第25話 もうひとり

「お久しぶりですねユーカ」


そう言って現れたのはレイナだった。


「レイナ?」


面食らう。

こいつが、最後の七星剣?


そういえば、剣聖とかって呼ばれてた記憶もあるが。

最後の一人がレイナだなんてことは思いもしなかったな。


「レイナは召喚術式に細工を行い、お前のサポートをここまでしてくれたはずだ」


と語るイリーナ。

なんだ、そういうことだったのか。


「私が盗賊団や白竜騎士団に追われていてのはそういうことです。細工をしたのがバレて、女神クオンの指示で追われてたわけですね」


そうだったのか知らなかった。


そこで頬をふくらませるレイナ。


「普通、大丈夫?なんで追われてるの?とかって聞いてきそうなもんですけど聞いてきませんでしたね?」

「別に興味無いからさ」

「むむ」


俺の事を見てくるレイナだったが、そんな彼女に俺はここに来た理由について促す。


「なにか、話すことがあるんだろ?そんな顔してる」


そう言うとレイナは話し出した。


「魔王軍が動き出しました。それに合わせて女神クオンは異郷からやってきた勇者たちをその迎撃に向かわせております。つまり今女神の王国はがら空きです」


俺を見てくる大魔術師イリーナ。


言われなくても分かっている。


「今ここで叩きのめす」


踵を返す。

もちろん、この場を離れるため。


やっと、だ。

やっと俺はあのクソ女神に一矢報いることができる。


いや、実際のところは一矢で終わらせるつもりは無い。

万だ万の矢をあいつにくれてやろう。


最後に大魔術師に目をやった。


「そこに繋がれるのはあんたじゃなくて女神でもいいんだろう?」

「お前、私を助けるつもりなのか?」

「あんたを助けるのはついでだ。メインは、あのクソ女神をそこに繋いで死ぬまでこき使ってやりたいだけさ」


女神をここに繋いで永遠に苦しませ続ける、それを俺の復讐方法とする。


まさに地獄。


「フェル。行くぞ。女神のところまでの案内を頼む」

「フェルにおまかせを!」


フェルが俺の前に立って先導しようとしているのを見てから七星剣に伝える。


「お前たちの活躍。俺に存分に見せてみろ」


それぞれの言葉で答えてくれる少女たち。

しかし、この七星剣というやつ、なんで全員女の子なんだろうな?

まぁいいか。


【七星剣が配下になりました】



魔王軍の侵攻が始まり世界は混乱していた。

今もこうしてクソ女神の国へ向かう途中も魔王軍のモンスターだろうか?と戦う音が俺の耳にまで届いていた。


だが俺たちが目指すのはただひとつ。

あのクソ女神の下だ。


その道中、俺はこの作戦についてきてくれる子達に最後の確認を行う。


「俺は大まかな指示しか出さん」


主にレイナ以外の七星剣にそう口にした。


「全員女神に対して思うことはあるだろう」


この子達は大魔術師イリーナと共に女神クオンに挑み破れ、殺された。

怒り、悲しみ、憎しみ思うところはあるだろう。


それは分かっているつもりだ。

なにより廃棄された俺が一番分かっているつもりだ。


「だが今回は怒りのぶつけ先がある。お前らの怒りをあのクソ野郎にぶつけるのだ」


そう告げると俺に一番突っかかってきていた少女が頷いた。

名をベアトリスというらしい。


「イエスロード。復讐の機会をくださったこと誠に感謝しております。すべてはロードのために」


そう言って改めて全員が俺に敬礼してきた。

ビシッと決まっている。


「え?え?」


そんな中ひとりだけノリについていけてなかったレイナは慌てて真似してビシッと敬礼していた。


こいつだけ生き残ったからちょっとズレてるんだろうな。


「イエスロード。このレイナはこれからあなたの剣です。存分にお使いください」


覚悟を確認して俺たちは今度こそ王国の門へと近付いた。


「久しぶりだな、この王国も」


固く閉ざされた門。


「ロード。お任せを」


ベアトリスが前に出てきて、門を切り裂いた。


「あなたの行く手を阻む者、この七星剣のベアトリスがすべてを切り払いましょう」


その言葉に頷いているとレイナが真面目な顔をして話しかけてくる。

「ロード」

「どうした?」

「その場のノリで言ってましたけどロードってどういう意味ですか?」


俺はフェルに目を向けた。


「フェル。ここから女神の待つ王城までの最短ルートを割り出せるか?」

「少々お待ちくださいませ」

「ちょっ?!華麗にスルーですか?!」


騒いでいるレイナをスルーしつつベアトリスに念の為に確認を行う。


「もうこのまま突撃しても問題ないのか?七色のヴェール、それ以外に対処すべきことはないのか?」

「流石はロード。そのことについてお話をしたいと思っていまして」


そう言って話し始めるベアトリス。


「この国には女神の他に宮廷魔術師、女神直属の騎士団、それからフリーの騎士団などがおります。先にそちらの機能を停止した方がいいかと」

「ふむ」


たしかに原作でもこの国の騎士団などは強いと騒がれていたな。


「それから、白竜騎士団の存在ですね」


との事らしいが


「そいつらは倒した」

「た、倒した、のですか?流石はロード。では私が話した3つの勢力ですね。これを先に機能停止、してしまいましょう」


方針を固めた俺たちは女神に行く前に素早くそれらを無力化に向かうことにした。


周り道は嫌いだが、これで最後の決戦だ。

必要なことくらいはしておこう。


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