3 刑事の日々

(01)

 数日後の朝、つばさは神妙な面持ちの三宅に声を掛けられた。




「……岩井。取調頼む。駅での痴漢被害だ」




「……かしこまりました」




 つばさは大学で心理学を専攻し、犯罪を犯す者その被害に遭う者双方の心理を学んだ。


 その経歴と女性という立場から交番勤務時代から女性被害者への聴取をよく任されていた。


 渡された書類に全て目を通し終えると、取調室に向かった。




 そこにいたのは、制服を着た高校生らしき女の子。


 緊張した様子で俯き加減で椅子に座っている。




「こんにちは。ごめんなさいお待たせしてして。寒くなかった? 大丈夫?」




「……いえ。はい」




 女子高生は女性が現れたことに驚いたのか、つばさをじっと見た。




「岩井つばさと言います。よろしくお願いします」




「……おねがいします」




 何気ない会話から女子高生の緊張を解す。




「今って、中間テストの時期?」




「……あ、昨日、終わりました」




「そっか。お疲れ様でした。これで思いっきり部活出来るね」




 持ち物から部活動をしていると察知し話を振った。




「……まあ、はい」




「何部?」




「ソフトボールです」




「そうなんだ。ポジションどこが好き?」




 徐々に距離を狭めていく。


 だんだん言葉数が多くなってきたのを確認すると、本題に入る準備に着手した。




「……お茶入れ直すね」




 女子高生は出されたお茶に一度も口を付けていなかった。




「……ありがとうございます」




 暖かいお茶を出すと今度は飲んだ。


 彼女の様子を慎重に伺いながら、静かに切り出した。




「……お話、聞かせてくれるかな?」




「……はい」




 ポツリポツリと話し出す女子高生の話をつばさは静かに真剣に聞いた。


 時に泣き出す彼女の背をさすりながら、ゆっくりと焦らずに状況や場所等必要な情報をつぶさに聞き出していった。




「……ありがとう。……貴女はなんにも悪くない。犯人は一日も早く必ず捕まえるから」




「よろしくお願いします……」




 女子高生を署の玄関まで見送った。

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