第15話 『ギョール』本部を攻撃せよ!
「というわけで、怪人チョーウンはもう戻ってこないのです」
怪人ケンブンはそう話を終えた。
「うーむ、怪人チョーウンめ、そんなことを企んでいたのか!」
「あいつはいい奴だと思っていたのに……見損なった!」
トクモー総帥と怪人エンブンは、次々に怪人チョーウンへの恨み言を口にした。
「あのう、それで、こちらを読んでいただきたく……」
怪人ケンブンは、最悪な雰囲気の二人の前に、二枚の紙をスライドさせた。
「ん? なんだこれは?」
トクモー総帥がそれを取り上げた。
「あっ! これは怪人チョーウンからの手紙だ!」
トクモー総帥はさっそく声に出して読み始めた。
「『拝啓 『ギール』の皆様
このたびは私の勝手な行動を深くお詫びいたします。私は悪の秘密結社の最大手たる『ギール』で働けることを誇りに思っていますし、今後世界を征服する可能性が最も高い結社は『ギール』であると思います。しかし、私はどうしても、以前私が忠誠を誓った相手であり、私を普通の人間から怪人にしてくれたトクゲン殿のことを忘れることができません。運良くトクゲン殿とはまだ連絡が保てていたこともあり、私は機械を見計らってトクゲン殿と合流することを決意しました。
私は自分と怪人エンブンを『戦隊ランチャーと決闘する』という名目で公園に向かわせ、同時にトクゲン殿にその情報を流します。トクゲン殿はうまく怪人リョウガンと怪人シュウブンを公園に連れてきてくれたので、私は彼らを倒します。そして頃合いを見計らって、私はトクゲン殿と合流するつもりです。『ギール』の皆さんがこの手紙を読むときには、すでにそのように事が運んでいることを祈ります。
トクゲン殿も私も、『ギール』に敵意は持っていません。ですが、私たちのやり方は、皆さんとは違うのです。私たちは自分たちの信条に基づいて世界を征服したいのです。とはいえ、かつての『ナンジョ』のメンバーもどこにいるかわかりませんし、しばらくは表立った活動はしないつもりです。
繰り返しますが、私はトクモー総帥を始め、『ギール』の皆さんに敵意はありません。特に怪人エンブンは、非常に有能な怪人であり、私の心の友です。トクゲン殿は怪人エンブンもついでに始末してしまえと言っていますが、私は怪人エンブンが無事に本部に帰れるように全力を尽くすつもりです。
それから、トクゲン殿が『ギョール』の本部の情報を送ってくれるそうです。もし届いていれば、そちらもぜひご覧ください。』」
手紙を読み終えると、トクモー総帥の目に涙が浮かんできた。
「くっ、怪人チョーウン、意外といい奴じゃないか! たとえ敵中にありともトクゲンの恩を忘れないとは、なかなか粋である!」
だが、彼の声は、怪人エンブンの大音量の泣き声にかき消されそうになっていた。
「うああああっ! 怪人チョーウン……板挟みで苦しみながらも、俺の命を救ってくれたのか! なんていい奴なんだああああっ!」
「おい、ちょっと落ち着け。二枚目の紙を今から見るところなんだから」
怪人エンブンをなだめながら、トクモー総帥は次の紙を取り上げた。
「『これは『ギョール』の本部の現住所と地図です。ご自由にお使いください。』……おっ、これは『ギョール』の本部についての詳細な情報だぞ! 悪の秘密結社の本部の場所は最高機密だから、これで『ギョール』は終わったも同然だ!」
トクモー総帥は悪の組織の首領にありがちな勝ち誇った笑みを浮かべると、目を閉じて何やら考え始めた。策略を練っているようだ。もしかするとジャクブン博士を超えるのではないかとも噂されている彼の非凡な頭脳は、すぐにその答えを導き出した。
「よし、この情報を、戦隊たちにこっそり流すのだ」
怪人ケンブンは耳を疑った。
「えっ! 正気ですか、総帥! 何もわざわざ戦隊ごときに手柄を譲らなくとも、『ギール』が自分で『ギョール』を攻撃すればいいではありませんか!」
だが、トクモー総帥は不満そうに怪人ケンブンを見下ろした。
「やはりお前はまだまだだな。怪人エンブン、私がどのように考えているか言ってみろ」
怪人エンブンは突然話を振られて、まだ鼻をすすりながらもなんとか答えた。
「はい、『ギョール』の本部の位置情報を戦隊に流すのは、『ギョール』と戦隊を互いに戦わせ、両方の力を削ぐためです。私たちががその後で出て行けば、『ギール』は苦労せずにどちらもを倒すことができます。『シュージョ』と『ナンジョ』を潰したのと同じ理屈です。……ぐすっ」
トクモー総帥はパチンと指を鳴らした。
「おおむねその通りだ。ちなみに『ギョール』が戦隊だけの力で倒されてしまった場合、『ギョール』は戦隊に負けたという社会的な汚点を被ることになるから、そこの心配もないのだ。ということで、今から博士陣を呼んで、詳しい段取りを詰める。お前たちはそろそろ退出しろ。だが、喜べ。世界征服の日は近いぞ!」
「「ははっ!」」
二人の怪人は揃って拝礼し、回れ右して退出した。
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