10 箱のなかの少女

「この……んでる……のかな?」

 おそるおそるひつぎのなかをのぞきこんだジャンが、えんでもないことをくちにした。


「やめろよ、ジャン! たいならくさってるはずだろ」

んだちょくかもしれないよ……」

 すっかりたいだとおもいこんでいるらしい。ジャンはきざみにふるえていた。


んだちょくじゃなくて、まだきてるかもっておもいたいよ、おれは」

 たいなんてはっけんしたくない。きててくれ! そうねがいながらシグマははんろんした。

 はこのなかのしょうじょは、ぴくりともうごかない。そのことがにはなるけど……。


「じゃ、はやたすけないと! きてるなら……この、どうやっていきしてるんだ?」

 たてにながひつぎのようなはこにはすきがない。かんぜんをされていた。

 ジャンのうとおりだ。……これ、どこからくうれてるんだろう?


きてるのうせい……ほんとにあるんだよな?」

 ジャンがうたがよこで、シグマはひつぎそくめんにたくさんあるボタンをテキトーにしてみた。

 プシュ……とおとがなった。

 おとにつづいて、とうめいうえはんぶんのふたが、ゆっくりとどうでひらいていく。


「おおぉ、すっげぇ! シグマ、どうやってうごかしたんだッ!?」

 おどろいたジャンがいっぶん、うしろにびのいた。

「テキトーにボタンをしてみたら――って、おい、ジャン! おんなが……!!」

 シグマはそのしゅんかんのがさなかった。

 ほんのわずかにだが、いま、たしかにしょうじょのまぶたがうごいた!

 すうびょうには、そのまぶたがかんぜんにひらいて、しょうじょがすこしだけくびげた。


「ほらな! きてたじゃないか!」

「うん、よかったぁ!」


 しょうじょおおきなと、シグマのこうしんかくしきれないせんかさなった。


「……だれ?」

 さんびょうだけびっくりしたひょうじょうせたあと、しょうじょしずかにそうきいてきた。

「あなたたちは……だれ?」

 しょうじょはすぐに、もとのひょうじょうにもどる。こんなじょうきょうなのにがいれいせいなやつだ。


「あやしいもんじゃないさ。おれはシグマ・ノルニル、プロのぼうけんだ!」

「はっ……? プロの……ぼうけん?」


 ほそめたしょうじょは、ぶんたちよりもすこしとしうえかな? シグマにはそうえたかのじょは、けいかいするつきのまま、「あなたは……?」と、こんはジャンにたずねた。


「ぼくはジャン・タナカ、だいがくせいだよ」

だいがくせい? どもにえるけど……?」

「だとしても、だいがくせいなんだ」

「そう……」


 じょうはんしんこしたしょうじょは、あしながいやせがただった。

 ながそでの、うすいタイツのようなふくからだにぴたりとりついている。ふくいろみどりいろ。そのへんにえているくさのようないろで、ダサくてへんふく、というのがシグマのしょうじきかんそうだった。もちろん、そんなことをうとしつれいだから、くちにはしないけど。


「……やだ、つぶれてる」


 のそのそとひつぎそとてきたしょうじょは、かべぎわのふたつのはこのうち、れきでつぶされているほうをて、ためいきをついた。

 しょうじょくびよこにふる。くらいピンクいろのボブカットがゆうれていた。

 それからかのじょは、なほうのはこをあけた。

 かざりっのないみじかつえてくる。

 つえさきには……あかひかるソーサリー・ストーン!

 シグマはそれをて、しょうじょにたずねた。

「おおっ! ソーサリー・ストーンつきのつえってことは――きみ、ほう使つかいなのか!?」

 ほう使つかいにえるだなんて、やっべえぇぇ! シグマは、めちゃくちゃかんげきした。


「……ほう使つかい……? あなた、なにってるの?」

 しょうじょはんのうこおりのようにややかだ。


「ソーサリー・ストーンつきのつえってんのは、たいていほう使つかいだろ?」

 それがじょうしきのはず。ようえんだってっている。


「あなたたち、ファンタジーごっこでもしてるの? あ、そうか。だから、そんなへんふくなんだ」


 へんふくだと!? シグマはすこしカチンときた。こいつ……かんわるくないか? 

 だいたい、へんふくてるのは、そっちじゃないか! 

 おれはそれをわなかったのに、なんなんだよ! とシグマはこころのなかでおこった。

 いまはまだくちしておこったりはしない。そこはなんとか、がまんする。


「きみたちのふくふるくさいなっておもってたの。まっ、魔法の石ソーサリー・ストーンなんてまえをつけたら、どもがかんちがいしてもはないけどさ。それに――え? ええっっっ!?」


 しょうじょとつぜんをまるくした。どうしたんだ、きゅうに? 

 さけんだしょうじょかおをぐいっと、シグマのみぎつるぎせてきた。


「な……なんだよ?」と、シグマがきく。

「そのつるぎ、どこでれたの……?」

「これ? これは……じつはさっき、ヘンテコなロボットにおそわれたんだ。そいつがってたんだよ。おれのサーベルはこわれちゃうし、このつるぎつもりなんだけど」

「ロボット……ってまさか、ジュズまるのこと!?」

「じゅ、ず……まる?」

「そういえば、ジュズまるはどこ!? ジュズまる……? ジュズまる!?」


 それまでのれいせいちんちゃくはどこへやら、しょうじょにぽっかりとあいているおおあながつくと、まいねこのようにおろおろとあなちかづいてだしのままけだしていった。

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