第8話 いろいろと確認をする

「見ていないな」


厳密に言えば女なら先程見かけたがそれがエルフかどうかまでは確認していない。


当然の話だ。裸の女の人なんてマジマジと見るものではないだろうからな。


「嘘ついてもなんもいい事ねぇぜ?」


俺をぶん殴ってくる男。


「……」


少し痛いな。

だが、死にはしない。


俺には異常な再生能力があるから死ななければ、生きている、ということだ。

だからなんの問題もない。


「おい。こいつ多分本当になんも知らねぇぜ?」


と殴った男に別の男が言った。


「ちっ……どうやらそのようだが」

「殺す手間も惜しい。さっさと行こうぜ?」


そんな会話をしている奴らだがひとりの男が手を挙げた。


「顔見られてんだ。ヤッちまおうぜ。それに、俺のこの吸血剣にも人の血を吸わせてやりてぇからなぁ!」


そう言って俺の腹を斬りつけてきた男。


「ひゃはっ!大量に血が出てやがるぜ!」


俺の斬られた腹から血がドバドバと出てきて、その血は全て奴の手に持つ剣に飲み込まれていく。


「ヒール」


魔族と気付かれないように呟いた。

それを見て男が顔を歪めた。


俺が回復したことに対して喜んでいるようだった。


「おいおい、このサンドバッグわざわざ回復してくれてるぜ!ひゃはっ!殴り放題じゃねぇかよ!」


ズバッ!ズバッ!


俺を何度も斬りつけていく男。


「ヒール」

「ヒール」

「ヒール」


その度に俺はそう口にして傷口はすぐさま再生を始めていく。


「ひゃはっ!どんだけ吸血させてくれるんだよこいつ!神様かよ!血のバーゲンセールかよ!」


そう言いながらどんどんと切りつけていくこと十分程度が経った。


男にここでやっと苛立ちが見えてきた。


「もういい!早く死ねよ!クソヒーラー!」


その間も斬ってくるが俺の異常な再生能力の前では全て無駄なことだった。


「おい、ザス!いつまでやってる?!」


ザスと呼ばれた男が答えた。


「このヒーラー死なねぇんだよ!腹斬っても何処切っても回復しやがる!」

「首いっちまえ!首いって、死なねぇやつはいねぇ!」

「おう!」


次にザスは俺の首を狙って刺突を行ってきた。

グサッ!


刺さる剣。


「へへっ!これで死んだだろ!流石に!」


そう口にしているザスを見て俺は口を開いてやる。


「​どうした?──────それで全力か?」

「は?」


ザスは俺の顔を見て剣を首から引き抜いてその場で尻もちをついて、倒れた。


「な、なんだこいつ……首に大穴開けられてんのに……喋ってるぞ……」


そろそろ吊られているのにも飽きてきたな。


足に力を入れてロープの結び目を強引に引きちぎって空中で回転して着地する。


その間に俺の首の大穴は治癒を完了させた。

それを見てザスが口を開いた。


「こ、こいつ、ヒーラーじゃねぇ……」


俺を指さしてくるザス。


なにかに気付いたか?


「こ、この目……こ、こいつ……魔族だ。魔人だ」


ザスがそう言った瞬間他の奴らも戦闘体勢を取った。


そうか。

元々の目の色は赤色なため気を緩めれば目の色が戻ってしまうようだ。


まだまだその辺の制御が甘いのかもしれないな。


「て、てめぇら……一斉にかかるぞ」

「なんでこんなところに魔人がいやがる……」


全員が一斉に迫ってきた。


まず、一番近かったやつに回し蹴り。

首が吹っ飛んだ。


その次に剣を投げつけて一人の胸を刺し貫く。

絶命した。


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


向かってきた3人目の足を蹴り払った。


「ごぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」


倒れ込む男に告げてやる。


オーバーリアクション気味に地面を転げ回っている。


「災難だったな?『足』を痛めてるんだろ?」

「こ、これが相手の弱点を見破る【死神の目】?!!!」


頭部を踏みつけるとバキャリと頭蓋骨が割れる音がした。


残ったひとり、ザスに目をやる。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」


先程までの威勢はどこにいったのか俺から逃げ回るように後ずさるザスを追いかける。


ザスは逃げるのに必死なのか剣を落とした。

それを見て思う。

実験してみようか。どこまで原作通りなのか。


「俺が魔人だと判明した上で聞いてあげるよ」

「ひ、ひぃ?!」

「今までナニを斬っていたか、分かるよね?」


俺はザスが落とした吸血剣を手に取った。

それは俺の血を吸い込んでいてパンパンになっていた。


「ステータスオープン」


魔人の目は相手のステータスを見ることも出来る。



【ザス】


 LV50


 HP:+80

 MP:+80

 攻撃:+80

 防御:+80


【適正:盗賊】



吸血剣を握りザスの足に突き刺した。


「ごぁぁあぁぁあぁ!!!!!!」

「どんなものでも、過ぎれば毒になるって知ってるよね?」


吸血剣は相手の血を吸って強化される武器だが、そんな血でも過ぎれば毒になる。


吸い過ぎればこの刀はモロくなりすぐに壊れる。


吸血剣の刀身を殴るとペキリと折れた。

そこから俺の血がドバドバと溢れ出てくる。


それがザスの足に入り込んでいく。


「や、やめてぐれぇぇぇ!!!!死にたくない!!!!!」


「ロシアンルーレットだよ。99%以上死ぬと思うけど、1%引けるの祈ってみたら?」

「あぁぁぁあぁぁあぁあ!!!!!!!」


しばらくしたらザスの体は横たわった。

そして、腹部が破裂して死んだ。


「残念」


そう呟いて俺は立ち上がる。


周囲に散らばった死体を見てから立ち去る。


「いろいろと収穫はあったな」


俺の再生能力は異常の一言に尽きるということ。

それから原作通り、人間の体内に魔族の血が入ればほぼほぼ死ぬ、ということ。


そしてその原作ではストーリーの中で人間から魔族化できた人間は存在しなかった。


つまり


「この世界の人間で魔族化できるのは、と考えていいかもしれないな」


そのことに小さな優越感を覚える。


俺だけが特別だった。


「さて、アイオンへ向かうか」


俺はそのまま死体を放置して次の目的地へ向かうことにした。


残念ながらまだまだあの邪神には勝てないだろう。

力を付けなければならない。


しかし、と思う。


一応あの女神は主人公サイドの神様のはずだ。

それであれだけの邪悪ぶりなのだ。


この世界の敵だった魔王ってあれ以上の邪悪なのだろうか?


原作ではその辺は語られていなかったからな。

どうなんだろう?




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現在の転移組の生き残り(公式)

・38/40


【死亡者リスト】


千葉 優華

宮田 太郎

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