4 妖魔の森の幽霊

 ようもりにはどうぶつゆうれいる。たしかにむかしからそうわれてきた。


 でもさぁ、そんなめいしんしんじているのは、ほんとにようえんまでだぞ。あとは、よほどのわりものだけ。だからローザがほんとうゆうれいしんじているだなんておもえないんだけど。


 シグマはしんげなをローザにけた。

 そのちょくだ。ガタガタガタッとひざからしたふるえて……な、なんだ、しんか!?


「まずい!」ローザがいきなりはしりだした。「いそぐよ!」

 ほんとうゆうれいでもたかのようにほおふるわせている!


 そんなローザのなかって、くらもりのなかをはしっていると、そこらじゅうになんたいものヘルハウンドがたおれているのがえた。

 調ちょうだんどうこうしているかいせいぐんじんたちがたおしたのかな?

 かいせいぐんじんたちならソーサリー・ストーンつきのそうしているのがふつうだ。

 うでもたしかだし、ヘルハウンドになんかけないだろう。

 シグマとジャンがそんなかいをしていると、


「……だからって、にはてない!」


 ローザがつうこえだんげんした。


「あれってゆうれいのことか!?」

 シグマがしつもんしたそのときだ。

 ぜんぽうに、ごつごつとしたきょだいいわかべえた。

 たかくそびえているいわかべしたのほうに、どうくつぐちらしきあながある。

 おおきなそのあなからおとたちがてきた。たいりょうのアリがあわてふためいてげだすようにして。そんなおとたちのなかにたかい、いかにもかしこそうながいた。


「――あ、きょうじゅだ! リアンきょうじゅ調ちょうだんさんしていたんですか?」

 そのたかおとこをジャンがびとめた。おじいさんはオータルだいがくきょうじゅらしい。


「おおっ! ジャンではないか!? こんなところで、いったい、なにをしておるのかね……? こんかい調ちょうだんのメンバーには、ジャンは、はいっておらんかったはずだが……」

 はしってきたからだろう。リアンきょうじゅばれたおとこは、くるしそうにかたいきをしている。

「まあいい。ジャン、げなさい。はやく!」


「あの……」はしりそうとしたきょうじゅにジャンがたずねた「なにがあったんですか?」


ゆうれいだよ、ジャン! ようもりゆうれいは、たしかにそんざいしていたんだ!」

 てはいけないものをた――ふりいたリアンきょうじゅはそういたげなようだった。

「だからはやげるんだ! ジャンも、ジャンのともだちもね。いそいで!」


 リアンきょうじゅかれのまわりにいたものたちはもうスピードではしりさっていく。

 かいせいやくにんかいしゅうぎょうしゃけいさつかんぐんじんたちもおなじようにげまどっている。とくにぐんじんたちのようじょうだ! サーベルをられ、かたふとももからながしていた。


 ウソだろ!? だいがくきょうじゅゆうれいなんかしんじてるのか!?


 っていたいところだけど、ふつうではないことがこっているんだ。

 まさか、ほんとうゆうれいが――。シグマとジャンが、おもわずかおわせたときだった。

「こうなるってわかっていたから、調ちょうだんけんめたかったのに……」

 ローザがにがにがしくつぶやいた。どうくつぐちちかく、そのあたりのめんつめながら。

 ローザがつめているしょだけ、じゃっかんつちがもりあがっている。

 なんだか、おはかみたいだな……。シグマのにはそううつった。

「どうかまもっていて……わたしたちのこと。おにいちゃん、みんな」

 おにいちゃん? ローザのにいちゃんは、もうんでるんだろ?


 えっ――ってことは、この、おはかみたいなのって……。


 つちのもりあがりからをそらしたローザが、どうくつのなかへとはいっていく。


 つちのもりあがりがなんなのか、なんとなくそうはつく。だからなおさら、たずねることができなかったシグマとジャンも、おそるおそるどうくつのなかにはいった。


 どうくつのなかははばひろいっぽんみちのようだ。てんじょうかべしょうめいりつけられている。

 あきらかにじんこうてきつくられたどうくつおくかってすすんでいくと、すごくひろくうかんた。おおきないえいつつかむっゆうはいりそうなほどひろくうかんに。そして、そこにはあった。


「なっ、なんだよ、あれは……!?」

 あげたジャンが、ぼうぜんとしたかおつきになる。うすあおひかきょだいさんかくすいだ!

 たてにじゅうメートルはありそうなそのさんかくすいには、ところどころあながあいていた。


「あのあおさんかくすいは、じんこうのうせいぎょそう――つうしょうふういんけつかい〟」


 くらこえでローザがおしえてくれたけど、ふういんけっかいだって!? なんだそりゃ?


「マルスへいじんこうのうきょうせいてきにスリープモードにする。それがふういんけっかい。でも、けっかいいろがあんなにうすくなって……あなまであいてる、なんしょも! あんなふうだとふういんけっかいはちゃんとのうしないとおもう」


 さんかくすいよっつあるちょうてんのうち、ていめんみっつにふういんけっかいどうそうがあるらしい。


調ちょうだんのだれかが、そうをいじったのか……!?」

 ローザはあきらかにあせっていた。


だらけのぐんじんたちは、あのあなからこうげきされたのかな?」

 シグマはややまえかがみになって、けっかいにあいているあなつめた。

「たぶんね。けっかいしょうのうしてなずにすんだ。そういうことなんだろうけど」


 そのふういんけっかいのなかから、ひくくうなるようなこえがきこえてきた。

 あなだらけのけっかいいろが、さらにうすくなっていく。

 ピシ、ピシッとひかりかべにひびがはいった。けっかいがますますうすくなって、なかがえた。


 ――ヘビだ!


 おおがたけんせてつくられたヘルハウンドなんてかくにならないほどきょだいなヘビが、うすあおけっかいのなかにいた。ぜんしんくろなヘビが!

 ぐるぐるとロープのように、あるいはうずきのごとく、とぐろをいている!

 マルスのかがやきを宿やどしたあかひとみの、いかにもじゃあくそうなヘビが、そこにいたんだ!

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