第22話 ポンレンの共闘だ!
「いてて……」
尻もちをついた西海が顔を上げると、そこにはよく見知った顔があった。
「あっ、お前は浅野!」
西海とぶつかったのは浅野であった。後ろには平田と村上もいる。
「どうしてここに?」
西海はとりあえずそう問いかけた。
「実は……あっ、あれは!」
浅野はそれに答えようとしたが、何かに気づいて驚いた。というのも西海の後方の交差点に、元『ナンジョ』のメンバーたちが見えたからである。
「どうしてあそこに『ナンジョ』の奴らがいるのよ!」
西海は苦笑するしかなかった。
「実は、俺たちは今、あいつらに追われていて……」
すると浅野はにやりと不敵に笑った。
「ちょうどいいわ。あとはだいたい任せなさい!」
そう言ったかと思うと、浅野は平田と村上を連れて物陰に隠れてしまった。おそらくここで『ナンジョ』ーー浅野はまだ知らないが、新生『ヤシン』をーー待ち伏せしようという腹なのだろう。
さて、『ヤシン』の幹部たちはやっとコイントスを終え、こちらに向かってきた。
「さあ、西海、正親町、覚悟しろ!」
「うわーっ、逃げろ!」
西海たちは少しわざとらしく逃げるふりをしたが、『ヤシン』たちは何も気づかずに追いかけてきた。
「待て、トクゲン総帥!」
もちろん、頃合いを見計らって浅野たちが飛び出してくるわけである。
「げっ、お前らは、戦隊ポンジャー! だが、今日の俺たちはひと味違うぞ。なぜなら俺たちは生まれ変わったからだ! よく聞け、俺たちはもう『ナンジョ』ではない。俺たちはーー」
「よし、平田、村上、行け!」
「「うおーっ!」」
浅野はトクゲン総帥の口上を最後まで聞かなかった。平田と村上がトクゲン総帥に襲いかかる。
「さ、させるか!」
すぐに怪人たちが間に入る。
そこからは乱戦になった。浅野、西海、正親町も加わって戦隊たちは必死に戦うが、なかなかトクゲン総帥に近づくことができない。
「西海、あの若い怪人は誰? 見たことがない奴だけど……」
怪人チョーウンと戦いながら、浅野が問いかける。
「あれは怪人リュージだ。新メンバーだそうだよ」
西海がさっそくさっき得た知識を披露する。
「いつそれを知ったのよ」
「またあとで話す」
ちなみに、西海は怪人と戦っているわけではない。あくまで彼は後衛なのだ。西海は今のところは雑魚戦闘員を倒すことに集中している。
(でも、このままじゃ、人数の少ないこちらはジリ貧だよな……そろそろ『ポーズビーム』を使うべきか……)
西海がそう考えたとき、向こうから『うわーっ、助けてくれ!』という声が聞こえてきた。どうやら一人の男が拘束されている。よく見ると、拘束されているのはワケン博士で、拘束しているのは土佐口と斎藤だ。
「あっ、ワケン博士! いったい何をやってるんだ!」
トクゲン総帥は腹を立てて振り向いた。
「ふふふ、ワケン博士はなぜかこのあたりを無防備に歩いていたので、私たちが捕まえたのだ! さあ、ワケン博士の命が惜しかったら、なんでも言うことを聞け!」
斎藤は有頂天で胸を張っている。
「し、しまった! おい、戦闘員たち、どうしてワケン博士を護衛していなかったんだ!」
トクゲン総帥は慌てて戦闘員たちを叱るが、戦闘員たちは『いや……』とか『さあ……』とか言うばかりだ。
「さあ、どうするんだ!」
「くっ……しかたがない。ではいったい、ワケン博士のために、我々は何をすればいいのだ?」
トクゲン総帥は折れた。やはり博士を見捨てるわけにはいかないらしい。
「ええと……」
だが、なぜか斎藤はそこで黙ってしまった。そこまで考えが及んでいなかったようだ。しかし、浅野がすぐにフォローに入った。
「では、戦闘員の半分に武器を捨てさせて、こちらに引き渡しなさい。そうすればワケン博士を助けるわ」
戦闘員の半分となれば、だいたい30人くらいである。
「よし、わかった。おい、怪人チョーウン、怪人トクヨク、怪人リュージ、半分の戦闘員たちに武器を捨てさせろ」
「了解です総帥」
半分の戦闘員たちがーー明らかに戦闘力が低そうな方の半分がーー武器を捨ててこちらに降参した。それを見て、斎藤たちもワケン博士を解放した。
「よし、では今日のところはこれで見逃してやる。どこへでも行くがいい!」
「くっ、覚えてろ!」
『ヤシン』たちはすたこらと逃げていった。戦闘員が半分になれば不利な戦闘を強いられてしまうので、当然である。
「ふう、危ないところだった……でも、西海、『ナンジョ』は滅亡したんじゃなかったの?」
「いや、復活したんだ。そして『ヤシン』と名前を改めたんだ。怪人リュージをはじめ、新戦力も入ったらしいぞ」
「ふうん。……ところで、私は何かを忘れているような気がするんだけど……」
浅野は西海と情報交換をするのだが、もちろん『あれ』を忘れている。
「あっ! 『ギョール』の本拠地!」
「『ギョール』の本拠地!?」
もちろん西海はそれを知らない。
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