人と人が出会う時、そこには理由があります。
そして善い人には善い人との良縁があるものです。
外見だけを取り繕っても視える人には見破られる。
〈心〉が綺麗であった女性が、居場所を決め、家族を得る、その過程で彼女と繋がる様々な縁はそれまで狭く暗かった彼女の世界を広く明るくし、やがて彼女の優しさと心の美しさが嫁ぎ先のとある因縁をほどいてゆきます。
初っ端から断りなく乙女の唇を奪う旦那様はなんと不器用でかわいらしいこと❨ニヤニヤ❩
うちの嫁が一番かわいいって彼は思ってそうですよね、確実に思ってますよね(笑)
作者様の他の作品の繋がりも垣間見え、そちらを未読の私は繋がりがあるもうひとつの和菓子屋さんの物語が気になって仕方ありません!!🍡
さてさて嫁入り先のこのお屋敷
心の汚い人は鬼は外されちゃいますよ
だってそれは……〈いるから〉ね?
"家"のため、駒として、嫁いだ"家"は使用人の続かない曰く付きの"家"―そして言い渡される、意味ありげな言葉
「夜が明けるまで、部屋を出るなよ」
「二階には入るな。階段もさわるな」
「朝晩、わたしとキスはしてもらう」
政略結婚の駒として引き取られた、妾腹の子である主人公。もう戻る"家"はないと、嫁いだ瀧川家には見目麗しいが酷薄そうな夫と盲目の祖母、そして秘密が―
実は、ハイスペ男子かと思ったらスパダリでした!
えぇ、激甘です。なにより主人公が応援したくなります。ホラーの要素もあるのですが、それがまた主人公の魅力を引き出すのです。
このお話は恋愛カテゴリですが、"家族"と"幸福"の意味を考えさせられるお話でもあります。
架空の国、架空の時代とあらすじにありますが、モデルは明治の終わりから大正くらいの日本でしょうか。
明治に定められた家制度、より以前から続く家長制度…未だにこの国がジェンダーギャップを埋められない因縁が描かれているように思います。
そして、"家族"とは血の繋がりではなく、共にありたいとお互いに思えることなのかな、と考えさせられたお話です。
このお話の作者さまは、家族について扱われたお話を多く公開されています。福祉の最前線で働かれた作者さまだからこそ書ける含蓄のあるお話、ぜひ読んでみてください。
妾腹の志乃は父の命令で、瀧川家に嫁がされる。
そこは、使用人がつぎつぎと辞めて行き誰も残らないという曰くつきの家だった。
しかも、ちょっととっつきにくそうな夫は、「朝晩、わたしと口づけをかわすように」と志乃に告げる。それは、愛されているからというよりも、何か別に理由がありそうで……。
ちょっと冷たい感じの旦那様、目が不自由だが暖かい義母、どこからともなくやってくる猫。そんな家族たちにかこまれ、幸せな家庭を作ろうと奮闘する志乃だが。
やがて姿を現す、この世のものではない怪異。また、志乃に悪意をいだき、不幸の底に突き落とそうとする者たち。
だが、そんな志乃を守ったのは意外にも……。
物語は、大正時代の和風恋愛譚。西洋文化と東洋文化がまじりあい、科学と怪異が交差する時代。そして女性が社会に出ようする時代でもありました。
そんな社会の転換期に、自分を強く持ち、暖かい家庭を手に入れようと奮闘した一人の少女の物語です。
妾の子であり、父親やその家族から、使用人のような扱いを受けていた志乃。
結婚話も彼女の意思など関係なく、追い出されるようにして嫁がされます。しかも嫁ぎ先では、嫁というより、タダ働きの女中のような立場で……。
と、冒頭は不憫さに涙なのですが。
意地悪ババアだったらどうしようと思っていたおばあさんが意外にも常識人で、ホッ。かわゆい猫さまも登場し、やたらキス魔の夫にも、なにやり訳があるようで。
賑やかなキャラクターたちに翻弄されていただけの志乃も、徐々に自分の願望について考えていくようになります。
ぐいぐい興味を引く展開で、あっというまに最終話!
