2 愉快な仲間?

(01)

 つばさは佐門署に所属している刑事だ。


「おはようございます」


 すれ違う署の皆に挨拶をするつばさと与晴。

 そこへ、つばさが会いたくない例の人物が通りかかった。


「おはよう」


 佐門署署長、高階たかしな。

 運が悪いと天を仰ぎかけたつばさだったが、大人の対応を心に決めた。


「おはようございます」

「おはようございます」


 自分一人ではない。相棒が傍にいるから大丈夫。

 しかしそれは間違いだった。

 

「佐藤君。異動希望は出したかい?」


「……はい?」


 不意打ちに驚いた与晴の顔を見て、高階署長はニヤリと笑った。


「……ボスが寿退官する前に、異動先決めて安心させてあげなさい」


 つばさはにこやかに笑顔で反撃した。


「ご忠告ありがとうございます。しかし、まだ私は退官するとは決めておりませんので」


 勝手に相棒、後輩を取られたら困る。まだまだ教えたいこともある。


「へぇ。そうなのか。知らなかった。失礼したねー、岩井君」


 つばさは、嫌味に笑う高階署長へ何も言わず微笑み返す。

 そんな彼女を署長は鼻で笑った。


「では、失礼」


 遠ざかる署長の後ろ姿をつばさは睨みつけた。


「……行くよ、佐藤」


「……はい」


 与晴は黙ってつばさの後に付いていく。

彼女が『佐藤』と自分のことを苗字で呼ぶ時は、緊急時か猛烈に機嫌が悪い時。

 今は後者だ。


 触らぬ神に祟りなし。

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