第27話 今度は俺の番

「こっちです!ユーカ様!」


フェルの案内で王国中を走り回る。


危険視されているこの国の要素についてはすべて排除が終わった。


さすがと言うべきか、七星剣。


騎士団と呼ばれた連中も彼女たちの手にかかれば、すべて吹けば飛ぶようなそんな存在だった。


あとは今魔王軍との交戦中で戦力が削れている、というのが俺に味方をしていた。


「女神クオンは召喚の間と呼ばれる場所にいるようです!」


どうやらフェルには探知系のスキルがあるらしく、女神の居場所を突き止めてくれたのだ。


拾っておいてよかった、と痛感する。


そうして俺たちは王城の庭園に上がり込み、その先の王城の中に入り込んだ。


「どっちだ?フェル」

「こっちです」


フェルがどんどん案内をしてくれる。


そして、地下に向かっていく。

地下へ続く階段を一段ずつ降りる度に俺の胸は高鳴っていく。


(やっと、だ。やっとあの女神を地獄に落とせるのだ)


その想いが胸を満たしていた。

そして俺の中にいる七星剣のメンバーもまだか、まだか、と復讐の時を待ちわびている。


「クオンはこの先です」


フェルは一つの扉の前で立ち止まった。

大きめの扉。


その先に女神がいるようだ。


「ロード。お任せを」


先程と同じように扉を切り裂いて破壊してくれるベアトリス。


俺を阻むものはなくなった。

それを理解して即座に部屋の中、召喚の間へ走っていくと、俺の前には悪い意味で待ちわびた存在がいた。


あぁ、俺はこいつに会いたかったんだ。


この、クソ女神に。


あの時と変わらない姿で召喚の間に立っていた。

そして俺の顔を見て顔を引き攣らせる。


「は、廃棄勇者……な、なぜここに……お前はたしかに廃棄したはず、ばかな、生きていられるわけが……」

「いつもの余裕はどうした?クソ女神」


一歩近付くと一歩下がるクソ女神。

俺を敵だと認識しているようだ。


それも簡単に近付かせてはならない、というくらいには俺を脅威と感じているのだろう。


「なぜ、下がる?」


女神が下がる理由なんて分かっていて俺は聞いてやる。


「廃棄したほど俺は価値のない人間なのだろう?あの時のように廃棄してやる、くらい言ってみたらどうだ?」


女神はその言葉を受けて魔法を発動させた。


【ワープ】


俺を転移させるために放ったその魔法。

しかしその魔法は消え失せる。


七星剣のひとりが魔法を使い、女神の魔法を無効化したせいだ。


「あぁ、女神よ。久しいな。ずっと待っていたのだ。こうしてこの手で貴様を切り刻める日を」


俺はまだ七星剣の名前を全員分覚えきれていない。

だが、女神はこの女を知っていたようで


「あ、アヤメ……数年前まとめて葬り去ってやったのに……」


女神は怒りや恐怖で拳を震わせているのが見えた。


「ロード。まず、私が闇のヴェールを剥ごう」

「頼むぞ」


頷くと弾かれたように走り出した彼女。

そして女神を攻撃する。


ザン!

本体に当たったかのように見えた攻撃。


【第七闇のヴェールが解除されました】


とりあえず女神のヴェールを1枚剥がすことに成功したらしい。


これであと女神が持つヴェールは六枚。


「な、舐めるなよ。人間風情が……忘れたのか?お前たちが数年前、私のヴェールを剥がしきれなかったことを。こんなもの再生させてしまえば……」


そうして


【ヴェール】


と唱えた女神だったが


「闇のヴェールが再生しない?」


飛び下がるアヤメに目を向ける女神にアヤメが答えた。


「女神クオン。貴様は勘違いをしているようだな。いつまで自分が上だと錯覚してる?」


そう言って消えるアヤメ。

次の七星剣が出てきた。


「ロード、次は私が」


【第六光のヴェールが解除されました】


これで2枚目のヴェール。


女神は歯を食いしばって俺と今出ている七星剣に対して魔法を使ってきた。


【ゴッドウィンド】


しかし、それは次に出てきた七星剣により粉砕された。


【第五土のヴェールが解除されました】


また次の七星剣に入れ替わり


【第四風のヴェールが解除されました】


どんどんと解除されていく女神のヴェール。

やがて


「ロード。このベアトリスにお任せを」


そして


ベアトリスが


【第二水属性のヴェールが解除されました】


残るひとつまで解除してくれた。


そこでまだなにが起きているのかを理解できないらしい女神は俺に聞いてくる。


「七星剣などしょせんは人間のぉ……雑魚の群れ……なぜ、私の攻撃が通らない!」


だが答えたのは俺ではなく、ベアトリスだった。


「我らがロードの力がお前を完全に上回っているから、だ」

「に、人間ごときが?」


そう言われ俺は笑って目の色を見せてやった。


「ざんねん、今の俺は【魔王】だ」

「ま、魔族化?!ば、ばかな……人間の成功例?!」


俺はそれを見せてやってから一歩ずつ女神との距離を詰めていく。


その歩みに同行してくるベアトリスが続ける。


「そしてそんなロードの配下となっている我々は擬似的にロードと同じ格、つまり魔王になることができる。それが我らの王のお力」

「な……そ、それは……」


分かりやすく言ってやることにしてやろうか。


「お前で言うならお前が呼びつけた勇者全員がお前と同じく【女神】のランクまで引き上がる、ということさ」

「あ、ありえん!」


その言葉を受けて俺は最後の一人、レイナに目をやった。


「最後のヴェールを剥いでやれ。それで丸裸の女神のできあがりさ」

「はい」


【第一火のヴェールが解除されました】


「く、くるなぁ!私に寄るなぁ!化け物!」


近付いて俺は女神の首を掴んでやった。


「ぐぅっ!」


壁に女神を押し付ける。


「さぁ、終わりだな、女神さんよ」

「は、離せぇ!私は女神だぞ?!」


その言葉を聞いて俺はにっこり微笑んで女神に告げてやる。


奇しくもそれは、あの時と同じシチュエーションだった。


変わったのは俺が笑うか、こいつが笑うか。

それだけ。


「離すわけないだろう?俺はお前を地獄に叩き落としに来た悪魔なんだよ?さぁ、【廃棄】の時間だ。笑いなよ」


無論最後まで笑い続けるのはこの俺だ。

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ロードオブダーク~ゲーム世界にクラス転移したけど俺だけ【勇者】適正なしと追放されたけど、俺だけが【魔王】になれることを俺だけが知っている。 にこん @nicon

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