第5話 生還

「もらうぞ?それ」


【死神の目】


魔族にはデフォルトで備わっている敵の弱点を見抜く特殊な目。


ズブリと、ソウルイーターの仮面に手を付き入れた。


「ギィィィィィィィェェェェェェ!!!!!」


赤色の体液がソウルイーターの仮面から溢れてきた。


ソウルイーターの中にあった心臓を掴むと引き抜く。


俺の手の中でビクビクと脈打つ心臓。

それを握りつぶすと同時にソウルイーターは絶命した。


【レベルが上がりました】


【千葉 優華】


 LV580


 HP:+880

 MP:+880

 攻撃:+880

 防御:+880


【適正:魔人】

【称号:血を求める者ブラッディ・シーカー



【千葉 優華】


 LV1780


 HP:+2600

 MP:+2600

 攻撃:+2600

 防御:+2600


【適正:魔人Lv2】

【称号:血を求める者ブラッディ・シーカー

【特性:ロード・オブ・ブラッド】



レベルアップ表記と別に


【ソウルイーターの撃破を確認しました。ダンジョン攻略条件の達成を確認】


との表示も出たきた。

どうやらこれでこのダンジョンの攻略は成功した、というわけらしい。


それを確認して俺は更にこのダンジョンをクリアするためにクリアルームへと向かおうとしたが。


そのとき、ソウルイーターが召喚した魂は光に包まれた。

そして、黒いオーラを放っていたのに、いつしか優しい光の魂に変わっていた。


その魂達が天に登っていく。

俺の知る言葉では成仏、というやつなのだろうか?そう思って見ていると、一人の魂が最後まで残っていて俺に話しかけてくる。


「ありがとうございます。名も知らぬ恩人よ」


と頭の中に直接語りかけてくる。


「別に礼なんていいよ」

「あなたに伝えたいことがあるのです。女神クオンは邪神です」


俺が思っていたことを改めて伝えてくる男。

俺の感覚がズレていなくてホットした。


どう見ても邪神だもん、あれ。

何が女神だよ。


「あれを止めてください。あれはとんでもない邪神なのです」

「分かってるよ。地獄にたたき落とす」


そう言ってやるとにっこり笑う。


「頼みますぞ」


そう言って最後の魂も天に登っていった。

安らかに眠ってくれたらいいが。


そう思いながら俺は最後のエリアに向かう。

中に入ると魔法陣が置かれていた。


原作にもあった転移するための魔法陣。


【おめでとうございます。当ダンジョン初めての攻略者、それから唯一の生存者となります】


「唯一、の生存者か。どの程度の難易度のダンジョンなのかは分からないが、生き抜くことには成功した、というわけか」


俺は魔法陣に手を着いた。

原作でもあったものだから、使い方は分かる。


「転移せよ」


次の瞬間俺の体は光に包まれた。



目を開けると外に飛んできていた。


後ろを振り返ると、今までいたダンジョンの入口らしきものがあった。


「はぁ……地獄から帰ってきたぞ……」


伸びをひとつ。

薄暗い洞窟からやっと解放された。


「さて、あの女神様とやらを今度は地獄に叩き落とすのだが」


原作ではそんなストーリー展開なんてなかったし、通常イベントや隠しイベントでもそんなものはなかった。


だからここからは


完全に俺だけのオリジナルストーリーが始まる、というわけだ。


そのためには更に強くならないといけないな。

魔人、それもダブルである俺も相当に強いはずだが、女神様はそれ以上に強いはずなのだから。


更には原作でも語られた女神の特性である【七色のヴェール】というあらゆる攻撃を吸収するバリアの破壊方法。


それもどうにかして知らないといけない。


「原作では女神クオン率いる勇者軍が魔王軍を撃破する、か」


そんなストーリーはここで終わりだ。


「勝つのは魔王軍でもクオン達でもない、最後に立って笑うのは、この俺だ」


口が歪むのが感じられた。


これより。


魔王軍と女神クオンそれから、俺の三つ巴の勢力争いが始まることを俺だけが知っている。

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