6 オロチ

 オロチだって!?


「そう。わたしのははは、ハリエット・バスカヴィル。ちちまえはカズオ・オロチ。わたしはちちははりょうほうからみょうをもらったの」


 ローザのフルネームは、ローザ・・バスカヴィルだ。


「わたしのりょうしんぐんやとわれていたけんきゅうしゃだった。あのヘビの、マルスへいかいはつしゃだった。とくにちちかいはつせきにんしゃで……だからちちみょうをあのヘビにあたえた」

 いかり、かなしみ、まどい。

 そのぜん宿やどしたかのようなひょうじょうのローザが、シグマのほうをおしえてくれた。

「たったいってきせいあつのうにするマルスへい、それがオロチ! わたしのりょうしんはあいつにころされた。どうじっけんちゅうぼうそうした、あいつに!」


 それだけじゃない、とローザはおもおもしい調ちょうこえかさねた。


あにのハヤトは、オロチとのせんとうちゅうにわたしをかばってんだ。オロチのふういんにはせいこうしたけど、そのときのきずげんいんんでしまった! だからわたしは、あいつを! マルスへいオロチをたおす!」

 ローザがちからづよせんげんしたちょく――ジュズまるがダッシュして、ジャンプした!

 オロチのかおさんぼんかたなりつけるつもりだ! 

 でも、きょだいなヘビがたのマルスへいは、そのずうたいにはわないで、ジュズまるこうげきをすべてかわしてみせた。


ジュズ丸そやつ五〇〇ごひゃくねんまえにいたな……。あのときふういんされたくつじょくぜったいわすれんぞ!」

 ひとかんじょうてきすぎるとったくせに、このヘビのほうがよっぽどかんじょうてきじゃないか。

 シグマがつい、そんないやいそうになったとき、オロチのくちがガバッとひらいた。


「ジュズまる……あぶない! マルスほうが――る!!」

 ローザのこえどうに、オロチのくちおくひかった! 


 マルスのあかかがやきをびたエネルギーだんが――まぶしくひかちょっけいメートルはありそうなほうだんが――はっしゃされた! これがマルスほう!?


 マルスほうおおきいうえに、とてつもないスピードでせまってくる。

 くうちゅうかんでいるジュズまるは、ぎりぎりのタイミングでそのマルスほうかいした。

 はずれたマルスほうどうくつかべげきとつ、ぶあついかべいちをざっくりとえぐりった。

 なんてりょくだ……!


「みんなをつけて! あいつのどうはマルスほうだけじゃない!」

 ローザがちゅうしてすぐだった。オロチのぜんしんをおおうウロコがなんまいはずれる。

 そして、シグマたちがけてんできた。ナイフののようなウロコが!


 ヘビのウロコもだったのか!


 シグマもローザもミサキもジュズまるも、すばやいどうでそのウロコをかわした。

「ひゃあぁ!」とめいをあげているジャンのうごきだけが

 まずい……とシグマはあせった。あんなうごきじゃ、そのうちジャンにさる!

 だらけになったジャンの姿すがたそうぞうしただけで、シグマのしんぞうまりそうになった。

「マルス・シールド!」と、ローザがとなえたのは、そのときだ。

 つえからはなたれたマルスのひかりが、かくたてかたちになってジャンをぼうぎょする。


「ほう……よくぞふせいだ。しかし、そのメガネがいちばんのザコらしいな」

 オロチがジャンをバカにする。


ていはしないけどさ……!」

 ふるえるでマルス・ガンをかまえたジャンは、じゅうそくめんについているちいさなまわした。

「だからって、バカにするなよ! マルス・ガン、パワーさいだいだ!!」

 ジャンがけんじゅうのトリガーをく!

 すると、ドゥゥーン!! というみみをつんざくようなおとがとどろいた。

 それまでのマルスだんとはかくにならないほどおおきなマルスだんはっしゃされたおとが!

 オロチはハッとひらいて、きょたいよこにジャンプさせた。

 そうすることでちょくげきはまぬがれたが、パワーさいだいはっしゃされたマルスだんがオロチのからだをかすめていく。ウロコのいちがジュッとじょうはつしてんだ!


