(02)

「おかえりなさい」




 つばさの母。岩井恭子、元警察官。


つばさの一番下の妹を出産するまでは広報として働いていた。




「ただいま。なんでそんなにカレーたくさん作ったの?」




 祖父母が存命中で妹たちもまだ一緒に暮らしていた時は大人数だったが、今は三人暮らし。


そのうち二人が現役警察官で不規則な勤務では一緒に食事を取らない日の方が圧倒的に多い。


 作りすぎた、などと母の口から聞くのは久しぶりだった。




「男の子たちがどれだけ食べるかわからなくて」




 母が言う男の子たちといえば、孫たちのこと。


つばさにとって甥っ子たちだった。




「来てるの?」




「二人して旦那さんも急な用事や仕事で家に一人にしておけないから預かってって……」




 上の妹は夫婦で教師。その息子は四歳。


 下の妹は看護師、夫は医者。その息子は三歳。




「もう寝てるよね?」




「とっくにね」




 正月に会ったきり。つばさは甥っ子たちの顔が見たかった。




「明日の朝ご飯は一緒に食べられるかな?」




「何時に出るの?」




「八時。だから朝ごはん六時かな」




「じゃあ大丈夫」




 母と話しながら、つばさは相棒と自分の食べるカレーを準備した。

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