"家族"はみんな一緒に、そんな一言が無性に嬉しい――

 "家"のため、駒として、嫁いだ"家"は使用人の続かない曰く付きの"家"―そして言い渡される、意味ありげな言葉

「夜が明けるまで、部屋を出るなよ」
「二階には入るな。階段もさわるな」
「朝晩、わたしとキスはしてもらう」

 政略結婚の駒として引き取られた、妾腹の子である主人公。もう戻る"家"はないと、嫁いだ瀧川家には見目麗しいが酷薄そうな夫と盲目の祖母、そして秘密が―

 実は、ハイスペ男子かと思ったらスパダリでした!
えぇ、激甘です。なにより主人公が応援したくなります。ホラーの要素もあるのですが、それがまた主人公の魅力を引き出すのです。

 このお話は恋愛カテゴリですが、"家族"と"幸福"の意味を考えさせられるお話でもあります。
架空の国、架空の時代とあらすじにありますが、モデルは明治の終わりから大正くらいの日本でしょうか。
明治に定められた家制度、より以前から続く家長制度…未だにこの国がジェンダーギャップを埋められない因縁が描かれているように思います。
 そして、"家族"とは血の繋がりではなく、共にありたいとお互いに思えることなのかな、と考えさせられたお話です。

 このお話の作者さまは、家族について扱われたお話を多く公開されています。福祉の最前線で働かれた作者さまだからこそ書ける含蓄のあるお話、ぜひ読んでみてください。

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