第10話 シェイニーさん、奴隷ムーブやめてくれせんかね?
翌日、盛大に寝坊した俺は、レイニーとシェイニーによる『風信樹』のモーニングコールで叩き起こされた。
二人が帰った後、夕食を食べながら完成した
なので、お日様の光が異常に眩しく感じて目が開かない。
受信を促すため、ベッドサイドの机の上で『風信樹』がブルブルと振動音を立てている。
くぅ、もう少しだけ寝てぇ……。
でも、出ないとレイニーに眉間に皺が寄るんだろうなぁ。
今日は店も開けないといけないし、
あー、ねむてぇ。ねむてぇ。
俺が起きられないまま、半ば夢の中にいると、階下の扉の鍵がカチャリと開く音がした。
泥棒!? まさか、ここはそんなことするやついない場所だが!?
鍵の開いた音を聞いて、一気に眠気が覚める。
店のある立地は、富裕な層が住む地区なので衛兵の巡回も多く、防犯意識の高い地区だ。
そんな場所で白昼堂々と泥棒に入るやつが――
「こらー、柊斗! 『風信樹』に出なさいよー」
「柊斗さん、大丈夫ですか? 病気ですか? まさか、死んでないですよね!? ああ、大変。三階にあがって確認してくる!」
「ああ! お姉ちゃん!?」
ドタドタと階段を上がってくるのは、レイニーとシェイニーだった。
そう言えば、3日ほど前、万が一俺が病気とかで動けなくなってたら、鍵の閉まったままの店を開けられなるって言われて、二人に合鍵を渡したなぁ。
泥棒かと思ってビビッて損したぜ。
鍵を開けて店に入ってきた者の正体を知り、安堵した俺は再び眠りの国に戻り始める。
ドアが勢いよく開くと、ベッドで横たわる俺の上に誰かがのしかかってきた。
「柊斗さん、死んではいけません! 生きて! 生きてください!」
混乱しているのか、シェイニーが的確な心臓マッサージを撃ち込んでくるため、息が詰まって声が出せない。
いてぇ、いてぇ、いてぇっす。シェイニーさん、落ち着いてくれ!
必死に腕をもがいて、心臓マッサージを続けるシェイニーの手を掴んだ。
「げはっ! 大丈夫! 生きてるから!」
「ほん……とう……ですか! た、たたたたたた、大変失礼しました! 『風信樹』にもお出になられませんし、店の外から声を掛けても反応がなく。もしかしたら急病なのでは思ってしまい。合鍵を使ってお店に入ってしまい。このような大失態を犯してしまいました。こんな失態を犯したわたしには、柊斗さんから罰を与えてもらわねばなりません。なんでもします。身体を差し出せと言われれば差し出しますし、一生奴隷になれと言われればそうします。なので、どうか、どうかお許しください!」
朝からかコンプライアンス的に非常にマズい、シェイニーの奴隷ムーブが始まってしまった。
シェイニーの行動に悪気がないのは知ってるため、奴隷ムーブを収めるため、彼女に罰を与えることにした。
「げほ、げほ。じゃあ、罰として俺の朝食当番と店の前の清掃よろしくね」
俺の身体の上に跨っていたシェイニーが顔を恍惚とさせて返事をする。
「は、はい! すぐに朝食の支度と店の前の掃除を全力でいたします!」
俺の身体から下りたシェイニーは、朝食の支度をするため、駆け足で階下に下りていった。
シェイニーにとって、俺から罰を与えられることは、失態を許されると同意義だと感じているらしい。
俺が罰を与えず許すと口にすると、ずっと不安そうな顔をしてこちらの機嫌を窺ってくるのだ。
最初に彼女たちを変態貴族から助けるため、方便で行った奴隷契約が、シェイニーの中で何か別なものに変質してしまっていると思われる。
付き合い方を間違えたかなぁ……。
イテテ、胸骨折れてないよな……。
正直、もう少しだけ寝たかったけど、目が覚めたから起きるしかない。
俺は痛む胸をさすりながら、しばらくぼんやりして、ゆっくりと服を着替えると、爆速で朝食の支度をしているっぽいシェイニーが作る飯の匂いが届いてきたので一階に下りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます