アフター・マルス ――シグマの冒険――

キャスバル

プロローグ

プロローグ

 あとすこしで、ひどくながかったあきわろうとしている。


 しょうじょはふらつくあしどうくつからた。


 ぜんあかるいよるそら。ぶあつくにごったくものせいでほしつきえない。それなのに、まちからのぼるヘビのしたのようなほのおらされて、あわいオレンジいろまっているよるそらだった。


 まちえていてもぶんにはけっきょくどうすることもできない。

 ほとんどっているのがやっとのしょうじょにできることといったら、まちをつつむほのおがこのもりまでやってまえに、んでしまったなかたちをめてあげることだけだった。


 きっと、すぐにたすけがる。まちひとたちは、それまでどうかきのびて――。


 しょうじょはもうもうとまちほのおのうねりからをそらした。


 いっしょにのこった〝かれ〟が、あにめてくれているさいちゅうだ。ほかなかたちとおなじように。パパとママがんでからゆいいつぞくだったおにいちゃんを……。

 そのあにととのったかおつめたいつちがおおいかぶさっていく。

 しょうじょつちをかけわった〝かれ〟に「あれを……」とって、あにつるぎゆびさした。


 ちゃいろさやにおさまっているつるぎつかぶんに、あかひかるボールのようないし――。

 ひとこころはんのうする〝魔法の石ソーサリー・ストーン〟。

 このせんそうげんいんにもなった、の……。


 そこまでかんがえて、あたまのなかがしろになった。ちかけのまぶたが、もうげんかいだ。くらくらして、ぐらりとめんひざをついたしょうじょを、ひろいあげたあにつるぎといっしょに〝かれ〟がってくれた。


みつに……って」

 こえをしぼりしたしょうじょに〝かれ〟はいつものようにごんでうなずくだけだった。

 たたかいにはった。そのはずだけど、まだ、どこかにてきかくれているかもしれない。

 しょうじょは〝かれ〟があるきだすまえに、くらどうくつぐちをふりかえった。


「わたしたち……ほんとうったのかな?」

 それからすぐに、しょうじょねむりにちた。

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