第28話ユニクロを着たくたびれたおっさんが、爽やかな好青年にな回
「おはようございますサーナ様」
「おはようございますツユマル様、残念ながら王からの通達はまだのようです」
「たぶんシンサールが昨日動いたとして、たぶん明日か明後日だろうな最速で」
「ギルドが動くとそんな早いんだ……」
「あんなんでも王国内ギルドのトップだからな」
「ですので、ツユマル様にはもう少しお待ちいただくことになると思います」
「わかりました。こちらとしても王都を見学したりする時間が出来て有難いです」
「夜遊びが出来て嬉しいです。だろ?」
「んー? そういうこと言うなら大人しく宿に籠っていようか?」
「あー、なんか可愛く無くなってるなツユマルー」
「おはようございまーすライオネン、ツユマルいるかー、っと失礼しましたサーナ殿」
まるで友達の家に来るみたいに宿の扉を開けてシンサールが入ってきた。
サーナ様を見て急に丁寧にあいさつをしてるけど、時すでにお寿司だ。
「これはシンサール様、えーっと、お仕事は……よろしいので?」
「えー……オホン。下の者たちも色々と上が不在時の動きを学んでいただきたいと思いまして、貴重な能力を持たれた迷い人であるツユマル殿を我がギルドとしても最大限に保護する姿勢の一つとして私が」
「ツユマルや俺と遊びたいって言やーいいじゃねーか回りくどい」
「うるさいぞライオネン!」
「あらあら、すっかり仲良くなられたのですね」
「すみません、サーナ様の迷惑にはならないようにいたしますので……」
「いえいえ、いいのですよ、そんな意味で申したのでは……」
「そうだぞツユマル、サーナ殿は俺たちがあんまり仲良しになって拗ねていらっしゃるのだぞ」
「な、ち、違いますよライオネン殿もからかわないでくださいっ」
「では、サーナ殿も王都観光に行きましょうか?
王都は久しぶりなのでは?」
「え、ええ、まぁそうですね。地方の領主程度では王都に来る用事もそうそうありませんから」
「なら決まりだ! うちの使いを宿に置いておけば王から通達が来れば連絡がつくようにしておきます。
せっかくの王都にきて仕事ばかりされては、もったいない!」
「そうですか? め、迷惑でなければ……」
なぜか俺の方をチラチラと見ている。
「いえいえ、迷惑だなんて決して思いませんよ、皆で行きましょう」
俺がそう答えるとぱーーーっとまるで天使のような愛らしい笑顔で喜んでくれた。
あーーーーーーーいーーーーーやーーーーーー好きです。愛してます。我慢我慢。
鼻血出そうになった。
なぜか横でライオネンとシンサールが笑いをこらえてやがる。なんだよこの野郎、やんのか?
「すぐに準備してきますね!」
朝食を終えて、今日の予定は王都見学、もちろんサーナ様は公務もあったりもするけど、喜んでお付き合いいたします。
そんな感じで俺も準備しようと思ったら……
「ツユマル、お前さんいつもラフな冒険者みたいな格好だが、ここは王都だぞ。
昼は少しまともな格好にしろ」
とライオネンに言われたので急遽お着換え。
こっちでサーナ様に選んでいただいた服に着替える。
謁見の時はさらにきちんとした服装を用意してもらっているが、この服も日本でいうフォーマルスタイルな装いだ。
深い茶色、革製の靴に落ち着いたブルーのスーツに白いワイシャツ、流石にネクタイはしないけど、これらの服は俺がいろいろとサーナさんの街の仕立て屋さんと苦労して作った物だ。
蚕の養殖とかの技術も俺の持っていた知識が役に立って喜ばれたなぁ……
おかげで日本では決して着られないようないい仕立てのスーツスタイルを作ってもらえた。
それにしても、おなかが引っ込んで、わ、悪くないと個人的にも思うんだが……
「……ふふん、あー、シンサールまだあの特技出来るか?」
「そうだな、ツユマル、ちょっとこれ巻いとけ」
外に連れてこられてマントを巻かれた、まるで床屋か何か……
シュン、ヒュンヒュンヒュン
と思ったら風切り音が……
ぱらぱらと何かが落ちて、心なしか、頭がすっきり……
「って、髪の毛が!!」
「相変わらず見事だな」
「まあな」
「ちょ、ちょっと危ないじゃないですか!」
「大丈夫だろ、当たりそうになったってお前なら避けるだろ」
「そ、そういう問題じゃ」
「まぁまぁまぁ、ほれ、見て見ろ」
そういいながらライオネンが鏡を担いできた。どっから持ってきた?
「な、これが……俺……???」
鏡に映るのは、見慣れた顔ではあるが、随分と引き締まって肌もなんかきめ細かくなってる。
痩せて随分と精悍に見えなくもない、あれ、俺痩せると二重だったんだ……
髪の毛は短く整えられ、適当にぼさぼさとしてた頃に比べると随分とさわやかな印象になっている。
全般的に、若返ってないか俺? 髪の毛も、増えた? 昆布様? 昆布様のおかげなの?
さらに、流石は仕立てがいい服装は、まるで俺の体ではないかのようにビシッと決まっている。
「いっつもヨレヨレで楽な格好ばっかりしているからなお前は、なかなかいい男じゃないか」
「ツユマル、サーナ様の隣を歩くならそれくらいは気を使え」
なんかニヤニヤしている二人は気に入らないが、正直、自分のことながら驚いた。
確かにシンサールはなんていうか洒落者なカッコいい恰好をしているし、ライオネンにしても自分の肉体を活かしたきっちりした格好をしている。
俺は、そういうことに意識を払ったことは無かったな……危ない危ない。
「ありがとう、二人とも、サーナ様に王都で恥をかかせるところだった」
「かーーーっ、お前ってやつは本当にどこまでも……」
「いいじゃないかライオネン、すぐにわかるさ」
「あら、こちらだったのですね。お待たせして申し訳ございま……せん……」
振り返ると、素敵な外出用のドレスに着替えた天使が立っていた。
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