私とナツと30の怪談

久世 空気

プロローグ 8月1日

 夏都が呪われたと言い出したのは8月1日。私が実家に帰って3日後、友達に急な転校のため、夏休みの遊ぶ約束をすべてキャンセルする謝罪メッセージを送っているときだった。

 入学してたった4ヶ月ではあったものの、仲の良い友達は数人いた。その中の一人が夏都だ。夏都は一緒に有名なかき氷店に行く約束をしていた。行けなくなった、行く余裕がなくなった。そんなメッセージに対し『それは残念』と短いコメントをしてから、夏都は「そんなことより」と言わんばかりに告白してきた。

『呪われちゃったみたいなんだよね。そのせいか、変なものを見るようになっちゃった。幽霊みたいなの』

 そんな事私に言われても困る。

 そもそもこれは冗談なのか、8月1日を4月1日と勘違いした馬鹿なのか、夏都はたまに変な事を言い出す子だから判らない。

『大変だね』

 と4文字で送って私はスマホを置いた。

 夏都が呪われたと言いだした日、私は友達の予定をすべてキャンセルし、むなしさと怒りから家出をすることを独りで決心した。

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