第20話 新結社結成だ!
さらに。
「おっ、盛り上がってるねー!」
怪人チョーウンのさらに後ろから、新しい人物が顔を出した。
(あれは……トクゲン総帥!?)
正親町はもうわけがわからなくなった。『ナンジョ』は崩壊したのではないのだろうか。だが、『ナンジョ』のトップと幹部たちがここに集まっているということは、やはり『ナンジョ』として何かを始めるということなのだろう。
「それじゃ、ちょっと一言いいかい?」
トクゲン総帥はカウンターの中に入っていった。店主が「あっ、お客様、そこは立入禁止で……」とかなんとか言っているが、トクゲン総帥は気にする様子はなかった。
「さて、元『ナンジョ』の戦闘員のみんな。この前は『ナンジョ』を崩壊させて申し訳なかった。俺と怪人チョーウンも、それぞれ『ギール』と『ギョール』に不本意ながら所属することになってしまった。だが、俺と怪人チョーウンは互いに協力して、敵中から脱出し、さらには『ギール』と『ギョール』を仲間割れさせることに成功した」
そのトクゲン総帥の演説の大部分は、まだ世には出ていない事実だった。おそらく、昨日の戦闘で怪人チョーウンが突然消えたとき、トクゲン総帥が何か仕掛けをしていたのだろう……くらいに正親町は考えた。
「今ごろ『ギール』と『ギョール』は血みどろの抗争を繰り広げているはずだ。俺たちはその間に力を立て直し、勝ったとしても疲れているであろう側をやっつければよいのだ!」
戦闘員たちは目を輝かせてトクゲン総帥の話を聞いていた。
「トクゲン総帥すげぇ!」
「かっけぇ!」
「頭いい!」
戦闘員たちは口々に称賛の言葉を飛ばした。
(もしかして、これって今がチャンスなのか?)
正親町はこっそりとスマホを取り出すと、ランチャーの仲間たちに「居酒屋で『ナンジョ』に捕まっている。助けに来て」とメッセージを送った。ところで、さっきまで正親町の横にいたはずの怪人トクヨクは、ちゃっかりトクゲン総帥の横に収まっていた。自分が幹部であることをアピールしたいのだろう。
「で、俺がやったのはそれだけじゃない。人材の発掘もしているのだ」
トクゲン総帥の演説は続いていた。
「まず、こっちはワケン博士だ。まあ、彼は『ナンジョ』時代からいたけどな。情報収集や怪人の育成に活躍してくれるはずだ」
「ども、ワケン博士です。『ナンジョ』が崩壊してからは、一般人にまぎれて生活していました。みんな改めてよろしく」
何やらプレイボーイな感じがする男が挨拶をした。といっても、彼は『ナンジョ』の頭脳ともいわれていた、エース級の博士だ。正親町ももちろん彼の存在を知っていた。
(やばい……ワケン博士だ……やばい……!)
正親町は恐怖を感じていた。なぜならワケン博士は見た目通りのプレイボーイだからである。彼女が12人いるらしいとか、気に入らない彼女を人体実験にかけるらしいとか、もっともらしい噂も出回っている。正親町はワケン博士がこちらに来ないことを祈ったが、幸運にもワケン博士はトクゲン総帥の隣の怪人トクヨクの隣に移動しただけだった。
「それから、新しい怪人の怪人リュージだ」
また新しい仲間が出てきた。今度はいかにも怪人らしい筋肉質な男だ。
「こんにちは、怪人リュージです。最近はフリーだったのですが、ちょうどいいので籍を置くことにしました。これからよろしくお願いします」
怪人リュージはペコリと頭を下げた。
(珍しく怪人の名前が日本的だな……)
正親町は怪人リュージを観察した。怪人リュージはまだ若く、正親町は彼は10代かもしれないと思った。
「そういうわけで、我々の戦力は強化されたというわけだ!」
トクゲン総帥は満足そうにしている。
「他にもいろいろな怪人や博士にオファーを送っているから、続々と仲間が増える予定だ。この前は『ギール』にやられてしまったが、次こそは奴らを倒さないといけない。そこで、俺に一つ考えがある。おい、怪人チョーウン、あれを持ってこい」
怪人チョーウンは自分のカバンの中をゴソゴソやり、巻物のようなものを取り出した。
「つまりだ、我々は前回結社を滅亡させてしまったことを反省し、次こそは世界を征服できるように努力しなければならない。そこで、我々の心が全く新しくなったことを示すために、我々は結社名を変更することにする。新しい結社名は……よし、怪人チョーウン、オープン!」
トクゲン総帥の掛け声に合わせて、怪人チョーウンが巻物を広げた。そこには、それなりに達筆な字で『ヤシン』と書いてあった。
「『ヤシン』だ。これは常に世界を征服しようという本来の野心を忘れるなという意味がこもっている。……まあ、ここだけの話、他の結社に我々の復活を気づかれにくくするという目的もあるのだがな。いや、そんなことはもういいだろう。とにかく、今日は我々の再出発を記念する祝賀会だ。お前たち、思う存分楽しめ!」
「うおおおお!」
「トクゲン総帥ばんざい!」
「新結社ヤシンばんざい!」
「うっひょー! 酒だ酒だご馳走だ!」
戦闘員たちは大喜びでてんでばらばらに好き勝手なことを絶叫し、まさに大宴会は改めて盛大に始まろうとしていた。
だが、そのとき。
「ちょーっと待ったぁ!」
バーン! と爆音がして、何者かが店に飛び込んできた。
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