9 ローザの魔法

かいほろぼさんとするじゃあくなるマルスよ。せめて、そのちからをわたしにもせ!」


 ローザはじゅもんでもとなえるかのようにそううと、つえをビシッとじょうにかかげた。


「おきだ! マルス・レイン!!」


 ローザのつえさき、そこにめこまれているソーサリー・ストーンがピカッとひかる。

 つぎしゅんかんあかいマルスのたまがすーっとくうちゅうかびあがった。サッカーボールぐらいのおおきさのたまがバンとはじけてバラバラになるや、ごうさながらとうぞくたちにおそいかかる!


「な、なんだ、これはッ!?」と、うめいたミサキも、


 ティボルトも、マルカムも、ポーシャも、おどろきすぎていっうごけない。


 いちびょうにはりそそぐマルスのだんがんめんをえぐり、たいりょうつちすないあがらせた。

 だんまつのようなにんめいが、そのすなぼこりのなかからきこえてきた。


 さすがに、やりすぎじゃないのか、これは……!?


 ほうはすごかったけど、すごいからこそ、シグマはローザがおそろしくなった。

「……ころしちゃったの!?」と、たずねたジャンのほおきょうきつっている。


ころしてないよ。おきしただけ。さっきそうったでしょ」


 じょじょにすなぼこりがうすれていくと、ミサキたちにん姿すがたえてきた。

 カエルのようにあおけにたおれている姿すがたが。とうぞくたちはぜんいんしろをむいている。

 シグマがとうぞくたちのいきみゃくかくにんする……だいじょうだ、みんなぜつしてるだけ。


「にしても、にやりやがって。ローザはやっぱりほう使つかいじゃないか」

 シグマがった。しかも、なみほう使つかいじゃないぞ!

 ローザがらせたマルスのあめは、すべてぎりぎりのかんかくでミサキたちからはずれていた。ものすごいコントロールだ。


ほうじゃないって言ってるでしょ」と、ローザはあきれがおていするけれど。


「さっきのあかひかりあめは、ほうだろ?」と、シグマはすぐさまかえした。


「だからほうじゃないって。たしかに『じゃあくなるマルスよ』とか『マルス・レイン』とか、それっぽいことはった。でもあれは、おんせいにんしきだから」


 パスワードならシグマもっている。

 あんしょうばんごうみたいに、たとえばきんをロックするときなんかに使つかわれたりするやつだ。

 でも、つえにパスワードだって……!? そんなの、はじめてきいた。

「おんせい……にん……しき」ってのも、なんのことだか?


「そう、おんせいにんしき。『じゃあくなるマルスよ』のところは、このつえ使つかいつづけていたらしょうりゃくできるけど、ずっと使つかってないと、使ようしゃかくにんするためのログインがひつようになる」


 ろぐ……いん? 


「だから『じゃあくなるマルスよ』ってのは、ログインのためのパスワード。マルス・レインってわざまえもパスワード。みんながみんな、あんなわざ使つかえたらまずいでしょ。わるひとが、このつえをひろって使つかったりしたらさ。だから使つかえるひとげんていしないと。使ようしゃこえとパスワードで。このつえにはなんわざとうろくしてあるからけんなの」


 よくわかんないけど、だからこそほうだよな、とシグマはますますかくしんふかめた。

 だって、つえわざとうろくされてるんだろ! そんなのほうでしかない!


 ジャンにいたっては「すごいや、むかしがくぶんめいは!」とふるえるほどかんどうしていた。


 そのジャンが「あっ、そうだ! いまからだいがくこう!」ときゅうていあんしてきた。

「ぼくがかよってるオータルだいがくがくけんきゅうしつに! このあたりじゃ、そこしかないとおもうんだ、ジュズまるしゅうできそうなしょはさ」


「じゃ、そうするか」とシグマはどうした。そこしかないなら、そこにくしかない。


「わたしもく!」とローザがった。これでまんじょういっ


「というわけだから、バイバイ、キツツキども。さむいからくなよ!」

 シグマはぜつしたままのとうぞくだんわかれをげた。それからジャン、ローザといっしょに、ジュズまるくびじょうはんしんはんしんどうしゃはこびこんだ。

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