エピローグ

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 マルスへいオロチとのとうからしゅうかんがすぎた。

 そのあさ、シグマとジャンが〝じっ〟のどうようせつかうと、ローザとジュズまるはすでにいえそとっていてくれた。

 ハンナせんせいどもたちもいる。

 かえいえのないローザとジュズまるは、ここでハンナせんせいたちといっしょにらしているのだ。


「おっそい! ふんこくしてるんだけど?」

 ぶつくさもんえるくらい、ローザはあさからげんだ。

「たったのふんだろ」

 まぶしいあさほそめながらシグマはをもらした。

ふんでもこくこくです。かんげんしゅせよ!」

しんけいしつなんだよ、ローザは」

「シグマがずぼらでしんけいなんだよ!」

 はないきをあらくしたローザは、「まったくもう」とつづけてうと、わらっているハンナせんせいどもたちにきなおった。

「じゃあ……ってくるね。みんな、げんで!」

「あなたとジュズまるがいないと、さびしくなるでしょうね」

 ハンナせんせいわらったままちいさなためいきをついた。

「もうっ、おおげさですよ。ごとわったら、すぐにかえってきますから」

 ローザがづかうようにった。

 ジュズまるりょうをチカチカとてんめつさせてうなずいている。


 シグマたちはこれからまたぼうけんへとたびつのだ。

 こんかいはキタウミのしまみなみ、オータルかられっしゃかんほどのしょにあるファーゴダッテへ。

 すうじつまえに、そのファーゴダッテふるせきはっけんされた。

 せきはソーサリー・ストーンやマルス・タンクがねむきんだんかもしれない。

 かいせいは、それをたしかめるための調ちょうをシグマにらいしてきたのだ。

 オロチをたおしたことがぼうけんとしてのシグマのひょうたかめたらしい。

 もっとも、シグマたちがオロチをたおしたことをらないひとたちのほうがまだまだおおいのもじつだから、こんかいかいせいからのらいは、ぼうけんとしてもっともっとまえるチャンスだ!


 ジャンはオータルだいがくのマルスけんきゅうじょだいひょうしてこんかいたびどうこうすることになった。

 そのはなしをきいたローザが、「わたしもきたい!」といだしたのだ。

 それが昨日きのうのこと。


べつにいいでしょ。わたしがいたほうがこころづよいとおもうし……それに、このままずっとなにもしないでいたら、いろんなことをおもしてからいからさ」

 きの、シグマのいえしかけてきたローザは、がちになってそうっていた。

 そんなことをわれたら、シグマとしてははんたいなんてできなかった。

 ローザがいてくれたらこころづよいのはたしかだし。

 ハヤトのつるぎも、せいしきにシグマがもらうことになった。かのじょにはりがある。


 そんなこんなで――。


 ジュズまるくわえたにんで、ファーゴダッテきのれっしゃることになったのだ。


 くもひとつないあおぞらひろがるぜんはちすぎ、あらためてハンナせんせいたちに「ってきます!」のあいさつをして、マリナのまちえきへとかう。

 えきくと、ちょうどれっしゃたところだ。

 もくせいのボックスせきにシグマたちがこしろすと、れっしゃがフワァァァンとけいてきをならしはじめた。


 れっしゃがのろのろとうごきだしたそのタイミングで、

じつはさ、みょううわさをきいたんだ」

 シグマのとなりにすわったジャンが、とつぜんそんなことをった。

「ミサキたちキツツキとうぞくだんが、ファーゴダッテかったってうわさをね」


 マジか……シグマはうんざりした。

 ミサキたちキツツキのもくてきせきねむっているかもしれないマルス・タンクやソーサリー・ストーンだろう。


「マルスには、それだけりょくがあるってこと。マルスはとても便べんちからだけど、ひとまどわせるから」

 かいのせきすわったローザがくびよこにふる。

 かくまどそとを、のどかなしきながれていく。

「あのオロチでさえ、こわされずにふういんされたままだった。いつかまた、ぶんたちにんげんでマルスをコントロールできる――そうかんがえたひとたちがいたからだとおもう」

 ローザはつづけてそううと、またくびよこにふった。

「ヘルハウンドをかいりょうして、オロチをまもばんけんにしていたのが、そのしょう


 ローザはとなりのジュズまるを見た。

 それから、シグマとジャンにもしんけんまなしをけてきた。


ながすぎるねむりからめて、わたしはすごくまどった。五〇〇ごひゃくねんまえとはあまりにもちがうこのだいをどうきたらいいのか、ぜんぜんわからなかった。でも、そんなわたしにももくてきができた」

「なんだよ?」と、シグマがきく。

「このかいのどこかにねむっているかもしれないマルスへい。わたしはそれをつけだしてかいする。ぜん!」

 ローザはちからづよせんげんした。「それが、わたしがこのだいめた、わたしがまだきているなんだとおもいたい」

きるのに、いちいちひつようだとはおもわないけどさ、ローザのやろうとしていることは、たいへんだね」

 ジャンがやさしくわらいかけた。

「かもしれない。けれど、わたしにはジュズまるがいるし……かれたよりになるから」

「おいおい、おれたちのこともわすれるなよ!」

 シグマがすかさずった。うなずいているジャンのかたきながら。

「オロチみたいなマルスへいがまだあるなら、そんなぶっそうなもんははなっておけないしな。おれもジャンもつだうよ、ローザのやろうとしてること」

「……ほんとに?」

 ローザはぎこちなくわらった。

「でもさ、すべてのマルスへいかいするんだよ。さいさいには、わたしの、このつえだって……」


 ローザはぶんひざうえかせているソーサリー・ストーンつきのつえゆびさした。

 そのゆびさきがシグマとジャンにもく。


「シグマにあげたハヤトのつるぎも、ジャンのマルス・ガンも、さいさいにはこわす。かならず。そのつもりだよ。それでも、つだってくれるの?」


 せっかくもらったのに、ハヤトのつるぎこわされちゃうのか……。

 もったいないなぁ……。

 でも、すべてのマルスへいかいするっていうのは、そういうことだよな。

「かまわないよ。ぼくはべつにはきょうないから」と、ジャンはがおそくとうした。

 まあ……な。なくなったほうがいいものってのも、あるんだよな、きっと。


「わかってるよ。おれもつだうさ、それでも」

「そっか……。ありがとう、シグマも、ジャンも!」

 ローザがほほんだ。シグマとジャンもだ。


 それからシグマは、なんとはなしにまどそとけた。

 マルスへいかい……か。しかも、ぜんだ!

 そりゃ、あんもあるさ。でも、おれはプロのぼうけんなんだ。

 ジャンにローザにジュズまる、そんな、ほんとうたよりになるなかたちだっている。

 しょうじきうと、ちょっとだけもしていた。

 なにがこっても、なにがけていても、こいつらとならりこえてみせるってしんがあるから!

 まどそとあおぞらあげながら、シグマはこころそこからそうおもった。



 シグマ・ノルニルのあらたなぼうけんは、こうしてはじまったのだ!


                             ――おしまい

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アフター・マルス ――シグマの冒険―― キャスバル @akaisuisei123

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