第16話 原作では触れられない【トリプル】


【ロード・オブ・デッドが発動しました】


俺の特性が発動したことを示す文字。

それを確認したとほぼ同時に、竜騎士達が口々に言葉を吐いていく。


「て、撤退だ!!!!撤退せよ!!!!」

「こ、この魔人は危険すぎる!!!バラン王国に戻りバラン王家にこの魔人のことを報告せよ!!!!」


ジークの指示も無視して竜騎士共が勝手に撤退を始めようとしていたが


「はーはっはっはっは」


ジークが急に天に顔を向けて笑い始めた。


「逃げるな。敵前逃亡は死罪だ」


ジークがそう口にしたが、竜騎士達は聞く耳を持たない。


「逃げろぉぉ!!!!」


そう言って逃げ出そうとした竜騎士達をジークは槍で攻撃していった。


「言ったな?敵前逃亡は死罪、だと」


死体にそう言ってから今度は俺を見てきたジーク。


「ははは。待っていたのだ。このときを」


さっきとは態度が一変して俺を見てくるジーク。

そのまま槍を構えた。


「バラン王国黒い牙の総隊長ジーク。お前を好敵手と認める。敵は強ければ強いほど燃えるのだ」


そう宣言して


「槍術スキル」


【ライトニング・ランス】


奴はスキルを使ってきた。

俺に迫り来る光の槍。


だが、それは俺には当たらなかった。


「ロードォ」


俺を守るように先程死んだはずのカインが代わりに受けていた。


「ネクロマンサーか?貴様」


俺にそう聞いてくるジークに首を横に振った。


「俺はただの魔人さ」


そう答えて俺は、ミノタウロスやこいつらがひたすらに呟いている「ロード」というものが何なのかを確信した。


こいつら俺の事を神や主だと思っているのだ。


それが俺の特性【ロード・オブ】というものなのだろう。


そして俺の配下となるものはこの後に続く文字によって変わっていく、といったところか?

今はブラッドの時は自分の中に入れた血のモンスターと1部雑魚だった気がするが、今は死体まで配下になっている。


まぁ、この当たりはまだまだ要検証、といったところか。


現実に目を戻す。

カインだったものは光の槍を受けてなおその場に立つ。

そしてジークへと向かっていく。


「ふん!」


カインに向けてもう一度技を繰り出すジークだったが


「馬鹿な!なんだこの再生能力は!」


カインの腕や足が欠ける度に急激な速度で再生していく。


「ロードォ」


カインの攻撃。

しかしそれは避けられたが


「「ロード」」


別の死体により、回避は無駄になっていた。


「がはっ!シュバルツ!スタイナー?!」


俺は名前を知らないがそう呼んでいるジーク。

奴は今仲間だった奴らに襲われていた。


そして上空では先程竜騎士達と共に殺された白竜達が空を自由に飛んでいた。


この世界でも死体は動かないものだ。

つまりあれらも全てロードを守るために生きているもの。


「がはっ!」


仲間だったヤツらに拘束されるジークに俺は近づいて行く。

もちろん、とどめを刺すためだ。


「ぐっ!この死体操作が貴様の特性ギフトか!」


ジークは叫んでくる。


「貴様には騎士道、ホコリというものがないのか?死体を操作して手を汚さずに勝利するなど」


何を言い出すかと思えば俺への非難の言葉だった。


笑って答えてやる。


「俺、騎士じゃないし、ははっ。面白いことを言うものだ」

「がぁ!」


かつての味方に組み伏せられるジーク。


「ロードノゴゼンデアル」

「クチヲォツムシミナサイ」


そう言われて地面に顔を擦り付けられるジークを見ていると、ガバッと突如起き上がってきた。

上にのしかかっていた俺の配下すべてを押しのけて。

そして手に持っていたナイフを俺の右目に向けて突き刺してきた。


「クソ魔人がぁ……」


その後即座にまた俺の配下に組み伏せられるジーク。


目を刺されたのは初めてだったな。

ナイフを引き抜く。


「うわっ。右目なにも見えないな」


と思ったのも一瞬だった。


俺の右目にはすぐにジークの真っ青な顔が映るのだから。


「う、嘘だろ……」


目を失っても魔人としての再生能力がすぐに修復してくれるようだ。

素晴らしい、素晴らしい機能だ。


「ロードノテキヲハイジョセヨ、シュバルツ」

「イエス、ロード。スベテハロードノタメニ」


配下同士で会話してシュバルツと呼ばれた竜騎士がジークの持っていた槍を手に取る。


先程までとは逆の関係になる俺たち。


先程までの俺やレイナは敵陣にたった2人放り出されたようなものだったが。


今はジークが敵陣に一人取り残されていた。


「こ、この俺を?!!!殺すつもりなのか?!!!」


そう叫んでくるジークの前でシュバルツは槍を俺に渡してきた。


「ロード。コノブレイモノニセイサイヲ」


頷いて俺は逆手に槍を持った。

槍の先端はジークの首筋に。


ガタガタとジークの歯が音を鳴らす。


カチカチカチカチカチカチカチカチ。


死の恐怖に怯えているのだろうか。


最後にお願いをしておく。


「今後使うこともあるかもしれない。参考にしたいんだ​─────苦痛に呻く顔ってやつ見せてくれよ?」


ザシュッ!


俺の手にあった槍は豆腐をフォークで突くかのようにジークの首に突き刺さる。


絶命するジーク。

それと共に俺の特性も終了した。


死体は死体に戻る。


それを見届けてから次の目的地に向かう準備をする。


「ゆ、ユーカ?い、今のは?」


そう聞いてくるレイナ。


「答えることは無い」


そう答えて俺はさっさと歩いていく。


そうしながらレイナにひと言。


「俺に同行してもいいことないぞ?」


そう答えながらいろいろと考える。


魔人LV3。

【トリプル】と呼んでいる位階であってもまだ物足りなさは感じる。


(まだ上があるのか?)


レベルを上げる度に生物としての格が上がるのは感じるがそれでも、俺は未だに魔法のひとつすら満足に使えない。


俺が出来るのはロードとして配下を動かすだけ。


今回だって事が上手く運び、ジークがコマを用意してくれたからなんとかなったのもあるだろう。

しかしこの先戦闘になる度にコマが揃う保証なんてない。


(俺が強くなる方法を探さないとな)


【千葉 優華】


 LV1790


 HP:+2700

 MP:+2700

 攻撃:+2700

 防御:+2700


【適正:魔人LV3】

【称号:血に染まりし殺意ブラッディソード

【特性:ロード・オブ・デッド】

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