「おっ……おのれ!」

「ジュズまるしゅうしたときにマルス・ガンもかいぞうしておいたんだ」

 へへへ、とジャンはれくさそうにわらってウインクした。

「さっすが! ――おい、ヘビ! ジャンはな、てんさいなんだ。ザコなもんか!」

 シグマはそうがいこうげきけてギリギリとぎしりしているオロチにはしりよると、ここぞとばかりりかかった。

 オロチは、ぐうぅぅーんッとしたきだしてくる。いったいなんメートルびるんだ? とツッコミをれたくなるほどばしてきたしたこうげきを、シグマはつるぎめた。

 そのすきに、ミサキがオロチのはいへとまわりこんだ。そろりとしのびよったミサキが、オロチにサーベルをてるや、すばやくムチもきつける。


「おのれぇぇ! にんげんどもが、こしゃくな!」

 うなったオロチがバランスをくずした。

 そのいきおいをようして、ミサキがオロチにきつけていたムチをきよせる。ぐいぐいぐいっときよせて、まんかいりききょだいなヘビをてんとうさせてしまった。

 ころんだオロチのはらを、ミサキがふたたびサーベルでしていく。


ちなどと……はじれ! きょうものが!」

「ひ、きょ、う?」

 おかしくてたまらない――ミサキはそういたげなわるみをかべた。

じんこうのうさまにはおわらいのセンスもおありのようだけど、あんまりわらわせないでよ。あくとうとうぞくあいにそんなことをうのはアホなんだよ。とうぞくきょうでなにがわるい?」

 これまでさんざんくだしてきたにんげんに、オロチはたっぷりにされている。

 かいけのくろいヘビは、いかりにちたこえなにごとぜっきょうした!

 やたらめったらぜんしんのウロコもはなってくる。

 そのときにはもう、シグマもミサキもすばやくこう退たいしており、いっぱつたらなかった。


「なめられたものだ! いやしいにんげんごときが、ちょこまかと!」

 あかをらんらんとひからせながら、むくりときあがったオロチは、あたまをわずかにげ、ながくびぜんぽうきだした。オロチがぜんけい姿せいになる。そしてとっしんしてきた!


 オロチがそうしてくるだろう、とそくしていたのがローザだ。

かいほろぼさんとするじゃあくなるマルスよ。せめて、そのちからをわたしにもせ!」

 ローザのくらいピンクいろかみがかすかにれた。かみぜんたいがふわりとなみち、すっときだしたつえさきから、マルスのあかひかりがあふれてくる。


「これでもらえ! こうだん!!」


 こうだん――それはオロチのマルスほうよりも、ひとまわりはおおきなあかひかりほうだんだった!

 こうだんはスピードもすさまじい。オロチはこちらにかってとっしんしていたせいで、ものすごいスピードでんできたこうだんをよけることができなかった。

 しょうめんからこうだんらったオロチは、そのままばされていく。

 いわかべにめりこんで、ズドンッッッ!! という、すさまじいおとひびいた。

 ぜんしんのウロコのはんぶんじょうがプツプツプツ……とけこげたおとててしょうめつしていくと、ジュズまるおなじ、にぶいぎんいろそうこうがむきしになった。

 めりこんだかべからズルズルズルッとすべりちていくオロチ。

 そうしてめんすと、オロチはきゅううごきをめた。


「もしかして……ったのか!?」

 オロチのからあかひかりがプツンとえた。それをてシグマがこぶしきあげると、ジャンとミサキもしょうかくにんしたかのようながおになる。


ざんねん……まだててない」

 ローザだけだ。ちっともわらっていないのは。

 いや、ジュズまるもだった。かたなさんぼんをかまえ、けいかいしつづけている。


 すうびょう――オロチのまぶたがパッとひらいた! ふたつのひとみあかひかりがふたたび宿やどると、ヘビのからだしゅうのうされていたほそながい〝なにか〟がグウィィンときあがった。

 それはもういっぽんくびであり、あたまだった。

 もともとあったくびよこにずれると、あらたにてきたくびおなたかさのならんだ。


「これが、オロチのほん! くびの――二岐ふたまたのオロチ」


 つえつローザのがわなわなとふるえている。


きょうりょくすぎて、オロチのぜんしんにもつよがかかるから、たたかいがわったあとはだいしゅうひつようになる。だけどそのわりに、おそろしいまでにてきあっとうするさいしゅうけいたい


 それがそうとうのヘビ、フタマタのオロチなのか……!


「ガキどもめ、もうげんなどせんぞ! れきぜんたるちからうらみながらねぇぇ!!」

 まるきりおなじふたつのかおおなじことをさけび、そのりょうほうからマルスほうはなたれた!

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