれ、との依頼だった。


「まぁいいだろう」


そう答えて今度こそ俺は宿を後にする。

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