第8話やはり私の出す鰹節は凄い力があるようですねという回

 俺は実験用に、




 1、削り節として作り出した鰹節。


 2、普通の鰹節を出すイメージで手から生えてる状態の鰹節を削った物。


 3、手から外した鰹節を削った物。


 4、1でとった出汁。


 5、2でとった出汁。


 6、3でとった出汁。


 7、手から生やした乾燥昆布。


 8、手から外した乾燥昆布。


 9、7でとった出汁。


 10、8でとった出汁。




 とりあえあず、これらを用意した。


 訓練場にテーブルを持ち込んで鍋で出汁を取るなんてふざけたことをさせてもらうことにした。


 この世界には便利なものがあるもので、カセットコンロのような物がある。


 導力は魔力、魔石を利用して火を起こすことが出来る。


 魔物から取れる魔石は人々の生活に様々な恩恵を与えてくれている。


 魔物だけでなく、稀に鉱山などからも出土する物もあるそうだ。


 ファンタジーだね。




 実験のうわさを聞きつけてサーナさんもメグさんと一緒にやってきた。


 


「今後のために自分の能力を知っておこうと思いまして」




「素晴らしいことです。ここのところ落ち着かず申し訳ありませんでした」




「いえいえ、本当に良くしてもらって、少しでも恩返しをしたいので自分に出来ることを探ろうかと」




「ツユマル様、私は何をすればよろしいのですか?」




「メグさんには魔法を使ってもらって、それぞれの鰹節や昆布、それと出汁によってどんな効果が出るかを教えてほしいのです。自分には魔力の量などは分からないので……」




「わかりました」




 メグさんは簡単な魔法を色々と見せてくれた。同時に魔力というものの詳しい説明をしてもらった。


 そもそも魔力とはマナと呼ばれる自然に存在する物を人間の体に取り込んで利用できるようになったものだそうで、消費した魔力も魔法を使わずに休めば少しづつマナを取り込んで回復していく。


 マナや魔力を感じ取るには才能と鍛錬が必要で、残念ながら不適な人もいるそうだ。


 魔法は魔力を使用してマナに干渉して起こす事象変化で、個人の資質が重要になってくるそうで、メグさんは炎を扱うのが得意だそうだ。傷を治していた僧侶みたいな人、ヒースさんは回復魔法や光を操るのが得意だったりと様々な魔法が存在するそうで、俺のスキルも広義では創造魔法という分類になるらしい、ただ、魔力消費がなく、あれだけ昆布を産んでもケロッとしているのは通常では考えられないので、迷い人の特殊なスキルなんだろうとしか言えないらしい。




「それではまず1番から……うーん、やっぱり美味しいですねぇ……


 確かに魔力が回復してます。ああ、こんなに美味しいのに魔力が回復するなんて……幸せです」




「魔力ポーションは……まずいんですよ……」




 俺が不思議そうな顔をしていたらライトさんが教えてくれた。


 苦くて酸っぱくて臭くてネバーっとしていつまでも喉にへばりついたように残るらしい。




 メグさんは再び魔法を使って魔力を消費してくれる。




「次に2番……これは……しっかりとした味わいがしますね。うん、美味しいです。


 魔力も、きちんと回復しています。……1番の方が回復が早いかもしれないですね……


 でも、これ、なんていうかずっと噛んでいたい味ですね」




「削り器がないから普通にナイフで削ったせいで厚めになっていますからね」




「ちょっと失礼……うん、しっかりと味が濃くて……美味しいですね」




「1番よりも回復している時間は長いかもしれません……はい、ごちそうさまでした」




 今のごちそうさまは最高かわいい。




「次は3番ですね。いただきます」




 いただきますとごちそうさまが言える女性は素晴らしいとばっちゃんが言っていた。


 あと、ありがとうとごめんなさい。




「……2番と同じ感じですね……味も、美味しいです……ちゃんと回復しています」




「手から離れても魔力回復効果は変わらないのか……切れ味と硬度は本来の鰹節になると……」




 鰹節自体の仕組みは少し理解できた。


 次は、お待ちかねの出汁だ。


 変な声に何度も出汁を取れと言われたことを夢で見て思い出した。


 怒鳴りつけたけど、あれ、スキルくれた人かもしれないよねってことで感謝しておいた。




「4番は極薄づくりなので沸騰した湯に30秒ほど晒して濾した物にちょっとだけ塩で味を調えました。


 5番と6番は少し厚めなので2分ほど晒してから濾してあります同じく味を調えてあります。


 ついでに9番と10番は1時間ほど水に浸けてから火にかけて沸騰前に昆布を取り出して味を調えました。


 本当は冷暗所で一晩漬けたほうがいい感じなんですが、それはまた別の機会に」




「ああ……いい香り……いただきます……っ! これ、凄く美味しいです!


 なんだかホッとします! しかも、これ、凄いです!! 上級魔力ポーションぐらい魔力が回復するし……あ、熱い……魔力が……高まる……っ!」




 クール系美人のメグさんが顔を上気させる様は大変に艶っぽく、悶えるような行動と合わさって俺の性的中枢を刺激してくるが、あまりに綺麗な人すぎて芸術的な物を見せられているような達観した気分になる。これが賢者モードってやつか。違うか。


 メグさんはうちからあふれる力を抑えられないかのように魔法を放つ、今までは火球を出していたメグさんがまるで火炎放射器のように炎が突き出された手のひらから噴出する。




「す、凄い! 同じ魔法を放ったんですが!!


 これ、魔法効果向上の効果があります!!」




「補助魔法効果のある飲み物ですって!?


 す、素晴らしいですわツユマル様!!」




 サーナさんもものすごい興奮している。


 その姿に俺も興奮しそうだ。


 俺も試しに飲んでみたが、うん、普通にいい鰹出汁だ。いや、とても、いやいや、最高に美味しい出汁だ。これは逸品!




 その後、5番も6番も同様の効果が得られた。


 高ぶりすぎたメグさんの効果が消えるまで一時小休止となる。


 やはり鰹節に豊富に含まれるイノシン酸が疲労を回復するばかりではなく、魔力も回復して向上させるのだろう。さすがは鰹節だ。




 こうして鰹節の不思議パワーは新たな発見も見られた。


 次は、昆布のパワーを見せてもらおうじゃないか!

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