8月27日

 私たちは一言もしゃべらず、橋の下で一日過ごした。

 日を跨いでも雨はずっと降り続けている。

 明るくなった頃、ナツの様子がおかしいのに気付いた。息が荒くて、顔が赤い。額に手を当てると熱かった。

「ナツ、熱あるんじゃない? 風邪引いた? 病院行く?」

 私が立て続けに問いかけると、煩わしそうにナツは首を横に振った。

「いい、これは呪いだから」

「でも・・・・・・」

 突然、ナツが嘔吐きだした。よろよろと河川敷の草むらに向かうので、私も後を追う。地面に手をつき草むらに顔を突っ込んでゲェゲェと吐き出した。背中をさすっていると、ナツが吐いた物が見えた。黒々とした長い髪だ。喉の奥から長い髪の毛が何かに引っかかりながらも流れ出てくる。

「・・・・・・呪いだから」

 すべて吐き終わり、ナツが掠れ声で言う。

「家には帰らない。鳥雄も呼ばない」

 元の場所に戻ってナツはコンクリートの地面に倒れて寝始めた。私は近くのコンビニに走ってタオルや水、冷却シートなどを買い込んだ。店員には奇妙な目で見られたけど呼び止められることはなかった。

 橋の下に戻って買ったタオルを重ねてナツの頭の下に敷いた。額に冷却シートを貼り、上着を肩に掛けた。

 今は雨が降っているためか人通りが少なく、私たちを見つける人がいない。だから今のうちにもっとナツが落ち着いて滞在できる場所を見つけないと。

 ナツの鞄からスマホを抜き取り、検索を掛ける。始めにお参りした神社がダメだった後、何件か他の候補を調べていた。記憶を頼りに神社の名前を入れる。確かこのあたりに一件あったはずだ。

 今度こそ、ナツの呪いを解かないと。

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