第23話 逆奇襲だ!
「えっ!? 『ギョール』の本拠地だって?」
俺ーー西海は浅野の言葉に不審に思った。悪の秘密結社たちは、基本的には自分たちの本拠地を公開しないからである。もちろん『ギョール』もそうである。それなのに、なぜここで『ギョール』の本拠地の話が出てくるのか。
「実は……」
浅野が口を開き、それについての説明が始まるかと思われたそのとき。
「フハハハハハ!」
俺たちの真上から謎の高笑いが聞こえた。見ると、俺たちが立っている道の脇の住宅街の屋根に、怪人と戦闘員がずらりと並んでいる。俺はその中央にいる人物に見覚えがあった。
「あっ! お前は、『ギョール』の総帥、ショホン!」
ショホン総帥は慎重にも俺たちからかなり離れた位置に立ち、勝ち誇った顔で俺たちを見た。
「ククク……私はお前たち『ポンジャー』が住宅街で戦っているという情報をキャッチしたものでな。ここで待ち伏せして叩いておこうと、チャンスを待っていたのだ」
ショホン総帥が自信たっぷりに話すと、怪人と戦闘員たちがずん、と一歩前に出た。
「な、何だって……まさか、逆奇襲されたっていうの……」
浅野が何か呟いている。逆奇襲とは何だろうか。
「よし、敵は少数だ! やってしまえ!」
ショホン総帥の掛け声で、『ギョール』たちが一斉に襲いかかってきた。まずは怪人二人が浅野に襲いかかる。浅野がそれをしのぐと、長距離攻撃型の怪人たちが浅野を集中砲火する。もちろんそんなことでやられる浅野ではなく、聖剣ムラマサでそれらをしっかり防ぎつつ、怪人たちに反撃している。だが、いかんせん敵の攻撃が激しく、浅野は思うように動けない。
「よし、いいぞ! エースの浅野さえ封じてしまえば、『ポンジャー』は封じられたも同然だ! 狙いを緩めるなよ!」
やはり浅野はマークされているようだ。まあ、最近の浅野の活躍には本当に目覚ましいものがある。警戒されるのも無理はないだろう。しかし、これではこちらに勝機はない。向こうの考えている通り、俺たちはだいたいにおいて浅野の攻撃力に頼っており、平田や村上などでは怪人たちの囲みを突破したり敵の本陣を突くような力はないのだ。だが、実は俺には最近温めてきた考えがあった。
俺は怪人や戦闘員たちの攻撃を避けつつ、激戦地の後方に回り込んだ。ショホン総帥はやはり前線からはかなり遠いところにいるが、全く姿が見えないわけではない。姿を見せることで、味方の士気を上げる狙いもあるのだろう。それなら、実は俺の思う壺なのだ。
俺はじっくりとチャンスをうかがった。そしてそのときはやってきた。俺、浅野、ショホン総帥が一直線に並んだのである。
「『ポーズビーム』!」
俺は迷わずビームを発射した。ビームはまっすぐに飛んでいき、怪人と戦っていた浅野に当たった。
「ふぇ、うわーっ!」
浅野は変な声を上げながら吹っ飛ばされた。だが、浅野が吹っ飛ばされた先にはちょうどショホン総帥がいる。
「うわーっ……ん?」
やはりそこは戦隊最強の浅野である。瞬時に俺の意図を理解した。
「うわーっ!」
今度はショホン総帥が叫ぶ番だ。だが、もう遅い。
「ショホン総帥、覚悟!」
浅野の聖剣ムラマサがショホン総帥に振り下ろされ、ショホン総帥はバッサリと斬り下げられた。
「ぐわっ! し、しまった、いったん撤退だ! 撤退……あれ?」
ショホン総帥はいつものように本部にテレポートしようとするが、なぜかテレポートできない。
「な、なぜだ!」
「あ、ショホン総帥、実はあなたには悪いんだけど……」
浅野がなぜか言いにくそうに言う。
「おそらく『ギョール』の本部は、もう戦隊たちに制圧されているわ」
ショホン総帥はぽかんとした。
「ええっ!? 私たちの本拠地は誰にも知られていないはずだ! どういうことだ?」
だが、そこで浅野は驚くべきことを言った。
「あなたたちの本拠地の情報は、もうこちらが握っているのよ。まあ、そちらがわざわざ出てこなくても、もうそれまでの命だったということね。おとなしく諦めなさい。あなたたちの長年にわたる悪事の数々、とうてい許しておけるものでなないわ!」
浅野は聖剣ムラマサでショホン総帥を突き刺した。ショホン総帥は今度こそ絶命した。
「ふう……あれ?」
ところで、いつのまにか『ギョール』たちがこの住宅地から消え失せている。ここまでのやりとりの中でも、総帥を助けようという動きは全くといっていいほど見受けられなかった。
「あれ、みんないなくなっちゃったわね。総帥がやられたのに怒って攻撃してくるとばかり思っていたけど……」
浅野も不思議そうにしている。
「結局、ショホン総帥の人望がそれまでだったということだろ。何にせよ、『ギョール』はこれで無力化されるにちがいない」
俺がそう言うと、浅野も笑顔でうなずいた。
「ついにやったわね。さて……」
浅野は少し表情を引き締めてこちらに向き直った。
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