アフター・マルス ――シグマの冒険――

第二部 少女の過去

１ オータル新聞の記事

〈妖（よう）魔（ま）の森（もり）は禁（きん）断（だん）の地（ち）？　明（あ）日（す）、初（はつ）の調（ちょう）査（さ）団（だん）を派（は）遣（けん）！〉

　オータル新（しん）聞（ぶん）の夕（ゆう）刊（かん）。一（いち）面（めん）の記（き）事（じ）より抜（ばっ）粋（すい）。

〈マリナの町（まち）の西（にし）にある黒（くろ）の森（もり）、通（つう）称（しょう）「妖（よう）魔（ま）の森（もり）」。

　その森（もり）の奥（おく）には〝謎（なぞ）の洞（どう）窟（くつ）〟が存（そん）在（ざい）するという。

　あのマルスの厄（やく）災（さい）で死（し）んだ動（どう）物（ぶつ）たちの幽（ゆう）霊（れい）が化（ば）けて出（で）る――それが「妖（よう）魔（ま）の森（もり）」の由（ゆ）来（らい）だが、そんな話（はなし）を信（しん）じているのは一（いち）部（ぶ）の物（もの）好（ず）きだけだろう。

　しかし、妖（よう）魔（ま）の森（もり）には昔（むかし）から、獰（どう）猛（もう）な野（や）犬（けん）が出（しゅつ）没（ぼつ）すると言（い）われている。

　かまれてケガをしたり、なかには食（く）い殺（ころ）された者（もの）までいたらしい。

　そんな噂（うわさ）の絶（た）えない危（き）険（けん）地（ち）帯（たい）。

　何百年（なんびゃくねん）ものあいだ、一（いっ）般（ぱん）人（じん）の立（た）ち入（い）りはかたく禁（きん）じられてきた。

　ところが十（じゅう）年（ねん）ほどまえに、世（せ）界（かい）各（かく）地（ち）でマルスが発（はっ）見（けん）されると事（じ）情（じょう）が変（か）わった。

　マルスが発（はっ）見（けん）された場（ば）所（しょ）のことを「禁（きん）断（だん）の地（ち）」と呼（よ）ぶ。

　実（じつ）は妖（よう）魔（ま）の森（もり）もそうなのではないか？　噂（うわさ）の洞（どう）窟（くつ）が「禁（きん）断（だん）の地（ち）」の入（い）り口（ぐち）かもしれない――そんな話（はなし）でオータル地（ち）区（く）はいま持（も）ちきりなのだ。

　明（あ）日（す）、その真（しん）相（そう）をたしかめるために、調（ちょう）査（さ）団（だん）がはじめて妖（よう）魔（ま）の森（もり）へと派（は）遣（けん）される。

　偉（い）大（だい）なる科（か）学（がく）文（ぶん）明（めい）の遺（い）産（さん）にして、いまや、われわれ現（げん）代（だい）人（じん）の生（せい）活（かつ）にも欠（か）かせなくなったエネルギー資（し）源（げん）、マルス。

　妖（よう）魔（ま）の森（もり）で大（たい）量（りょう）のマルス・タンクやソーサリー・ストーンが発（はっ）見（けん）されれば、再（さい）開（かい）発（はつ）が進（すす）むオータル地（ち）区（く）はますます豊（ゆた）かになるだろう。

　心（しん）霊（れい）スポットだった森（もり）が、これからはオータル地（ち）区（く）発（はっ）展（てん）の象（しよう）徴（ちよう）になるかもしれないのだ〉