10 オータル大学

 テンルウやまのふもとからきたきたへとちょくしんしていくと、グリーンヒルのまちく。

 魔法の石ソーサリー・ストーンけんきゅうかいトップレベルのオータルだいがくはグリーンヒルのまちにある。


 まちにはみっつのキャンパスがもうけられていた。


 ジャンがざいせきしているこうがくしきは、うんざりするほどながさかみちうえにあった。

 どうしゃでそのしきないはいると、「そこがって」とジャンにわれたしょせつする。


 シグマたちがさきがくけんきゅうしつあつまっているとくべつかくがすぐにえてきた。

 かくとうにそっくりな、しろくてかくさんがいてのおおきなたてものが、どんといつならんでいる。

 そこが「とくべつかく」とばれているしょだそうだ。


 うわのコートのポケットからきょしょうりだしたジャンは、いちばんまええていたがくせいせんようたてものはいった。

 ジャンがうには、「きょしょうさえあれば、かんけいしゃかんにかかわらず、たとえなかでもかっにここのせつ使つかっていいんだよ」とのことだ。


「おれたちみたいながいしゃがいてもいいのか?」と、シグマがきく。

「もちろん! シグマたちは、ぼくのおきゃくさんあつかいになるからね。けんきゅうのためにそとからひとまねくなんて、ここじゃあ、よくあることさ」


 じっさいのところジャンのうとおりだった。


 ぐちとびらと、たてものはいってすぐのところにあるうけつけには、だいがくしょくいんほかけいいんもいた。けいいんしょくいんはジャンをるなり、「こんばんは」とがおあいさつしてくれた。

 ジャンがきょしょうせると、シグマたちのこともすんなりとおしてくれたし、ろうほかがくせいたちとすれちがっても、だれもシグマたちのことをきいてはこない。

 ジャンにしっしているだとか、うとましくおもっているらしいれんちゅうにもわずにすんだ。

 そんなふうにしてシグマたちは、あいているはいった。しゅじゅつだいのようなおおきなテーブルがふたつあるに。でんどうドリルにスパナなど、こうるいにつくひろだ。


「ふたつ、しゅじゅつだいみたいなのがあるだろ。そのどっちかにジュズまるはこんでおいて」

 ジャンがった。「ぼくはそのあいだに、しゅう使つかえそうなひんあつめてくるよ」

 われたとおり、ジュズまるじょうはんしんはんしんくびだいうえせる。

 しばらくすると、ジャンがてつどうなどのざいりょうりょうかかえてもどってきた。


「ジュズまるは……なおせそう?」

 ローザはあんかくしきれないようだ。

しんぱいかい?」と、ききかえしながら、ゴーグルをつけたジャンがでんどうドリルをかまえた。

「……しんぱい

 ローザはしょうじきだ。

 そりゃそうだよなとどうじょうしつつ、シグマはふくざつちになった。ぶんまもるためだったとはいえ、ジュズまるこわしちゃったのは、なんだから。だからふくざつぶんだ。

 しんぱい……とローザはもういちおなじことをった。

「いまのだいと、ジュズまるつくられたむかしとでは、がくのレベルがまるでちがうでしょ。ジュズまるぎんいろぜんしんは、ネオ・オリハルコンとでんミスリルのふくごうそうこうでできているの。そんなもの、このだいにはないとおもうんだけど……」


 シグマはネオ・オリハルコンなんてはじめてきいた。ローザいわく、シグマがりているハヤトのつるぎもネオ・オリハルコンでできているらしい。

 なんとかミスリルってむずかしそうなまえのやつもはつみみだ。


「テンルウやまにもそうこうパーツはいてなかったから……」

「まっ、それでもどうにかするのが、ぼくのやくだよ!」

 ジャンはしんまんまんってむねった。

だいはつめいになるのが、ぼくのゆめなんだ。ジュズまるぷたつにされたけど、ぐちゃぐちゃにこわされたわけじゃない。ふくざつかいぶんはほとんどきずだよ――そうしんじるしかないさ! あいにくっつけることができれば、きっとなおるってね。ネオ・オリハルコンもでんミスリルもたしかにないけど、このだいざいりょうしゅうしてみせる!」


「……そっか。ジャンが、そこまでうのなら――」

 ローザはやっとがおになった。してわらったようながおだったけど。

しんじるね! ジャンのこと!」

「うん、しんじて! でも、しゅうにはかんがかかる。シグマとローザにつだってもらえることは、もうないんだ。しゅうわるまで、そこらへんでててよ。ソファとかでさ」

 のすみにはからだよこにできそうなながいソファが、ちょうどふたつあった。

 ようもりかう調ちょうだん明日あしたなんしゅっぱつするかわからない。

 あさはやいかもな……。じゃあ、いまのうちにておくか。

 とかんがえたシグマがソファにそべると、ローザもよこになった。


「ところでさ、〝じっ〟じゃ、ききそびれたけど、ようもりにはなにがいるんだ? がいる。だから明日あした調ちょうだんめるってってたよな?」

 しばらくってもねむれなかったシグマは、ふとおもしてローザにしつもんしてみた。

 ジャンがバーナーでようせつするおとがきこえている。でんどうドリルでひんぶんかいしたり、くっつけたりするおとがうるさいのだ。そのせいで、なかなかねむれない。

 きっとローザもおなじだろう。そうおもっていたら、ウソだろ!? じゅくすいしてるよ!


「たいしたもんだよな、ローザってやつは……」

 シグマはなおかんしんした。

「そりゃそうだろ」

 ジャンがいったんでんどうドリルをめた。「ローザはマルスのやくさいのこりだぜ」


 ジャンはすこしかなしそうなかおになって、ちらりとシグマにふりいた。


「そのころはせんそうだったんだ。ばくげきとか、そういうおとをききながらでも、ねむらないといけないときがあったんだよ……」

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