ハンナ・オルバースの日記 三十四ページから抜粋

 かつてじんるいみだした。ものねんりょうになるエネルギーとして。ひとこころはんのうするとくしゅなエネルギーとして。


 しかし、マルスはあまりにもきょうりょくすぎた。


 せっきょくてきせんそうにもようされはじめると、しんへいかいはつちゆうでとうとうぼうそうしてしまった。ひとえなくなったマルスへいじんるいとのたたかいがはじまったのだ。


 いちねん、かろうじてひとびとはマルスへいしょうした。しかし、きゅうぜんきこんだだいせんそうは、かいじんこうはんぶんにまでげきげんさせてしまった。


 のこったひとびとは、そのだいせんそうのことを「マルスのやくさい」とんだ。


 せんそうでたくさんのりくがけずりられたという。かいっているくにかたちわってしまうほど、ほんとうにたくさんのりくが。


 じんるいは、ふたたびマルスがぼうそうするのをおそれて、いちがくじゅつふういんすることにした。まいにちせいかつがいきなり便べんにならないように、すこしずつ、すこしずつ。

 にんげんがコントロールしきれなかったこうがくちからのみをすい退たいさせていく。なんじゅうねんなんびゃくねんながかんをかけて。



 西せいれき二八一二にせんはっぴゃくじゅうにねん――。

 あのマルスのやくさいから、およそ五〇〇ごひゃくねんのときがすぎさった。そのじゅうねんほどまえから、いわゆる「きんだん」がつぎつぎつかるようになった。


 きんだんには〝ほう〟がある。

 ほう二八〇五にせんはっぴゃくごねんからあらたなエネルギーげんとして、ほんかくてきかつようされはじめた。


 わたしたちがくしゃは、なんぜんさつものふるしょもつみあさってはろんかさね、とうとうほうしょうたいきとめた。われわれがほうぶそれは、かつて「マルス」とばれていたものにちがいない。


 かいめつぼうすんぜんにまでいこんだあくのエネルギー「マルス」。だからこそ、わたしたちがくしゃは、「ほうたよりすぎるのはけんなことですよ!」とひとびとけいこくしはじめたのだ。


 でも、ほう便べんさをれはじめたひとびとは、「ぶんたちはおおむかしれんちゅうとはちがうんだ!」となんのこんきょもなしにった。わたしたちがくしゃじょげんれようとはしなかった。


 そしてほうは――マルスは、わたしたちがそうしていたとおりへいにも使つかわれはじめた。もちろん、五〇〇ごひゃくねんまえのようなこうがくじゅつによってせいぞうされたマルスへいではない。

 マルスをためこんだいし――ソーサリー・ストーンをつるぎつえにつけることで、ほうけんほうつえとしたのだ。


 このとき、あのシグマ・ノルニルは、まだじゅうさいしょうねんでしかなかった。

 そのことを、わたしはれきがくしゃとして、いつまでもおぼえておきたいとおもう。しょうねんしょうじょってぼうけんがはじまった――そのことについても。

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