6 禁断の地

 テンルウやままでは、えきかられっしゃふたえき。さほどかんはかからない。

 だけど、ながいトンネルをつうするときにはちゅうひつようだ。

 れっしゃはいとうからながされるあかすすのようなひかりが、あっというまにトンネルのうちがわまでたしてしまうから。

 まどめないでいると、そのあかひかりがぶわっとれっしゃのなかにまではいりこんでくる。

 このあかすすのようなひかりが、マルスだった。

 じょうでもでんでもない。れっしゃうごかすきょうりょくなエネルギー〝マルス〟。


 ふゆだからきゃくたちはみんなまどめている。

 たまにわすれがあるから、ねんにはねんで、シグマもジャンもトンネルのなかではゴーグルでまもるようにしていた。

 ジャンは、れいやつとはべつの、むかしから使つかっているゴーグルをカバンからりだしてそうちゃくすると、「それにしてもさ」とって、ゆるりとくびをひねった。


「そもそも、なんでゴーグルがしゃべるんだろうね?」

「いまさらうことかよ? ジャンにわからないのに、おれにわかるかっての。むかしひとって、がいとさびしがりだったのかもな」


 テキトーにこたえたつもりだったけれど、シグマはほんとうにそんながしてきた。

 さびしいとえば、テンルウやましゅうへんもそんなかんじだ。かなりしずかだった。

 このあたりはもとから、そんなにひとおおいところじゃない。さんをしているひとたちがたまにいるだけみたいなしょだった。

 おまけに、ここがきんだんていされたことで、ソーサリー・ストーンとマルス・タンクのかいしゅうぎょうわるまで、かいせいひとりをきびしくせいげんした。そのせいで、ますますひとかけなくなった。

 テンルウやまえきりたきゃくは、シグマたちをふくめてにんもいない。

 そのうち、テンルウやまかったのは、シグマとジャンだけだ。


 テンルウやまたかさは、五三〇ごひゃくさんじゅうメートルほど。

 まえらいは、おおむかしにテングというようかいやまにいて、そのだとか、テンルウという西にしたいりくことが、やままえになっただとか、いろんなせつがある。


 ねんまえおおあらし、そのテンルウやまいちくずれた。

 よくじつやまくずれがあったしょで、はいいろとびらつかった。

 とびらは、やまくずれがあるまでは、やまはだめこまれていた。つまりかくされていた。そのとびらがむきしになっているのを、あらしよくじつに、さんちゅうひとがたまたまはっけんしたのだ。


 やまくずれのえいきょうで、とびらはちぎれかけていた。とびらおくにはきょだいくうかんひろがっていて、たいりょうのマルス・タンクとソーサリー・ストーンがそこでつかった。

 テンルウやまのなかがきんだんになっている――そのことがはんめいしたごとだ。

 きんだんぐちにあたるそのとびらは、テンルウやまなかあたりにある。


 さかのなだらかなやまみちをのぼっていくと、ぷんとくさのにおいがした。

 やまらすリスやとりたちの姿すがたをのんびりとながめながら、シグマとジャンはとびらがあるしょまであるいていく。


 さかみちをのぼりつづけてようやく、やまなからへんがえてきた。

 ふんには、めんたいらな、やまちゅうふくへとたどりいた。

 さらにふんには、きんだんへとつながるとびらまえに、シグマとジャンはっていた。


「ゴーグルはさ、このぐちからいちばんちかい、マルス・タンクのちょぞうつけたんだ」

 そうって、はずれかけのふるめかしいとびらをあけたジャンのなかに、シグマもつづく。


 やまのなかとはいえ、ここはきんだんだ。じんるいれきじょうもっとがくじゅつすすんでいただい。そのだいつくられたもののこされているしょ――それが〝きんだん〟。

 だからそのないは、やまのなかとはいえ、シグマがそうぞうしていたじょうれいだった。やまのなかなのに、まるでだいかいにあるおかねちのがっこうみたいにりっかんじなのだ。

 ただ、ほんものがっこうとくらべると、やたらとてんじょうたかい。

 つうはいいろで、コンクリートのようにえた。おとにんそろってよこならんであるいても、まだまだつうはばにはゆうがある。それぐらいひろかった。

 そのひろつうが、ぐちからおくかって、まっすぐにのびている。

 つうちゅうで、えだのようにわかれているべつろうなんぼんもあった。


 ――と、そのときだ。いきなり、てんじょうあかるくなった。


「え、なんだ、なんだ!?」といながら、シグマはびっくりして、あたりをまわした。

 どこにもでんきゅうなんてない。それなのに、でんがついたぞ!


「すごいがくじゅつだろ?」と、ジャンがった。「てんじょうかべがさ、ちょうどいいあいひかってるみたいなんだ。しかもさ、ひとがいるってわかると、かっでんがつくんだよ」


 ジャンのがキラキラとかがやいている。


「うちのだいがくかしこれんちゅうですら、どうしてこうなるのか、みがわからないんだ」


 てんさいのジャンにもわからないとう。そんなにすごいじゅつまでばなしてしまうなんて、むかしひとたちはどうかしてるよ! シグマはこころそこからそうおもった。

 だけど、むかしひとたちにそうさせてしまうほど、マルスのやくさいはひどかったのだ。

 シグマがそんなことをかんがえているあいだに、ジャンがあるきだした。

 ゴーグルをつけたまでく。

 ちいさなこうえんほどのひろさで、からのマルス・タンクのようみっつもあった。

 マルス・タンクは、たかくてぽっちゃりしているおとぐらいのおおきさにえた。

 ようひょうめんとうめいなガラスになっている。このように、あかひかるガスのようなじょうたいでマルスはぞんされていたらしい。

 とうめいなガラスりのようだから、なかかくにんはひとでできる。


「しっかし、こんなしょにゴーグルがちてたら、やっぱ、だれかがづくよな」

 ぐるりとくびまわして、シグマはおもったことをくちにした。

「ふつうにちてたらね。そしたら、ぼくよりもさきにだれかがつけていたかも。でもさ、ゴーグルはやまどうぶつ、たとえばリスたちがはこんできたんじゃないのかなっておもうんだ」

 はこんではきた。でも、ゴーグルはものじゃない。だから、リスたちはすこしはこんだだけでてていった。ジャンはつづけてそうった。

「それを、ぼくがはっけんしたんだよ。きっと、そういうことさ」

 ジャンはおくかべゆびさした。「あそこから、ゴーグルははこばれてきたのかも」


 かべしたあながあいている。ひととおれるほどのおおきさではない。だけど、リスならゆうりできそうだ。ゴーグルもぎりぎりだけどとおれそうながする。

 それぐらいのサイズのあなかべにあいていた。


「リスがはこんできたかもしれないゴーグルか……。そのリスならとおれそうなあな……。ほんとうにゴーグルが、もともとはかべこうがわにあったとしたら――」

「そう、そのとりだよ、シグマ!」


 ジャンがいきるまえに、シグマはうなずいた。そして、ふたりどうった。


「このかべおくに、なにかある!!」 

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