嫁ぎ先は事故物件


 妾腹の志乃は父の命令で、瀧川家に嫁がされる。
 そこは、使用人がつぎつぎと辞めて行き誰も残らないという曰くつきの家だった。

 しかも、ちょっととっつきにくそうな夫は、「朝晩、わたしと口づけをかわすように」と志乃に告げる。それは、愛されているからというよりも、何か別に理由がありそうで……。

 ちょっと冷たい感じの旦那様、目が不自由だが暖かい義母、どこからともなくやってくる猫。そんな家族たちにかこまれ、幸せな家庭を作ろうと奮闘する志乃だが。
 やがて姿を現す、この世のものではない怪異。また、志乃に悪意をいだき、不幸の底に突き落とそうとする者たち。
 だが、そんな志乃を守ったのは意外にも……。

 物語は、大正時代の和風恋愛譚。西洋文化と東洋文化がまじりあい、科学と怪異が交差する時代。そして女性が社会に出ようする時代でもありました。
 そんな社会の転換期に、自分を強く持ち、暖かい家庭を手に入れようと奮闘した一人の少女の物語です。

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