2 ソーサリー・ストーン

 この魔法の石ソーサリー・ストーンこそが、おとこけんはんにんである、なによりのしょうおとこみせはいまえにはっていなかったから。

 マリナのまちにソーサリー・ストーンだけをっているみせはない。


わるいね。しょうきんがかかってるんだ。がさないぞ!」


 さいきん、オータルぜんたいでソーサリー・ストーンをねらうどろぼうしゅつぼつしていた。


 りょく宿やどしたソーサリー・ストーンは、ぼうかならずついている。

 こうせんのエンジンにも使つかわれるようなちょうこうきゅうひんだから、つめおおきさほどのソーサリー・ストーンひとつれるだけでも、とんでもないがくになる。

 とうなんがいにあったてんしゅたちがおおさわぎするのは、あたりまえだった。

 だから、てんしゅたちみんなですこしずつおかねしあって、オータルぼうけんたちに「どろぼうつかまえてくれ」とらいしてきたのだ。

 それが、さんしゅうかんほどまえのこと。


 シグマはここさいきんぼうかよいつめてはんにんとくていしようとした。

 ところが、いつまでっても、あやしいじんぶつたらない。

 しょうきんされたとってけいかいしたのかな? 

 いいや、そうじゃないかも。

 あやしいとおもわれていないじんぶつこそが、じつはんにんじゃないのか。シグマはそうかんがえた。


 あんのじょう、はんにんさいしょがいにあったともうぼうてんしゅだったのだ。


 そのぼうてんしゅは、さすがにいかけっこではがないとはんだんしたのだろう。いつめられたネズミのように、せかせかとひだりがわえるへとかくした――そんなふうにシグマにはえた。


「そっちはきどまりだぜ、ぼうのおじさん」

「んなことはな、わかってるんだよ、くそガキが!」


 うらいつめられたにしては、おとこゆうしゃくしゃくだ。


ひとおおおもてどおりから、ずいぶんはなれちまったなあ、シグマ」

「それがなに?」

「ここはひとにはつかないしょだ。それがどういうことか、わかるだろ? どもがおそわれていても、だれもたすけにちゃくれないんだ!」


 にやりとわらって、おとこはベルトのうしろにまわした。マントのから、キラリとひかるナイフをりだすと、おとこはぺろりとしたなめずりした。

 ああ……とシグマはおもった。やっぱりっていたのか。でも――。


ざんねん。おじさんじゃ、おれはたおせないよ」

「うるせえ! ガキがプロのぼうけんだからって、いちいちなまなんだよ!」


 おとこかおにしてツバをきすてた。


ってるぜ。シグマのサーベルはほんものそっくりのにせものだ。そりゃそうさ。ガキにほんものみせなんて、ここらいらじゃ、どこにもねえってんだ!」


 それはほんとうのことだった。

 シグマのサーベルはほんものにそっくりなだけの、けっしてれないぞうひんわば、ニセモノ・サーベル。にしていることだったから、シグマはギリッとおくをかみしめた。


「しかもよ、こっちにはぬすんできたばかりのソーサリー・ストーンまであるんだ!」


 おとこあかひかいしをナイフのあなにハメこんだ。ソーサリー・ストーンをそうできるように、したのほうにサイズのことなるあながいくつもあいている。


ひとれないニセモノ・サーベルと、ソーサリー・ストーンをそうしたナイフ。どっちがつよいとおもってるんだっ!?」

「そんなもん、ナイフにまってるだろ。けどさ!」


 けんじゅつあつとうてきぶんのほうがうえだ――シグマはそうかくしんしている。


「あんたなんかにけるかよ!」

「へえぇ……そうかい」

 おとこまゆがピクピクとうごく。かなりおこっている。

なまなことがえないようにしてやる! あのに――おくってやる!」


 シグマがさやからサーベルをきぬくと、おとこおそいかかってきた。

 おとこのナイフのかまえも、うごかしかたかんぜんしろうとだ。だけど、りょく宿やどしたソーサリー・ストーンつきのあなどれない。


 おとここうげきをかわすたびに、あかかがやくマルスのねつかんじる。

 ひたいをねらってきたナイフを、シグマはさらりとかわした。ナイフは、シグマのうしろにたかくそびえている、あかレンガのかべたった。そのかべにピシリとはいる。


「ほれほれ、どうした? かすっただけでもじゅうしょうだぞ。さっきまでのなまはどこにったんだ!?」

 したからすくいあげるようないちげきが、かみひとでよけたシグマのまえがみをかすめていく。

ぞう、すこしははんげきしてみろ! それとも、ナイフがたるのがこわいのか?」


 シグマはため息をついた。

「わかってないなぁ。そんな攻撃、ちっともこわくなんかないさ」

つよがりを!」

 おとこいかりにまかせてナイフでいてきた。

 シグマはそのきをかわすと、サーベルをよこにふり、あいはらにドスンときょうれついちげきをたたきこんでやった。

たりもしないナイフを、なんでこわがらないといけないんだよ?」

「バ、バカな……」

 おとこりょうをカッとひらいて、ぽろりとナイフをとしてしまった。

 カツン――と、ナイフがめんころがるおとがひびく。


ぼうのおじさん。おれはね、はんげきできなかったわけじゃないんだ。あんたがどんなうごきをするのか、じっくりかんさつしていただけなんだよ」

「ちくしょう……」


 よこいっせん、サーベルのかたちにへこんだはらさえながら、おとこはへなへなと、そのかがみこんだ。


「ガキのくせにぃ、なまなぁ……!」

 おとこいっしゅんだけシグマをあげて、ぜつした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る