8月19日
警察に行くか神社に行くかという二択を迫ったら、ナツは神社を選んだ。
「いやぁ、盲点だった。神社ね。困ったときの神頼みってやつだね」
そういう言い方されると信仰のない私が図々しいみたいだ。
「ネットでちょっと有名なパワースポットだよ。特にお守りがよく効くって」
右城さんの最後の状況を思い出すと、いまだに身震いがする。ナツがいつああなるとも限らない。
昼過ぎの神社は静かだった。有名だけどこの暑い中わざわざ日陰の少ない神社にお参りする人はいない。小さい神社だ。社務所も閉まっていてインターホンが窓口に付いている。
お参りして社務所で呼び鈴を鳴らすと普通にTシャツを着たおばさんが出てきた。
「御朱印?」
「あ、お守りを」
「どれ?」
「ナツはどれにする?」
「青いのかなぁ」
「じゃあ、青いお守り二つ」
「はい、1000円」
こんな感じでサクサクとお守りが手に入った。コンビニでアイス買ったような感覚だ。本当に御利益はあるんだろうか。
「ナツ、お祓いとか出来るか聞いてみる?」
お金を受け取ったおばさんはさっさと奥に引っ込んでしまった。
「そうだね、お守りが効かなかったらそうしようか」
とはいうものの、それが金銭的にどれくらいかかるか見当も付かない。一つ500円のお守りで済むなら御の字だ。
「ハルとおそろいだね。スマホに付けよ」
「付けるところないでしょ」
話ながら鳥居を抜けた。
ポンッ
と、ポップコーンがはじけるような音がした。ナツを見ると目を見開いて固まっている。手元に青い布きれが残っていた。お守りが破裂した、そうとしか見えなかった。何故、と考える間もなく、鳥居の影から男が顔を出した。
「ああ、すごい」
やけに耳障りで甘ったれた声。ナツが私の前に隠すように立った。
「やっぱり夏都様はすごい。ああ、女神だ。神様だ」
屋見岡だ。グフグフと笑い、落ち着きない様子でこちらをチラチラ見ながらつぶやいている。リアルで見るとなかなか気持ち悪い。
「ハル、行こう」
ナツが私の肩を抱くようにして歩き出した。表情が険しい。
「あいつ、ハルの顔覚えたかもしれない」
でもそれは杞憂だと思う。私から見た屋見岡はまっすぐナツを見ていた。むしろナツ以外見えていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます