第17話 必要な魔導具を考えだしました
「では、失礼して」
握られているアルガードの手を強く握り返し、【呪い鑑定】を発動させる。
名前:アルガード・ドンバス 年齢:18歳 呪い:なし 性別:男 種族:人族
属性:風A 土B 火C 氷G 雷D 光B 闇B
ジョブ:魔物使い
スキル:鎮静
やっぱり、推測通り異常に氷属性の能力が低い。
Gクラスじゃ、ほぼないに等しいから魔物使いの能力を持ってても、相手の声が聞こえないはずだ。
となると、作る魔導具は補聴器だな。
それも氷属性の発信を増幅して受信できるようになる補聴器が必要になる。
作る物が定まると、脳内に魔導具の形が浮かび上がっていき、必要な部品が浮かんでくる。
氷属性を増幅させないといけないから、『氷狼の精霊糸』、『氷狼爪の魔核』、『氷狼牙の魔石』、『氷結石の歯車心臓』、『緑の魔結晶』って感じの部品があれば作れそうだ。
必要と思われる部品をメモに書き留める。
「ありがとうございます。人物鑑定させてもらったことで、作るべき魔導具が見えました。問題は必ず解決します」
「本当ですか!」
「ええ、ちなみに『氷狼の精霊糸』、『氷狼爪の魔核』、『氷狼牙の魔石』の中古品とかってお屋敷にありませんか?」
俺は中古品しか扱えないジャンク屋なので、部品を調達するのも一苦労する。
「中古品ですか……。品質が悪くて出荷できない物はいくつかありますが、使用された物となると……あっ! ありますね。父が当主に就任した際、契約した時に使用した短杖にそれらの部品が使われてたはずです!」
「それを分解しても……?」
中古品として部品を得たいので、提供された物は分解せねばならない。
大事な物であった場合、取り返しがつかないのだ。
「私の状況を話し、提供してもらえるよう父を説得します! そのためには柊斗殿の口添えも必要なので、領地にお越し頂けますますか?」
アルガードが説得を請け負ってくれたが、その説得のための口添えを頼まれた。
ドンバス伯爵家の領地まで行くとなると、往復で数週間はかかる。
その間、店を閉めないといけないだろうし、鑑定作業も滞るよな。
また売り上げが減って、レイニーに吊るし上げられる気しかない。
とはいえ、高額な『氷狼の精霊糸』、『氷狼爪の魔核』、『氷狼牙の魔石』の中古品が見つけられるまでどれくらいの時間がかかるか分からない。
「は、はい! 俺のでよければご協力します。道具も持って行きますので、向こうで道具を製作しようと思います」
「柊斗さん、いいんですか? レイニーがまた怒りますよ?」
シェイニーが、俺の思った懸念をしたことを口にした。
「まぁ、仕方ない。依頼者優先がジャンカー魔導具店の魔導具販売部門の方針だし。店主の俺が決めたことだから」
レイニーの怒り狂う姿が脳裏に浮かんでいくのだが、当主就任の儀式まで時間がないアルガードの困りごとを解決を優先させたい。
「本当に申し訳ございません。私のことで柊斗殿にご迷惑をおかけしてしまって……」
「いいんですよ」
「アルガード殿、気に病むことはない。柊斗殿は王都でも指折りの鑑定士であるし、金の心配はせんでいいと思うぞ。それに柊斗殿の魔導具作りは、利益度外視でやっておられるじゃろうしな。わしの依頼したあの孵卵器も予算を超えておるのじゃろ?」
本当なら予算内に収めるつもりだったが、ほとんど中古流通してない部品の購入費で超えました。
なんて、依頼人の前で言えねぇ。
「そ、そんなことはないですよ。なんとか予算内に収めてますから――」
「柊斗殿は嘘が吐けぬ人らしいのぅ」
イゴールが俺の顔を見て、大笑いを始めた。
どうも、大幅な予算オーバーを見ぬかられたらしい。
おかしいなぁ。俺ってそんなに顔に出るタイプなのか。
「まぁ、俺の話は置いて、イゴールさんも協力して頂きありがとうございました」
「よいよい、また困ったことがあったら相談させてもらうから、よろしく頼む」
「はい! 今後ともジャンカー魔導具店をごひいきにしてください!」
イゴールの依頼は無事に納品を完了し、俺のやれることはやった。
あとは卵の孵化を待つだけだ。
研究熱心なイゴールのことなので、きっと
生まれたらヒナを見に来るのもいいな。
俺が
「イゴール様、私の願いをお聞き届け頂きありがとうございました」
「うむ、アルガード殿も解決案が見つかったようでよかった。無事、当主就任の儀式を済ませられるとよいな」
「はい! 柊斗殿の魔導具で補助してもらい、必ずや成功させてみせます!」
アルガードの件も部品さえ揃えば、きっと解決はできる。
「柊斗さん、アルガード様、一度店に戻りましょう!」
先に魔導車を取りに行っていたシェイニーが、外から声を掛けてくる。
「おー、分かった。すぐ行く! アルガード様、行きましょう!」
「はい! イゴール殿、失礼します!」
イゴールに見送られ、俺たちは一度、ドンバス伯爵家の領地へ行く準備をするため、店に戻ることにした。
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