第7話少しづつ日常に戻りつつも、自分のスキルを研究し始める回

「ツユマル様、少し騒ぎになり始めておりますので馬車を回させました。


 どうぞお乗りください」




「あ、な、なんかすみません……」




「いえいえ、ツユマル様のなさったことは救国の英雄が如き事。


 謝る必要などありません。しかし、目立たないというのは無理かもしれません……」




「す、すみません考えなしに……」




「こちらこそ攻めるような物言いになってしまい、もうしわけございません。


 さぁ、ではお乗りください」




 ライトさんは色々と配慮してくれて、本当にいい人だ。イケメンだし。




 それから数日、色々とてんやわんやだった。


 


 海が綺麗になっていることで大騒ぎになって、実はこの街の領主だったサーナさんが色々と動いてくれて、旅先で見つけた水草が水を浄化してくれたってことにしてくれたり。


 俺は迷い人として無事に登録することも出来た。


 スキルについては、食用も可能だが、基本的には調味料が出せる。という訳の分からないことを言ったために4回ぐらい文官の方に聞きなおされた。


 結局昆布に鰹節をかけて食べていただいた。


 どうやら隠れた効能はばれなかったようだ。


 後で聞いたらサーナさんが魔力感知のない人をわざわざよこすように動いていてくれたらしい。


 元々の領主はお爺様で、ご両親と共に魔物に襲われてしまい、海という資源を失って傾きかけていたこの街を立て直したのがサーナさんで、この街の人々は皆サーナさんに感謝しているそうで、今回海をよみがえらせたことでさらにサーナさんの株が上がった。


 サーナさんは俺に悪いと随分気を使ってもらったけど、俺としては目立たずにサーナさんの役に立てて本当に良かったと思っている。と、そう伝えてある。これは本心だ。


 ものすごくよくしてもらえてるし、なんの不満もない。


 こちらの生活は非常に刺激的だ。


 客人扱いなのでおとなしくしているが、もうすぐ給金がいただけたら冒険者登録をして鰹節ソードで日々の生活費を稼ぎながら、様々な未知の食材で料理をしたい。


 正直、この鰹節と昆布で出汁を取りたいし、そばを作りたい。


 実はすでにそば粉は見つけてある。


 ファンタジーな食材も多いが、野菜関係は日本で知ることが出来た物も多く存在していた。


 さらには醤油と思われる調味料は東の国に存在しているみたいで、今度サーナさんが取り寄せてくれるみたいだ。




 そんな感じで、とても充実している。




「お疲れ様ですツユマル様、このところはバタバタしていて久しぶりに時間が取れました」




「ああ、ライトさんこんにちは。みなさんを忙しくさせてしまってる一端なので、申し訳ないです」




「いやいや、ツユマル様のおかげで我が街だけではなく周囲の土地でも海の浄化が進んでおります。


 これは国だけでなく世界も救うことになります。そのお手伝いをしていると思うだけで私は嬉しくてたまらないのです」




 そう話すライトさんは本当に嬉しそうに笑っている。


 ああ、イケメンの笑顔はここまでまぶしいのか……俺は照らされて消えてしまいそうだよ……




「今日はツユマル様に頼まれていた物がそろいましたのでお持ちしました」




「おお、ありがとうございます!」




「しかし、あのような大鍋。店でもなさるおつもりですか?」




「はは、実は前の世界では食事を出す仕事をしていたもので……」




「なんと!? あの強さでそのような仕事に?」




「いやぁ、俺が強いわけじゃなくて鰹節ソードが凄いだけですから」




「こん棒をまるで紙でも切るように切り裂いた姿には思わず目を奪われました……」




 そういえば、鰹節ソードをライトさんみたいに本職が使ったらどうなるんだろう?


 俺は鰹節で剣の形で作り出し、根元から折って取り外す。




「使ってみますか?」




「な、なんと! いいですか!?」




「ええ、もちろんですよ」




「ありがとうございます!」




「たぶんそのまま握っていると手が生臭くなりますから、あとちゃんと乾燥させないとカビが生えます」




「……き、気をつけます」




 どこの世界に剣をもらってカビるからって説明を受ける騎士がいるだろうか……


 ライトさんは荷物を置いてうきうきで訓練所に小走りで向かっていった。




 俺が頼んだ鍋とかをうきうきと確かめていると凄い足音が近づいてきた。




「つ、つ、ツユマル様申し訳ございません!!」




 部屋に入るなり何度も何度も頭を下げるライトさん。


 


「ど、どうしたんですか?」




「ツユマル様から頂いたこの剣を折ってしまいました……」




「おお、ほんとに見事に折れてますね……なにしたら折れました?」




「その……試し切りのために藁打ちをしたのですが、ツユマル殿のようには斬ることが出来ずに……


 3度目ぐらいにぼっきりと……」




 まぁ、普通に鰹節ならそうなんだよね……折れた剣からも鰹節のいい香りがしているし、硬いは硬いけど薄い剣の形にしたので俺が知っている鰹節の硬さで俺でも力を入れたらぽっきりと折れた。




「ちょっと一緒に行きましょう」




 思い当たることがあったのでライトさんと一緒に訓練場へと向かうことにした。




「これです……」




 ライトさんが訓練に使っている太めの木に藁が巻かれている。本来は木刀などで打ち込みように使うらしいけど、俺がこん棒を斬ったのを見ているからライトさん的にはスパッと一刀両断したかったんだろう。


 俺は鰹節ソードを作り出して藁打ちと対峙する。


 正直高校ぐらいに授業でやった程度の剣道の知識しかない。


 あとは時代劇くらいの知識しかない。


 しかし、俺が軽く鰹節ソードを斜めに振り下ろすと何の抵抗もなく振りきれてしまった。




 ドサッ……




 一寸置いて斜めに斬られた木材が地面に落ちる。




「さ……流石ツユマル様!


 くっ……私が未熟ゆえにあの名刀をあのような姿に……


 なんとお詫びすれば……」




 その剣を右手から外して隣の藁に同じように振り下ろす。




 ガッ




 今度は切れない。それどころかすでに刃が欠けてしまった。




「なるほど……ごめんなさいライトさん、どうやら俺と繋がっていないとあの無茶苦茶な切れ味は出ないみたいです……」




「ああ、スキルで作り出したものは本人しか使えないというタイプなんですね」




「そうなると、鰹節の削った物で魔力が回復したのは何でだ……?


 ライトさん、すみませんがメグさんに協力を頼めないでしょうか?」




「はい、すぐに呼んでまいります!」




 今のうちにいろいろと確かめておかないといけない。


 もっとみんなの役に立ちたいからね。


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