第46話 再会と回復な回
遠目に子どもたちの集落を見ながら俺たちはライオネン、シンサールと昼食を取る。
二人共、ダンジョンに入ったときとは比べようもない表情をしている。
我慢していてもニヤニヤして嬉しそうだ。
二人はある程度の確信を得ているんだろう、ブレイドさんとヒーロさんが生きているという確信を……
「あいつ、ほんとに、心配させやがって」
「今回こそはしっかりと言ってやらないとですね」
「二人共嬉しそうだね」
「は? ムカついてんだよコレは」
と、言いながらもニヤニヤしてる。ツンデレさんだなぁ……
「ヒーロは頑張ったんだな、あの朴念仁と家庭を作るなんて」
「ブレイドにも性欲あったんだな、食欲と睡眠欲と冒険欲しか無いのかと思った」
「最低な会話だなおっさんども」
「しかたねーだろ、ブレイドはほんとに酷いやつでな、もうヒーロが幾度となく告白してるのにその全てを寝落ちしていたり酔って覚えてなかったり突然冒険に出るとか叫びだして遮ったり……」
「わざとやってたんじゃないかって思ってしまうぐらいなんだけど、それがブレイドなんですよ」
「難儀な人なんだね……」
「難儀なやつなんだよ……」
そんな感じで昔話に花を咲かせていると、昆布に反応があった。
村のそばに突然大きなブレイド反応が現れた、ダンジョン中に張り巡らせた昆布センサーをくぐり抜けて動いていたということになる、そんな隠形が可能な人物がいることに、一人で驚いていた。
「どうやら帰ってきたみたいだよ」
その言葉と同時に集落が色めき立つ。
「パパー!」「ブレイドさん!」「おかえりなさい!」
子どもたちが集まって、犬たちもはしゃいで飛び回っている。
その中心には、巨大な猪のような獣を担いだ男性と、その傍らに美しい女性、それと数名の人がついてきていた。
「……この人数の気配を遮断するのか……」
俺は一人で別のことを考えていたけど、ライオネンとシンサールはいつの間にか立ち上がって、口を開けて固まっていた。
「あれ? 久しぶりじゃないか?」
獣をおろした男性が、こちらに気がつくと何でもない日常で挨拶でもするかのように声をかけてきた。
身長は180くらい、体は鍛え込まれているが肥大することなく研ぎ澄ませているような感じ、銀髪を腰のあたりまで伸ばして後ろで結んでいる。
その腰にはロングソードをぶら下げてあり、服装は動物の皮で作ったような原始的な服を来ている。
子どもたちと一緒だ。
そして、何よりも目を引くのが……あるはずの左手が肩から無くなっていて、右足も膝から下は木の棒で支えられている。
「え!? ライオネンにシンサール!? どうしてココに!?」
隣の女性は信じられないような物をみたように驚いている。
輝くような金髪のショートカット、少し気が強そうだが間違いなく美人だ。
全体的にワイルドな格好をしているからその美人さも少し隠れてしまっている。
身長は160くらい、その身長と同じくらいの美しい杖を持っている。
その後ろについていた大人たちは4名、男性2名女性2名、比較的装備も残っているので冒険者だったんであろうことは推測できた。
「ブレイド馬鹿野郎! 何が久しぶりだ!!
……生きていたんだな!!」
「ヒーロも! なぜ相談しないで突っ走った!
皆がどれだけ心配したと思っているんだ!!」
冷静なシンサールが珍しく声を荒げているが、なんというか、コレが昔のシンサールなんだろう。そう感じる。
それから4人は再会を喜んでいた。
「すまないツユマル、紹介が遅れた。
ブレイド、彼がツユマル。今回お前たちに会えた最大の功績者だ」
「はじめましてツユマルです」
「そうか、なんか二人が世話になったみたいですまない。
ブレイドだ。よろしく」
差し出された手には強固な剣ダコ、分厚く力強く握られると、なんだか熱のような物が伝わってくる。
「私がブレイドの妻でヒーロです」
色んな話を聞いていたので、その荒れた手を頑張ったんだねという気持ちを込めて握手する。
「さてブレイド、この状況の説明を求めるんだが……まずは……その腕と足どうした?」
「ああ、ちょっとやっちまった。でも大丈夫。これでも問題ないさ」
となりでヒーロさんがやれやれと頭を押さえている。
「後ろの人達もかなりぼろぼろだな……ツユマル頼めるか?」
「もちろん、皆さんこちらをどうぞ」
俺はアイテムバックから合わせ出汁を取り出して全員に配る。
「美味しいので一気に飲んじゃってください」
「お! ホントだ、こりゃ旨い!」
得体のしれないものだろうに、ブレイドさんはぐっとひと飲みで飲み干してくれた。
「なんだ!? アチッ!」
ブレイドさんの全身が光り輝き、失った左手と右足に光が集まっていき、手足が再生された。
「ネ、ネクタル!? そ、そんな高級品を!!」
ヒーロさんを含めて他の冒険者たちも傷だらけだった体が綺麗になったことに驚いている。
「ツユマルのおかげで、ネクタルは貴重品じゃなくなっているんだ……
子どもたちにも怪我人いるなら飲ませてやりな」
「た、助かる。皆を呼んでくる」
さすがのブレイドさんも驚いたみたいで、それにライオネンとシンサールが嬉しそうだ。
ブレイドさんが立ち上がろうとすると、久しぶりの生身の肉体にバランスを崩して倒れそうになる。
すかさずヒーロさんが支えてくれた、そして愛おしそうに左手に触れて涙を流していた。
「本当に……治ったのね……良かった……本当に良かった」
「ヒーロ……」
「ブレイドさん、俺が呼んできます!」
冒険者の一人が集落に走っていく。
「さて、再会したならやることは一つだ! ツユマル!
準備しよーぜ!」
「はい喜んで」
嬉しいことがあったら、やることは一つだ。
宴会だ。
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