最後は感動の拍手を送りたくなりました。
架空の国の設定ですが、おおよそイメージは明治大正あたりの雰囲気。
外国文化と新しい価値観のなか、過去に置き去りにしてきた因習、非道さが物語に深みを出しています。主人公の変化といっしょに、周りも素晴らしい未来に向かって踏み出していく、素敵な作品です。
妾腹の子である雪宮志乃はある日、父の命により会ったこともない男のもとへと嫁がされる。
家の利益になるための政略結婚。そこに愛もなければ幸せもない……と思いきや。
嫁いだ先、滝川の家は変わった場所でした。女中や使用人が次々と止めていくため、家の事は志乃がやらなければならず、目が見えない義祖母の世話もしなければなりません。
けどこの義祖母の千代さん、そして夫である慶一郎が、とっても良い人たちなのですよ。
慶一郎はちょっと言葉足らずなところがありますけど、それでも志乃を思う気持ちは本物です。それ故にもっと分かりやすく気持ちを伝えなさい、千代さん、慶一郎に渇を入れてあげてくださいって何度も思いましたけど、そんななかなか上手くいかないもどかしさが、このお話の面白いところ。
滝川の家に来た当初はオドオドしていて、成り行きに身を任せるだけだった志乃ですけど、だんだんと自分の好きなこと、やりたいことを見つけていく様子が感慨深かったです。
滝川の家はみんないい人。
特に気に入ったのが、やって来た志乃のことをちゃんと可愛がってくれて、孫夫婦を優しく見守ってくれる千代さんです。もしかしたら彼女の存在が、夫婦円満の鍵なのかもしれません。
そしてそんな千代さんに懐いている飼い猫ちゃんにも、たくさん癒されました。
出会いや交際の過程をすっぽかして、結婚から始まる夫婦の物語。
読み終わった後、幸せは結婚してから家族で作っていくものなんだって思いました。
妾腹の子として生まれ、不遇な扱いを受け続けてきた志乃。そんな彼女にも、嫁ぎ先が決まることになります。
とはいえその相手というのが、よからぬ噂が流れている上に、祝言なし、家に女中なし、盲目の祖母同居でその面倒を見る。そしてもちろん、それまでに培う愛もなしという、残念ながらとても幸せな結婚とは言えないもの。なのに彼女がこれを受け入れたのもまた、その方が家にとって都合が良いという、駒扱いされた結果でした。
しかしもちろん、この話はただ志乃が辛い仕打ちを受けるだけのものではありません。結婚相手の慶一郎は、少々ズレていて、はじめこそ上手く言っているとは言い難かった夫婦関係ですがそこで活躍するのが、慶一郎の祖母である千代さん。世話する、されるといった立場の二人でしたが、それだけには留まることなく、ちゃんと志乃と向き合い、彼女を全うに扱ってくれています。それまで志乃が実家でどれだけ不遇な扱いをされていたか知っているだけに、彼女の優しさに心が温まるようでした。
もちろん夫である慶一郎も、歩みはゆっくりなれど徐々に夫婦としての仲を深めていく。そして、初めて知る愛情と数々の出会いは、志乃自身にも変化をもたらしていきました。
辛い境遇にあるからこそ、幸せになってもらいたい。古くから数多くの物語で書かれていることですが、本作もまたそんな気持ちにさせられ、だからこそそれが叶う時、我々読者も幸せな気持ちになることでしょう。
これぞ、青嵐ワールド。
痛みを受けとめ苦難を乗り越えようとする可憐なヒロイン(大丈夫です武州ガールズですから)。
若干ズレていつつもそこが親しみ深い、出来た人柄のヒーロー。
抜群の安定感で精神的バックアップをありがとうございますの、お助けキャラクター。
愛護愛護、ひたすら愛でたい、あやかしさま。
場を和ませたり、期待感を煽ったり、絶対殺意を催させたりと、さまざまな人物が縦横無尽に出現。
そして。
この作品には、孤立無援だったことで呪いのなかに取り残された姫が……。
似た立場であるからこそ力になりたいと思うヒロインの無鉄砲なほどの善良さが、周りの優しさや思いやりと力を合わせて、呪いを祝いと変えていく。
「皆で幸せになろうね!」(自業自得なモノ除く)
そうです、これこそが、青嵐ワールドなのです。