4 マリナの町の図書館

 マリナのまちしょかんは、じょうよんかいいっかいてのたてものだ。よこながくて、かべはくすんだはいいろをしている。

 シグマは、プロのぼうけんになるためのひっけんべんきょうで、マリナのまちしょかんなんげつかよいつめたことがある。


 しょかんいっかいにはうけつけおうせつしつ、それからしょくどうがふたつもある。

 かいさんがいしょフロアだ。ほんしゅるいほうなほうだろう。

 よんかいしょくいんきゅうけいしたり、まりするためので、ひろめのかいしつもある。

 いっかいしょフロア、だけどいっぱんこうかいはされていない。


 ローザはしょかんくなり、せかせかとかいさんがいまわりはじめた。かくてきあたらしいものから、ほこりをかぶったふるめかしいほんまでなんさつりながら。


 ややあってローザは、かいどくしょスペースでまった。あつめたほんつくえみあげると、がくしゃのようにねっしんみはじめた。そんなローザにシグマはこえをかけた。


「あの……ちかくのぎんこうかねろしてきたんだ。もうひるだし、めしにしようぜ」


 ローザはほんからはなさない。そのじょうたいのまま「わたしは……いらない」とこたえた。


ひるめし、ほんとにべないのか?」


 シグマがさいたずねても、ローザはうなずくだけでへんすらしなかった。それぐらいどくしょしゅうちゅうしはじめたローザをて、「ひとりにしてあげよう」とジャンがった。

 ひるめしをぬくなんて、おれならくうふくたおれちまう。

 そうおもいながら、シグマはひょいとかたをすくめて、ジャンにうなずいた。



 ふんいっかいしょくどうのテーブル。シグマはぎょかいるいがたっぷりのパエリアを、ジャンはバタークリームとイチゴをせた、ふわふわのパンケーキをちゅうもんした。

「ローザって、なにものなんだろうな?」

 ちゅうもんをききえたてんいんると、シグマがった。

「あのゴーグル、ジャンはがくぶんめいさんだってうけど、ローザがなんでそんなものってるんだ?」

 ジャンはくびをひねっただけでこたえない。うでんだまませきぞうのようにかたまっている。

「なんだよ。ジャンまでだんまりか?」

「いまはまだ、わからないことがおおすぎるからね」

 それはまあ……たしかにな、とシグマもおもう。


 きょいちにちなこと、わからないことがえすぎた。だからなのか、つかれたよ。

 ジャンもおなじらしい。しょくしまえ、ローザがいるかいどくしょスペースにもどってすわると、シグマもジャンもねむってしまった。

 ほんえたローザにこされてしょかんからるころには、すっかりゆうがただ。


「このあたりのしきは……〝むかし〟とそんなにわらないか」


 しょかんからてすこしあるくと、ローザがとつぜんそんなことをった。どこかかなしげに。


 むかし……。たしかにここらへんのしきはずっとわっていないとおもう。ローザは、どもだいのことをってるのかな? なんだか、それとはちがうかたにきこえたけど。


 しょかんはオータルうん――がたせんすい――のちかくにある。

 ここいらはシグマがまれるまえからこいびとたちのデートスポットだったという。

 いまのふゆゆうがたたいようしずむのがはやい。そらはすでにうみそこのようにくらくなっていた。そんなふうにくらいからこそ、じょうほしたちとガスとうかりがれいだ。

 こんなに、ローザはどこにかえるんだろう?


「もうかんもおそいしさ、おれたちがいえまでおくってやるよ」

 シグマがローザにった。


「ありがとッ。でも……」

 ローザのこえいっしゅんつまった。どうしたんだ、きゅうに?「いえは、ない」


「ない!? でも、にいちゃんがいるんだろう?」と、シグマがきいた。


あには……にました」

 しずんだこえでローザがこたえる。

 きだしそうなひとみつめられ、シグマはしまったとおもった。

「あ……ごめん。きいちゃいけなかったな」

べつにかまわないよ。むかしのことだから……」

 ローザのためいきがきこえた。「シグマかジャン、どっちかのいえめて」


「えっ――へぇっ?」とどうって、シグマとジャンはかおあわせた。


「ダ――ダ、ダメだよっ! そんなの!」

 ジャンのかおになる。「おとこひといえに、と、と、まるだなんて!」


 ローザはプッとわらった。「なにかんがえてんの。あなたたち、まだどもでしょ?」

「ローザだってどもだろ!」

 バカにされたがして、シグマはすぐさまかえした!

「あなたたちよりは大人おとな! わたし、十五じゅうごさいだから」


 十五じゅうごさいか。シグマはしょうした。たしかにとしうえだ。しかも、みっつも。けどさ!


「おれはもっととしうえごとしてるからな! プロのぼうけんだから!」

「あ、そ。わかったから、とにかくいえめて。宿じゅくするほうがずっとあぶないでしょ」


 まあ、それはそうだ……。

 シグマはしばしかんがえこんだ。それからジャンの、まだあかかおった。


「しっかたねえな。ハンナせんせいのとこにれていくか。おれたちの〝じっ〟にさ」

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