概要
ひとの妻を愛する権利が君にあるのか
友人の平岡に譲ったかつての恋人、三千代への、長井代助の愛は深まる一方だった。そして平岡夫妻に亀裂が生じていることを知る。道徳的批判を超え個人主義的正義に行動する知識人を描いた前期三部作の第2作。角川文庫『それから』所収。(※キャッチコピーは本文抜粋)
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!夏目漱石の冒険
私は「夏目漱石の長編小説を発表順に読む」という遊びをしていたことがある。
けれどもこの試みは『三四郎』で中絶してしまった。
それまでの『坑夫』『虞美人草』といったイカニモ賛否両論ありそうな作品や、今で言う「連作短編」みたいな『吾輩は猫である』の構成、大胆にも絵や俳諧・漢詩の話ばかりが挿入される『草枕』などを「文句言いながら読む」のが楽しかった私としては『三四郎』はなにやら完成されすぎていてかえってつまらなかったのだ。
そうして私は数年間漱石の作品を放置していたのだが、何気なく『それから』を読んで衝撃を受けた。
『それから』には『三四郎』に見られるツルリとした「完成」が見られない。
神…続きを読む