7 ふたたびテンルウ山へ

あぶなくなったら、すぐにげる。それがかしこさです。げるのははじじゃありません」


 ハンナせんせいはきっぱりとした調ちょうでそううと、くるまのキーをしてくれた。

 せんせいにおれいって、シグマたちはにわしゃへとかう。

 マルスでうごどうしゃは、ハンナせんせいおっとひんだ。

 シグマもなんうんてんさせてもらったことがある。

 まえにふたり、うしろにさんにんの、にんりのくるまを。


 くるまはなめらかなりゅうせんけいで、かめこうのようなかたちをしている。シグマはうんてんせきりこんでエンジンをかけた。ブゥゥーン! とマルス・エンジンがうなる。

 じょしゅせきにジャン、こうせきにはローザ。シートベルトをめると、くるまはっしん

 どうならぶガスとうと、ぽつりぽつりといえかりがきらめいているよるまちを、かめこうのようなくるまあんぜんうんてんはしっていく。ひたすら西にしへとかって。

 シグマたちがしているテンルウやまは、マリナのまち西にしにあるからだ。


 十五じゅうごふんはしりつづけていると、いえかりがだいえなくなってくる。

 まんげつと、ほしと、くるまのライトのかりだけが、つめたいよるやみらしていた。

 さらにふんくるま西にしへとすすんでいくと、ようやくテンルウやまのふもとにいた。

 ひっそりとしずまりかえっているやまなかあたりに、きんだんぐちがある。

 そこまでくるまでのぼると、かくったデザインのべつどうしゃがシグマのはいった。

 にんりのくるまのようだ。しゃないには、だれもっていなかったけれど――、


 このカクカクしているくるまおぼえがあるぞ!


 くるまからりたシグマとジャンは、「まさか!」とどうにさけんだ――そのときだ!


「キャプテン、ちょっとはつだってくださいよ!」

「そうっすよ。これ、してるのに、がいおもいんですから!」

「なんでこんなにおもいのぉ。アネさんのほうがちからちでしょ、わたしとわってぇ!」


 テンルウやまのなかから、わかだんじょがぞろぞろとてきた。

 さきほど「キャプテン」とったおおがらしょうねんが、シグマがぷたつにしたジュズまるじょうはんしんかかえている。

 ジュズまるはんしんは、そのしょうねんよりもとししただんじょがふたりでっていた。


「ぐちぐちともんうんじゃないよ! ちゃっちゃとはたらくんだよ、おまえたちは」


 そのさんにんのあとから、もうひとりてきた。くろかみストレートのロングヘアーのじょせいが。

 そのじょせいはすらりとたかくて、しなやかにがるながいムチをっている。

 もうかたほうには、ジャンがマルス・ガンでせつだんしたジュズまるくびっていた。


「あちゃぁ……やっぱりミサキかよ」

 いたくないやつにってしまった。そうおもい、シグマはひくいうなりごえをもらした。


「おやぁ……そのこえは、シグマか!?」

 さっそくミサキにづかれた! そのにいたぜんいんう。


「えっ――いなの?」

 おくれてくるまからりてきたローザが、ミサキとばれたおんなとシグマをこうやった。


「まあね。ミサキは、ぼくらと〝じっ〟がおなじなんだ。ほかたちは、ちがうけど」

 シグマではなく、ジャンがローザにこたえてあげた。ジャンはつづけてこうった。

「ミサキはとっくに〝じっ〟をてる。いまはとうぞくだんキツツキのリーダーさ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る