第24話 また追放だ!
「説明してもらうわよ、戦隊ランチャー。なぜちょうどよく『ナンジョ』ーーあ、違った、『ヤシン』になったんだっけーーの奴らに追われていたのかをね。おかげで危うく全滅するところだったわ」
浅野はその長身を生かして、威圧するようにこちらを見下ろしている。
「実は正親町があいつらにさらわれてしまって、助けを求めてきたんだ。そこで助けに行くと、あいつらが祝賀会をしていることをたまたま立ち聞きできたのさ。まあとにかく、あいつらはすっかり勢力を立て直して、心機一転するために結社の名前を変えたらしいよ。それで、聞ける情報を聞いたところで正親町を奪還して逃げ出すつもりだったんだ。あとは君の知っている通りだ」
俺はこれまでの俺たちの行動をすべて説明したつもりだったが、浅野は疑わしげに俺の目を凝視した。
「ふーん? 『ナンジョ』ーーじゃなかった、『ヤシン』と内通しているのではなくて?」
「そんなわけがないだろう! あんな毎日宴会しているだけの底辺悪の秘密結社と一緒にしないでくれ!」
「まるで『ギール』なら内通していると言っているようだけれど……」
「それもありえない! どこまで疑えば気が済むんだ!」
「……やれやれ。後衛の割に面倒事をすぐに持ち込んでくるところは変わっていないようね、西海」
浅野は俺に向けていた鋭い眼光をそらし、俺はやっと息をつくことができた。
「さて、浅野、俺からも聞きたいことがあるんだが……」
戦闘が終わり、いつもの日常を取り戻しつつある住宅街にぼんやり目をやっていた浅野は、のろのろとこちらを見た。
「何よ」
「いや、状況から判断すると、全国戦隊連合は『ギョール』の本拠地を襲おうとしていたんだろう? なぜこれまで入手できたことがなかった悪の秘密結社の本拠地の情報が手に入ったのかは不思議だが、その重要な情報が『ランチャー』に入ってきていなかったのはおかしいぞ。どうしてこちらに情報を公開しないんだ?」
これは昨日の夜に斎藤と正親町から聞いた話だが、弱小とはいえ『ランチャー』は全国戦隊連合に登録されており、本来であればそのような連絡は来ていてしかるべきなのだ。
「気づいていないだけじゃないの? だって、『ランチャー』はメンバーが誘拐されて混乱していたんでしょう? よく自分のスマホを見てみなさいな」
浅野は冷静に俺のスマホを指差すが、何の通知も来ていない。
「言っておくが、俺はつい15分ほど前、悪の秘密結社の飲み会に殴り込む直前にスマホを確認したが、何の連絡も来ていなかったぞ。時間の関係を考えれば、そのころにはそちらは本部に集合している時間帯だ。いったいどうなっているんだ?」
「いや、私は知らないよ? こういうのは本部が決めることでしょ? 西海って、もしかして本部の怒りを買ったんじゃ……」
「ええっ、まさかそんな……」
確かに最近は戦隊を追放されて新しい戦隊に入ったり、怪人どうしの戦いを観戦したり、およそ特殊な戦隊活動をやっている俺だが、別に本部の方針に反することをした記憶はない。だが、俺が首をひねっていたとき、すぐ横で車が止まる音がして、その中から一人の女性が現れた。
「「村崎社長!」」
俺と浅野は揃って叫んだ。村崎葵ーー戦隊ポンジャーの社長にして、全国戦隊連合の会長でもある、戦隊業界のトップである。俺と浅野は即座に最敬礼した。
「お疲れ様。なんとかうまくいったみたいね」
村崎社長は俺たちを一言ねぎらったが、大戦果を上げたわりに村崎社長の表情は硬い。
「浅野、村上はどこかしら?」
浅野と俺が周囲を見回すと、向こうにこちらと反対方向に走っていく村上の姿が見えた。
「むっ、逃げるとは、小癪な!」
村崎社長が腕をひと振りすると、どこからともなくロープが出現して飛んでゆき、村上をぐるぐる巻きに縛ってしまった。
「これはいったい……? 村上は何をしたというの?」
浅野は動揺しているが、俺はピンと来た。
「浅野、その村崎社長は偽物だ! 本物の村崎社長なら、村上を縛るはずがない! その村崎社長は怪人が化けているんだ! 浅野、戦闘態勢を取れ!」
だが、村崎社長は動じない。
「まあまあ、落ち着きなさい。私は本物ですし、そもそも私が本物であれば、あなたたちは二人がかりでも私に勝つことはできないでしょう。やめておいて、私の話を聞きなさい」
浅野はしぶしぶ上げかけた聖剣ムラマサを下ろしたが、まだ警戒しているようだ。それにもかかわらず、村崎社長は浅野から体を背けて、縛られた村上に向き直り、そして驚くべきことを言った。
「村上! お前は罪を犯した! お前はもう戦隊業界に置いておくことはできない! よって、お前を戦隊業界から追放する!」
「……!?」
俺と浅野は揃って仰天した。
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