エピローグ 幸せな二人

 事件が解決し、氷狼フェンリルの群れからの謝罪を受け続けること3日が経った。



 当主就任の儀式の当日となり、新たな氷狼フェンリルの群れの女王となったスノーリアと、ドンバス家の新たな当主となったアルガードの正式な誓いは交わされた。



 そのアルガードの耳には、俺の作った例の補聴器が銀色の光を反射している。



 だが、あれが必要だったのかと言われると、少しだけ自信がない。



 もしかしたら、あれがなくてもアルガードとスノーリアは、お互いの絆で乗り越えていたのかもしれなかったからだ。



「異種族間の恋物語か……。俺の魔導具は役に立ったのかな」



「柊斗さんの魔導具はちゃんと役に立ってますよ。二人が前よりもイチャイチャしてますからねー」



 シェイニーが指摘した通り、スノーリアは最初に会った時よりも、さらにアルガードにべったりとくっついて甘えた姿を見せている。



 一方、アルガードの方も周囲の目を気にする様子も見せず、スノーリアとイチャイチャしていた。



 そんな二人を式典に参加した人たちが、ほんわかした気持ちで見守っているのだ。




「それにエルフの古い言い伝えに、精霊が人に恋をしたことで肉体を得たって話がある知ってます? 氷狼フェンリルは精霊に近しい存在ですし、もしかしたら――」



「今度アルガード様とスノーリアに会いに来たら、綺麗な女の子が隣に居たりしてー」



 シェイニーとレイニーの言葉を聞いてびっくりした俺は、もう一度、アルガードとスノーリアをチラリと見る。



 そこにはアルガードの隣でニコリと微笑むアイスブルーの瞳に白い近いプラチナヘアーの綺麗な女性が、こちらを見て頭を下げた。



「え!? マジで!?」



 目をこすると、見えた美女の姿は消えた。



 錯覚か、いや、もしかしたら……いたんだろうか。



 それからアルガードの当主就任を祝う宴が始まったため、謎の美女については確認することができなかった。

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ジャンカー魔導具店、始めました。 シンギョウ ガク @koura1979

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