8月5日

 顔の腫れは引いてきたがまだ違和感がある。部屋のドアを押さえていた物は父が取り去ってくれたみたいだけど、私の食事は昨日の夜から作られない。父がもってきてくれたゼリーだけで少し物足りない。気を紛らわせるために夏都にメッセージを送ってみた。

『今時間ある? 暇だからメッセージで話しよう』

 返事はすぐだ。

『いいよ。電話しよっか?』

『今、口の中切ってて上手くしゃべれそうにないからこっちの方が良いな』

『大丈夫?』

『治りかけてるから平気。そっちは寝不足解消した?』

『塩のおかげでわりと平気』

 まだ呪われている設定は継続中らしい。

『ところで何に呪われてるの?』

 好奇心から掘り下げてみた。

『なんか家にずっとある古い人形を、長女だからって理由で押しつけられたんだよ。この前なんとなくいじってたら壊れちゃって、そこから変な物見るようになった』

 これも比較的すぐ返信があった。ちゃんと考えてあったのか。

『髪が伸びたりする人形?』

『そんな良い物じゃないよ。木と布で出来たボロい人形』

 その後写真が添付された。黒い墨がぺちゃっとカメラのレンズに付いたような画面。何が映っているのか判らない。

『何? アート?』

『人形写真に撮れない』

 あまりに凝った設定に久々楽しい気分になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る