第9話 怪人どうしの対決だ!
「あっ! お前たちは!」
怪人エンブンが立ち止まって、俺たち『ランチャー』と自分たちの間に現れた奴らを指差した。
「ーー怪人リョウガンと怪人シュウブンだな!」
怪人チョーウンも、驚いたように新しい怪人コンビを見た。
「いかにも。私は悪の秘密結社『ギョール』所属の怪人リョウガンだ。こっちは怪人シュウブンだ。最近『ギール』の奴らが不穏な動きをしているということで、ここらで一つ叩いておけという命令が出たのだ」
怪人リョウガンと怪人シュウブンは腕まくりをして、臨戦体制だ。
「怪人リョウガンと怪人シュウブンといえば、『ギョール』のエース格の怪人よね」
土佐口がこちらに耳打ちしてきた。
「そうだな。悪の秘密結社も俺たち戦隊と同じようにいろいろあって、互いに足を引っ張り合っている。ここは動かず眺めていよう。潰し合ってくれるかもしれない」
俺と土佐口は、さっき直接怪人の攻撃を受けた斎藤と正親町とは違って無傷だが、とても怪人たちの間には入っていけないだろう。まずは様子見だ。
「何を! お前たちは『ギール』の名前をパクった犯罪者だ! お前たちにやっつけられるわけにはいかん!」
「パクったのはそっちだ! 覚悟しろ、秒殺してやる!」
怪人チョーウンが喧嘩を売れば、怪人リョウガンがすぐさま買う。ついに四人の怪人たちはお互いに突進していった。
「「喰らえ!」」
怪人チョーウンと怪人リョウガンの剣が、こちらが耳を押さえたくなるような轟音を立ててぶつかり合う。一瞬、二人の動きが止まった。だが、それはすぐに崩れた。
「『ゴールド・ムーン』!」
怪人チョーウンがそう唱えると、魔剣ミカヅキが突然金色に光り、怪人リョウガンの剣が真っ二つになった。
「グギャアアアア!」
怪人リョウガンは聞くに耐えないような叫び声を上げながらこちらに吹っ飛ばされてきた。
「今だ! 『ランチャーキック』!」
「『ランチャーパンチ』!」
即座に斎藤と正親町が追撃を加えると、あろうことか怪人リョウガンの体は真っ二つに割れて、それぞれ右と左に飛んでいった。誇張ではない。本当に言った通りのことが起きたのである。
「えっ!?」
「嘘でしょ!?」
斎藤と正親町は呆然とそれぞれが切り離した怪人リョウガンの残骸を見ている。
「怪人が死ぬだなんて……」
「こんなにしっかり真っ二つに斬られるなんて……」
いや……二人の驚きはもっともだ。
「土佐口、今まで怪人が死んだところを見たことがあるか?」
「私はまだないけど……でも、怪人どうしの戦いでは、その攻撃のあまりの威力に、結社の本部にテレポートする暇もなく絶命してしまうことがあると聞いたことがあるわ」
「なるほど。この場合、怪人チョーウンの必殺技が強すぎたんだな」
怪人チョーウン恐るべしである。斎藤の命が助かったのが奇跡的であるように思えてくる。
俺たちが怪人リョウガンの後始末に追われている間に、怪人チョーウンはもう一人の『ギョール』の怪人である怪人シュウブンに援護射撃を加えつつある。
「ひええ! 2対1とか聞いてないぞ! 怪人リョウガンめ、弱すぎる!」
怪人シュウブンは怪人エンブンや怪人チョーウンから距離を取って逃げ回っている。怪人エンブンと怪人チョーウンは連携を取って、怪人シュウブンをだんだんと端の方に追い詰めていく。
怪人シュウブンは必死に彼の特殊能力である水を銃弾のように撃ち出して反撃するが、いかんせん2対1では勝負にならない。両方とも火系の特殊能力である怪人エンブンと怪人チョーウンに追い詰められてしまった。ついに怪人チョーウンの火球が怪人シュウブンをかすめ、怪人シュウブンはバランスを崩した。
「もらった! 『螺旋《らせん》斬り』!」
怪人エンブンはここぞとばかりに必殺技を発動した。ところが、そこで怪人シュウブンが、にやりと笑ってパチンと指を鳴らした。
「うわっ!?」
怪人エンブンの下の地面から、何か植物のようなものが生えてきて、怪人エンブンに絡みついた。
「は、離せ!」
怪人エンブンは暴れたが、暴れれば暴れるほど植物はきつく絡みついた。
「ふはははは! これは俺の必殺技『トラッププラント』! このツタにひとたび絡みつかれてしまえば、自動的に中の者は体を絞められていき、しまいには絶命してしまうのだ!」
怪人シュウブンが得意そうに技の説明をしている。
「土佐口、怪人シュウブンにそんな必殺技ってあったっけ?」
「なかったはずよ。たぶん新しく発明したのね」
怪人たちも日々進化しているのだ。これはますます出て戦うわけにはいかない。
「なに!? 水と植物、二つの系統の能力を使うだと!? 油断できないな……だが、怪人エンブンを見捨てるわけにはいかん!」
怪人チョーウンは怪人シュウブンをめがけて突撃した。
「かかったな! 『トラッププラント』!」
これを待っていたのだろう。怪人シュウブンの掛け声に合わせて、怪人チョーウンの足元から再びツタが生えてきた。
「あっ、しまった!」
だが、怪人チョーウンはそれに捕らわれなかった。怪人チョーウンは『トラッププラント』が発動される直前に、大きくジャンプしていたのだ。
「なぜ技の発動が読まれていたのだ!」
驚く怪人シュウブンに、怪人チョーウンが迫る。
「勘だ!」
「そんなのありかよ!」
「これから死ぬ奴に理由を言っても仕方がない。……『ゴールド・ムーン』!」
怪人チョーウンの必殺技が炸裂した。
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