第11話 次につなげるのだ!

「しまった……逃げられたか……」


 浅野は肩を落としてため息をついた。だが、すぐに元の真剣な表情に戻り、こちらに振り返った。


「また『ランチャー』に先を越されたな。なんでそんなに現場に着くのが速いんだ」


 浅野には悪いが、俺たちは『怪人出現』の報を聞いてから現場に向かったわけではない。


「いや、俺たちは最初からいたんだ。実は、こんなものを怪人エンブンと怪人チョーウンからもらっていてな」


 俺は今日俺が下駄箱で発見した『挑戦状』を浅野に見せた。


「このように、怪人たちは俺たちと勝負をしたがっていたんだ。それで俺たち『ランチャー』はこの公園で怪人エンブン、怪人チョーウンと待ち合わせて、勝負を始めたんだ」


 浅野は少し考えるような顔つきになった。


「なるほどね……確かに怪人チョーウンは、よくこちらに決闘を申し込んでくることで有名な怪人よね。それで、そのあとどうなったの? 私たちが到着するまでの出来事を、すべて説明しなさい」


 全部情報を開示してしまうのは気が引けるが、『ポンジャー』も悪の秘密結社の撲滅を目指す戦隊であることは同じだ。ここは包み隠さず言うしかないだろう。


「そして俺たちは怪人たちと戦ったのだが、怪人たちは強く、なかなか倒すことができない」

「フッ、『危うく倒されそうになった』の間違いでしょうが」


 俺の必死の自己解釈は、浅野に一瞬で見破られた。


「いや待て浅野、ここからが本題だ。そのとき公園に『ギョール』の怪人シュウブンと怪人リョウガンが殴り込んできて、『ギール』の怪人チョーウン、怪人エンブンと戦い始めた。それで俺たちは引いて様子をうかがった」

「あーはいはい、『危うく全滅を免れた』ね」

「うるさい」


 事実ではあるが、面倒だし苛つくから、話の腰を折らないでくれ。


「すると、怪人チョーウンは魔剣ミカヅキですぐに怪人リョウガンを倒してしまった。怪人シュウブンはそれを見て持久戦を始めた。『ギール』の二人は怪人シュウブンを追い詰めたが、ここで怪人シュウブンが必殺技『トラッププラント』を使って、怪人エンブンを捕獲した」

「聞いたことのない技ね」

「新技だったそうだ。だが怪人チョーウンがうまく援護して、怪人シュウブンを倒してしまった。怪人チョーウンは『トラッププラント』を見切る方法を編み出したようだけど、そのやり方については説明してくれなかった」

「まあ怪人シュウブンが死んだならもう関係ないわね」

「確かにそうだ。そんなわけでこのペア戦は『ギール』ペアの勝利に終わったのだけど、怪人エンブンは骨折していたから、先に本部に帰った。怪人チョーウンは倒した怪人を回収しようとしたけれど、俺たちがそれを持っているから困っていた。そこに浅野たちが現れたというわけだ」

「ふーん……」


 浅野はちょっと考えていたが、「そうだ」と言って手を叩いた。


「その倒された怪人たちはどこに置いてあるの?」


 死体を見たいとは、浅野も物好きなものだ。


「そっちに」


 二人の怪人の残骸は、物陰にまとめて置いてある。


「あー、これはしっかり真っ二つにされてるわね。さすが怪人チョーウンだわ。ところで、これは私たちが持って帰って燃やしておくわよ。死体が残っていれば、取り返しに来られると面倒だし」


 まったくその通りだ。ここは『ポンジャー』に任せるべきだろう。


「ぜひよろしく」


 俺が頭を下げると、浅野は俺の頭をこつんと叩いた。


「一つ忠告をしておくわ。こんな挑戦状が送られてくることからして、『ランチャー』は狙われているようよ。うかうかしているとすぐにやられてしまうわ。せめて私たちと互角に戦えるくらいには強くなりなさい」

「はあ……」

「じゃあ、私はこれで」


 浅野は謎めいた助言を残して、平田と村上を引き連れ、怪人たちの死体を回収して行ってしまった。


「いやー、さすが『ポンジャー』の人たちは強いなあ! あの怪人チョーウンと互角に戦うんだから!」


 斎藤がこちらに近づいてきた。


「そうですね……いてて。私も骨が折れているかもしれません。身体中が痛いです。早く帰りましょう」


 正親町は今日は一番敵の攻撃を喰らっていた気がする。服はぼろぼろで、あちこちから血がにじんでいる。


「よし、じゃあ帰るか」


 俺たちは公園を出て歩き始めた。


「道一、今回の戦い、どうだった?」


 横に並んだ土佐口がそう聞いてきた。


「なんというか、悔しいよ。自分たちだけでは怪人たちに歯が立たなかったし、怪人チョーウンや浅野の強さを見ると、自分が本当にここにいていいのだろうかという気になるよ」


 土佐口はうなずいた。


「道一の言う通りよ。私も同じ気持ちになったわ。私たちはまだまだ力をつけないといけないわね」

「そうだな。道のりは長い。でも、ここで俺たちは頑張るべきだと思う」

「うん、そうだよね。私たちがみんなで協力すれば、絶対に怪人や他の戦隊を上回るような力を手に入れられるはずよ」

「そうかな」

「そうよ」


 土佐口はしっかりと前を見て、ぐんぐん歩を進めていった。

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