みやげ話と夏夜のお祭り③


 翌日から週末は、まとまった雨が降り、志保は大人しく家の中で勉強したりテレビを見ていた。

 ひまりたちも雨の日まで遊びに誘うことはなく、静かな、だけど少し物足りない日を過ごした。


 そして、雨があがった翌日。

 いつものごとくひまりとかげやが家まで迎えに来て、3人で街へとくり出す。

 だがその日は、少しいつもと様子が違った。


「……大人の人たち、いっぱい集まってる?」


 神社の方やゴトさんの家の近くになると、大人の人たちが何人か集まって話をしていた。

 女の人たちも、どことなく楽しそうだが忙しなく動いているように見える。

「今週末にお祭りだもん。みんなそろそろ準備するんだ」


 そう言えば、先週にひまりが言っていたことを思い出し納得する。

 周りの人たちが忙しなく、だけど楽しそうにしているのを見て、志保も内心わくわくとしていた。




 今日は、神社へとやってきた。

 最近神社の裏の方にミケさんがよく出入りしているらしいので、それを確かめに来たのだ。


 だけど、神社にはたくさんの男の人たちが集まっていた。


「おう、ちびっこ共か。これから大きい荷物が出入りすっから、気をつけんだぞ」

 私たちに気づいた若い男の人が忠告した。


「お祭りの準備? 楽しみ〜!」

「あの、何かお手伝いすることとかはありますか?」

 志保が尋ねると、「子どもたちは祭りの当日を楽しめばいいんだ」と断られてしまった。


「だが、しかーし!」


 男の人は、いつの間にか志保たちの後ろに隠れるように立っていたかげやの肩をガシッと掴むと、引っ張っていく。

「かげや、お前はもう6年生なんだから、俺らの手伝いだぞ」

「子どもはお祭りを楽しむもんじゃないのかよ……」

「男衆は準備も楽しむもんだ。ほら、お前はこっち」

「いーやーだー」

 半ば引きずられるようにして、かげやは男の人たちの輪の中に消えていった。


 かげやが抜けてしまい、志保とひまりは準備の邪魔をしないように神社を後にした。

「ねぇ、私たちは手伝わなくて本当にいいのかな」

「いいと思うよ。だって私、今までお手伝いとかしてないもん」

 それは実にひまりらしい答えなので、彼女はそうだろうなと思わず納得してしまった。

 けれど志保としては、友だちが手伝いに駆り出されている中遊ぶというのも申し訳ないという思いもあり、どうしようかと困ってしまう。


 その日は結局、最後までかげやは手伝いにいそしんでいたらしく、志保たちのところへ戻ることはなかった。ひまりと2人、おしゃべりに花を咲かせたが、1人かけただけで遊ぶには物足りず、いつもより早い時間に解散の流れとなった。




 夜、緑が帰ったあと、祖父と夕ご飯を食べながら今日の出来事を話した。

「ねぇ、おじいちゃん。私もなにか手伝ったりできることはないの?」

 志保は祖父に尋ねてみる。

「力仕事は男衆に任せてればいいし、志保が気にすることは無いぞ」

「でもかげやは手伝ってるよ?」

「かげやは男だろ。そろそろ手伝いに混じってもおかしくはないしな」

 そうなのかもしれないが、志保はそれでも何か手伝えることはないかと祖父に尋ねた。


 祖父は少し考えたあと、

「祭りの日にはな、たくさんの人たちが集まるんだ。祭りに合わせて、遠くから帰ってくるものたちもいる。何かしたいっていうなら、わたりさんの家に行ってみたらどうだ? 力仕事は志保にむかないと思うが、どうしてもというなら、渡さんのとこがいいだろう」

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