8月17日

 今日は転校予定の高校の試験日だった。国語、数学、英語のテストと面接を受ける。すべて教室で1人で受け、そのまま面接も同じ教室で監督官の先生と行った。テストはそれほど難しくなかったし、先生はマニュアル通りで厳しくもなければフレンドリーでもない応答を15分ほどこなし、終了となった。

 試験をブッチしたい気持ちはあったけど、それをして親に連絡されても面倒だ。それと、あんまり考えたくないけど、家出が失敗したとき一応通える高校は確保しておきたい。中卒にならないための保険だ。はっきり言って偏差値低いし、評判が悪い高校だから中卒と比べてどっちが良いのか判らないけど。

 家に帰るとナツからメッセージと動画が届いていた。

『見て見て~ 負の共演!』

 ナツの自撮り動画だった。ナツの背後で小太りなおじさんがちょろちょろ動いている。おじさんは微妙な距離を保ち、じっとナツを凝視していた。これが屋見岡なのか。昨日ナツはけろっとしていたが、こんな男に付きまとわれたら気持ち悪いだろう。

 ナツと屋見岡の間に白い煙のようなものがふわりと漂う。煙は上がっていくようで、徐々に濃くなっていき、一瞬背の高い女性ような形になり、今度は沈むように消えていった。そこで動画は途切れる。

 ストーカーと呪いの共演か・・・・・・。

『悠長に撮ってて大丈夫なの? 何があったの?』

『買い物してたら屋見岡が出てきて「俺の神、女神」とか行ってきたから無視してたんだよ。そしたら白いのがふわーって出てきて、間に入ってきて、屋見岡が近づけなくなってる感じ? あ、もう家に帰ったから大丈夫だよ』

 呪いはともかく屋見岡はある程度ナツの個人情報を知ってそうだ。

『家バレしてるかもしれないから、もうストーカってことで警察に相談した方が良いよ』

『うーん、呪いを突破してくるなら考えてみる。とりあえず私に憑いてる呪いが怖くて物理的に近づけないみたい』

 呪いが怖い。当たり前のことだけど忘れていた。実際呪いかどうか判らないけど、ナツが人間以外の何かに憑かれているのはもう私も認めざるを得ないのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る