第21話 ランチャー登場だ!
「うわっ! な、何だ!?」
突然の侵入者に、新生『ヤシン』の構成員たちは仰天した。
店の中央に下り立ったのは、怪人リュージと同年代のような外見の青年だった。彼は周囲にただならぬ殺気を放ち、そして彼の服の色は緑で統一されていた。
「グリーンさん!」
正親町は思わず歓声を上げた。彼女はまさかこんなに早く助けがやってくるとは思っていなかった。それに、ランチャーグリーンの登場の仕方は、彼女の心を掴むには十分だった。正親町の中でグリーンこと西海の株は爆上がりしていた。
「お前ら、『ナンジョ』の奴らだな! よくもここまで立て直したな。だが、俺たち戦隊は、お前たちの世界征服の企みを、みすみす見過ごすことはできない。それに、うちのメンバーである正親町を誘拐するとは、言語道断、卑怯な行いである! お前たち、ここから一人でも生きて帰れると思うな!」
グリーンはまっすぐにトクゲン総帥をめがけて突っ込んだ。
「ひゃっ! お、おい、お前ら、早くこの曲者を討ち取らんか! 敵は一人だ、慌てず包み囲んで攻め立てろ!」
トクゲン総帥はグリーンの猛攻を必死にかわしながら、味方に指示を飛ばした。即座に怪人チョーウンが総帥とグリーンの間に入った。グリーンがひとまず総帥から距離を取ると、すぐさま戦闘員たちがグリーンを包囲した。だが、窮地に立っているはずのグリーンは落ち着いていた。
「よし、レッド、ピンク、やれ!」
そのグリーンの声に合わせて、今度は裏口を突き破って新しい戦隊が現れた。ランチャーレッドこと斎藤と、ピンクこと土佐口であった。二人は前のグリーンに気を取られていて手薄になっているトクゲン総帥の背後に襲いかかった。
「総帥!」
「危ない!」
だが、やはりそう簡単に『ヤシン』の守りを崩すことはできなかった。怪人トクヨクと怪人リュージが、瞬間的に間に入ったのだった。
「ええい、後ろからとは小賢しい! だが、どちらにしろ敵は少数だ。数で押し切れ!」
トクゲン総帥も慌てた様子はなかった。だが、そのときグリーンがまた叫んだ。
「よし、あれをやれ!」
ランチャーの三人が、一斉に何かを投げた。それはトクゲン総帥のあたりと、正面の入口と裏口でそれぞれ炸裂し、店はあっという間に白く染まった。
「わっ、何だ?」
「総帥が危ない!」
戦闘員たちは揃って混乱した。
「落ち着け! これはおそらくただの発煙筒だ。俺のことは心配するな。つまりこれは、今のうちに脱出しようという戦隊どもの魂胆だ。お前ら、早く正面と裏口を塞げ!」
トクゲン総帥がそう言うと、戦闘員たちは慌てて二つの出入口に向かった。そのとき、ワケン博士が何か叫んだ。
「総帥、それは違いますぞ! これはーーぐはっ!」
ワケン博士は悲鳴を上げた。トクゲン総帥たちはその声に驚いて振り向いた。すると、戦隊たちが窓から悠々と出て行くところだった。ワケン博士はその窓の前に立ち塞がろうとしていたようだったが、いかんせん彼はもともと戦闘要員ではない、一瞬でボコボコにやられていた。
「しまった! 窓はグリーンが割っていたのだった! これでは戦隊どもに逃げられてしまう! どうする?」
トクゲン総帥が横を見ると、そこに怪人トクヨクがいた。
「追いかけてやっつけましょう!」
怪人トクヨクは腕まくりをして言った。
「そうだな、そうしよう! お前ら、あの戦隊どもを追え!」
「「「おおっ!」」」
『ヤシン』の一味は一斉に店の外に飛び出した。
⭐︎
「それそれ、走れ走れ、逃げろ逃げろ!」
戦隊ランチャーたちは全力疾走していた。後ろからは『ヤシン』たちが全員で迫ってきていた。
「グリーンさん、助けていただいてありがとうございます!」
正親町が走りながら頭を下げると、グリーンこと西海は首を横に振った。走りながら首を振ったので、彼は少しバランスを崩した。
「いや、俺が助けたんじゃない。『ランチャー』のみんなで助けたんだーーそれに、今はそんな場合じゃない。うかうかしてると『ヤシン』どもに捕まってしまう。むっ、あれは!」
西海の視線の先には交差点があった。
「ちょうどいい。あの交差点で二手に分かれて、追っ手を巻くぞ!」
交差点に入ると、ランチャーたちは二手に分かれた。右に曲がったのが西海と正親町、左に曲がったのがレッド斎藤とピンク土佐口であった。
「本当にこんなので巻けるんですか? こちらの人数が少なくなって、逆に不利になるだけじゃ……」
「まあ見てろって」
西海はにやりと笑って後ろを指差した。正親町が振り向くと、トクゲン総帥と怪人チョーウン、怪人トクヨク、怪人リュージが交差点で立ち止まって呆然としていた。
「お、おいお前たち、これはどっちに行けばいいんだ?」
「うーん、迷いますね総帥。ここはひとまずコイントスでもしましょう」
西海はついに爆笑しながら曲がり角を曲がった。
「こいつらはこんなものなんだよ。だからすぐ崩壊するんだ、わはははは!」
西海たちは完全に『ヤシン』たちの視界から逃れつつあった。西海は全速力で次の曲がり角を曲がろうとした。
「うわーっ!」
西海は何かにぶつかって吹き飛ばされた。
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